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【相続税プラスアルファの税金がかからないように注意】遺産分割協議のやり直しはダブル課税に[POSTED]:2018-10-20

【相続税プラスアルファの税金がかからないように注意】遺産分割協議のやり直しはダブル課税に

遺産分割協議書への安易な署名押印は禁物

遺産分割協議の結果を記載する遺産分割協議書ですが、最終的に署名押印する際には注意が必要です。
遺産分割協議をリードしていた相続人から、「形式的なものだけど、これからの手続きに必要になってくるから、早くサインしてくれないか」「家族間の取決めだし、文句があるなら後でまた話し合おう」などと急かされる場合があります。
遺産分割協議書の内容をよく確認せずに署名押印したり、遺産分割協議の結果に異存があるものの、波風立てずに一旦はサインしておいて落ち着いてから再度話し合いの機会を設ければよいと安易に考えて署名押印したりしがちですが、税務面でも問題を抱えることになりかねません。

相続税以外に贈与税や譲渡所得税がかかることも

税務問題を認識していない弁護士が、相続人全員の合意があれば遺産分割をやり直すことも可能とアドバイスしているケースもあります。
確かに法律上、相続人全員の合意があれば遺産分割協議をやり直すことは可能です。
遺産分割に期限はありませんので、何回でもやり直しができます。
もちろん、遺産分割協議をやり直すためには他の相続人の合意を得なければいけませんから、法律上やり直すことができても、事実上やり直すことができるのかという問題はあります。
しかし、たとえこの事実上の問題をクリアしたとしても、税務上の問題が生じるのです。
この税務上の問題とはどのようなものなのでしょうか。
結論からいうと、遺産分割をやり直した場合、相続税とは別に、贈与税や譲渡所得税がかかる場合があるのです。
相続税法基本通達には、「当初の分割により共同相続人に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は遺産分割により取得したものとはならない」(相続税基本通達19の2-8)と定められています。
遺産分割のやり直しで財産の所有権が移転した場合には、遺産分割の結果で財産を取得したとは扱われないのです。
もちろん、相続税の申告前であれば、遺産分割をやり直しても何ら税務上の問題はありません。
しかし、相続税の申告納税後に遺産分割のやり直しを行うと、先ほどご紹介した相続税基本通達に従って取り扱われますから、再度の遺産分割により取得した財産は相続によって取得した財産ではないことになり、別途贈与税や譲渡所得税がかかる可能性があるのです。
たとえこの相続税基本通達を知らずに遺産分割をやり直した場合であっても同様です。

遺産分割のやり直しにより贈与と認定されたケース

一旦は長女が実家不動産を相続することになり、その内容で相続税の申告・納付や不動産の名義変更を済ませたのですが、手続き終了後に長女の夫の転勤が決定。最終的には二女が実家不動産を受け継ぐことになり、長女から二女へ不動産の名義変更をした場合(ケース1)。
既に長女により支払済みの実家不動産に対する相続税について、二女が同額を長女に支払っており、実質的には最初から二女が実家不動産を相続したのと何ら変わりはないのですが、このようなケースでは長女から次女への「贈与」がなされたことになってしまいます。
遺産分割を担当した弁護士が、遺産分割をやり直した場合の税務問題についてアドバイスしてくれればよいのですが、税務には一切関与しない弁護士が多いのが現実です。
後日、税務署から指摘されて初めて、贈与税を負担しなければならないことに気付くというケースが多くあります。
この段階になって、税理士や税務に詳しい弁護士に相談し、弁護士らが税務署に事実関係や経緯を説明し、長女から二女への名義変更は遺産分割における一連の手続きとして行われた旨を主張しても、贈与認定を覆すことは難しいでしょう。
相続税法基本通達にあるとおり、遺産分割により取得したのではなく、贈与、譲渡もしくは交換により取得したものとして扱われることになります。

遺産分割後の金銭の授受により贈与と認定されたケース

親と同居していた長男が実家不動産を相続するものの、相続財産は1億円相当の実家不動産と現金1,000万円のみで、もう一人の相続人である二男は法定相続分以下の1,000万円を相続するケース(ケース2)。
一旦は実家不動産を長男が、現金を二男が相続したという内容で遺産分割協議書を作成し、その内容で相続税を申告・納付。
長男自身の預金を崩して、二男に法定相続分の不足分4,500万円を支払った場合、長男から二男への現金の流れが「贈与」とされてしまいます。
贈与税率は相続税率よりも高く設定されているため、相当の経済的負担を二男が強いられることになります。
このような贈与税負担を回避するためには、代償分割により相続財産を分ける方法を用います。
代償分割とは、相続財産現物を取得することにより本来の相続分よりも多くの財産を取得することになる相続人が、その他の相続人に対して、金銭を支払うなどして過不足を調整するという分割方法です。
相続財産が実家不動産のみで、その不動産には相続人のうちの一人が住んでおり、その相続人の生活関係の安定を考慮しなければならない場合や、農地、事業用財産など、細分化を避ける必要性が高い場合のように、相続財産の種類や性質によって現物分割が難しい場合に利用されます。

代償分割した旨を遺産分割協議書に明記

代償分割を利用することで、贈与税の負担なく相続人間で公平に財産を分けることができます。
先ほどのケース2では、長男が実家不動産を、二男が現金1,000万円をそれぞれ相続し、長男が実家不動産を相続する代わりに4,500万円を二男に支払うという内容の遺産分割協議書を作成することになります。
代償分割による遺産分割であれば「長男が1億円の不動産を、二男が1,000万円をそれぞれ相続し、かつ二男は長男から4,500万円の財産を贈与により取得した」と扱われることにはなりません。「長男も二男もともに5,500万円の財産を相続した」と扱われ、贈与の話にはなりません。
長男から二男への財産移転について、代償分割したとして遺産分割協議書に記載しておけば贈与として扱われず、贈与税はかからないのです。

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