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【不動産の共有だけは避けるべき】不動産の相続はなぜモメるのか[POSTED]:2018-11-13

【不動産の共有だけは避けるべき】不動産の相続はなぜモメるのか

相続において分けにくい財産である不動産

不動産がモメる原因になるというのは、遺産分割事例を多く見てきて実感することです。
原因の一つに、まず分けにくいという点があります。
不動産の共有はお勧めできませんので、必ず特定の相続人が単独所有する遺産分割を目指すべきであるというのが、不動産でモメる最大の理由といえるでしょう。

不動産の共有

「共有」はイメージしにくい概念ですから、共有の概念を説明するところから始めましょう。
1つのものを共有するということは、1つの物を分割して、例えば右半分と左半分を分解してそれぞれ持ち合うということではありません。
むしろ、ものそのものはそのままの形で分けずに、全体を所有するのですが、所有する支配力が共有持分の限度に制限されているというイメージです。
不動産についていえば、土地の右半分と左半分で線を引き、それぞれを分割して持つということではありません。
このような分割は、土地を分筆して2筆に分けてから持ち合うということになります。決して共有ではありません。
不動産の全体を所有しますが、共有持分に応じてその不動産に対する支配力を持つというイメージです。

不動産の有効活用を妨げる共有状態

共有をいったん始めると、貸したり使用したりするのに協議が必要になります。
例えば、共有持分が半分ずつの2分の1だった場合、月の半分ずつ使うのか、1年のうち季節を割り当てて使うのか、協議して決めることになるのです。
賃貸不動産の場合、適度に修繕を繰り返すなどして管理を行わないと、賃貸不動産としての価値が落ちてしまい、賃料が下がり、空室率も上がってしまうことになりますが、共有者全員が修繕に賛成するとは限りません。
各共有者の経済力に違いがあるケースもあり、金銭的に余裕のある者だけが共有しているわけではないからです。
これらの決議は持分の過半数で決することになりますので、2分の1ずつの共有持分を持っているようなケースでは何も決まらないことになります。
結局、話合いは物別れに終わって、紛争になり、共有物分割請求を提起することになるでしょう。
つまり、いざ何かしたいと思った時に、自分1人でできることはわずかであり、せっかく所有している不動産を有効に使うことができなくなってしまうのです。売却する際にも共有者全員の合意が必要となります。
1人でも売却に反対している場合は、他の共有者全員が賛成していたとしても売却することはできません。
自分の持分だけを売却することはできますが、まず買い手がいません。
共有者がいる不動産は「面倒な不動産」と評価されてしまい、買い手がなかなかつかないのです。
仮に買い手が現れたとしても、「自分に利用することができない不動産」であることを知ったうえで購入することになりますから、当然に買いたたかれることになるでしょう。
相続人同士で共有している時でさえ、意見の相違が生じて争いになるのですから、全く関係のない第三者が介入すれば、トラブルにならないはずがありません。

不動産相続における特例が使えなくなる

相続税における特例適用も、共有を避けるべき理由になります。
相続税における特例、例えば小規模宅地等の特例は、不動産を相続する相続人の個人的な属性に着目した制度です。
この相続人だからこそ特例が適用になるという場合、相続税節税の観点からすると、あえてこの相続人に不動産を相続させるということになるのであって、他の相続人との共有という結論は取り得ないということになります。
つまり、相続税の特例を適用することができる相続人にその不動産を相続させるべきということになりますから、相続税の特例を適用することができない相続人との共有というのは避けるべきなのです。
このような理由から、相続で不動産を共有分割すべきではないのです。

不動産の分筆も避けるべき

分筆も共有と同じくらいまずいやり方です。
不動産の価値は、利用目的に応じた適切な面積かどうか、整形かどうか、道路に面している幅員などの要素によって、決まる傾向が強いのです。
単純に面積で等しく分ければ、価値も等しくなるというものではありません。
1筆の土地を2筆に分けるとしても、土地の北側と南側では不動産の価値に違いがありますし、そもそもどのように分筆するかについても争いが生じるでしょう。
価値を等しく分筆するのは、なかなか複雑で困難です。
そもそも一般に、分筆後の各筆の土地の価値を合計しても、分筆前の土地の価値には及ばないというのが、正しいといえます。

例えば、1億円相当の100坪の土地を5人の相続人が相続したとします。この100坪の土地を5人で5等分に分筆して各相続人が20坪ずつ取得した場合、この20坪の土地は1億円の5分の1である2,000万円を大きく下回る価値しかなくなってしまいますし、5つの20坪の土地を合わせても、もとの1億円の価値にはならないのです。土地を細分化したことによって土地の利用に制限が生じてしまうため、その土地には買い手がつかないことになり、土地の価値が下落してしまうのです。分筆したことによって、被相続人がせっかく残してくれた財産を目減りさせてしまうことになるわけです。

不動産は単独相続するしかない

共有も分筆もやってはいけないとなると、不動産は結局、特定の相続人が単独で相続するしかないことになります。

ところが、不動産の価値は一般に、ほかの相続財産の価値に比べて高いといえます。著しく高いのが普通でしょう。不動産は全相続財産のうちの約半分を占めるという統計もあります。
経験上も相続財産に不動産が含まれる場合、他の相続財産の合計が不動産価格よりも高かったというケースは、少数の例外を除いてまずないといえます。
とすれば、高額な不動産を特定の相続人が単独相続するにあたり、大掛かりな調整をする必要が出てきます。
自分が大きな価値を持つ不動産を相続する代わりの調整は、大きなものになるからです。
具体的には代償金を多く払う必要があります。
つまり、不動産について代償分割をして、不動産を取得しない相続人に代償金を支払う必要が出てくるのです。

代償分割による相続では、代償金の準備が重要

代償分割とは、特定の相続人が財産を取得する代わりに、他の相続人に金銭などを支払い、過不足を調整する分割方法です。
不動産の相続のほか、事業承継をしたい場合などにも行われます。過不足を調整する際に支払われる金銭を代償金といいます。
この代償金の金額は相続人の協議で決定することになります。
不動産が唯一の相続財産の場合、法定相続分に相当した金額を請求される場合もありますが、換価しにくい不動産を取得することになるよりも、多少金額が低くても現金でもらうほうがよいと考えて、法定相続分よりも低い金額となることもあります。
一方、相続人の誰もが不動産の取得を希望していたような場合には、誰もが欲しがった不動産を取得したということを考慮して、法定相続分よりも高額な代償金を支払わざるを得ない場合もあるでしょう。
いずれにせよ、代償金としてある程度の金額を用意しなければならないことは確かです。
不動産を取得する相続人が代償金相当額の現金を持っていれば問題ないのかもしれませんが、そうはうまくいかないこともあるでしょう。
結局は、代償金を支払うために、相続した不動産を売却したり、不動産を担保にお金を借りたりしなければならないということもあります。
共有も分筆も避けるべきなので単独相続したにもかかわらず、こうした問題を抱えることになるのです。
不動産は共有すべきではなく、単独相続するものであり、不動産の価値が高いがゆえに調整は大きなものになる。
ここに不動産がモメる原因となる理由があるといえるでしょう。

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