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公正証書遺言が無効に!遺言無効判決が増加傾向[POSTED]:2019-05-31

公正証書遺言が無効に!遺言無効判決が増加傾向

公正証書遺言でも無効になる

公正証書遺言は一般的に無効になりにくいと言われている。
公証人という法律の専門家が関与しており、遺言能力の有無について一時的なスクリーニングがされていることが大きい。
士業のサイトでも、遺言を作成するならば公正証書遺言がおススメである旨が書かれている。
正しいことではあるが、公正証書遺言を作成すればそれで安心できるのかというとそうでもない。

公正証書遺言が無効になるケースが増加傾向に

公正証書遺言の有効性が裁判で争われて、無効とされるケースが増えている。
公正証書遺言が無効とされた裁判の件数を正確に引用できるソースは存在しないが、間違いなく増えている。
弁護士の中でもそうした声が聞かれるようになっている。
公正証書遺言が無効とされる案件は珍しいケーススタディとして、扱われる傾向もあった。
しかし最近は、遺言が無効とされるケースも増えているし、公正証書遺言までが無効とされるケースも増加している。

公正証書遺言はなぜ無効になるのか

公正証書遺言が無効にならないという「公正証書遺言神話」とも言うべき考えは、遺言一般の中で、公正証書遺言が特別な地位を占めていることから来ている。
公証人が関与しているということも大きいが、形式不備が考えられない、証人も存在するなどの事情もある。
形式面から考えると、公正証書遺言だからまず問題ないだろうということになる。
ただ実際には、形式的なことよりも、実質的な判断によって公正証書遺言が無効になっている。

形式的資料と実質的資料

公正証書遺言が無効とされた裁判で裁判所が重視した事情は、必ずしも形式的な書面だけではない。
長谷川式簡易知能評価スケールと呼ばれるテストがある。
医療や介護の現場では「長谷川式」あるいは「長谷川式認知症スケール」とも呼ばれ、1974年に長谷川和夫氏(精神科医、認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長)らが開発。
1991年に加藤伸司氏(臨床心理士、東北福祉大学教授、認知症介護研究・研修仙台センターセンター長)らによって質問内容や採点基準が見直され、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」(HDS-R)に変わった。
HDS-Rは、一般の高齢者から認知症のある人をスクリーニング(ふるい分け)することを目的にし、これだけで認知症かどうかを診断することはできないとも言われる。
認知症の確定診断は、専門医の診察が必要である。
質問をすることで見当識(時間、場所、状況などの認知)や記憶をチェックし、正解ならば1点、不正解ならば0点などと数値化し、30点満点中20点以下の人は認知症の疑いが高いと判断される。
認知症かどうかは他の病気と異なり、可視化が難しい。
脳の萎縮などはCT画像で確認できるものの、認知症にも程度があり、もっと言えば認知症=遺言無能力でもない。
遺言能力の有無は作成される遺言の内容などとの相関関係で決まる。
判断が困難である遺言能力だからこそ、長谷川式認知症スケールは点数で結果がはっきりと出る分、便宜である。
最終的な確定診断を医師に委ねてしまうと、医師によって判断がまちまちになるし、客観的資料に全く基づかずに認知症である旨を診断書に書く医師もいる。
ともすれば長谷川式認知症スケールのようなハードな情報が重視されがちで、それはある意味フェアな判断になる。

裁判所の実質資料重視の判断は妥当か?

裁判では客観的でカチッとした形になっているものを重視するのが通常である。
遺言作成時に近接した時期において実施された長谷川式認知症スケールの点数さえ悪くなければ、遺言が無効にならないと考えがちである。
ところが公正証書遺言が無効とされた事例では、看護記録やヘルパーの備忘録などが重視され、長谷川式認知症スケールの点数がそこまで悪くなくても遺言が無効になっている。
自治体の介護認定調査票や根拠になった資料もよくみられている。
人間の観察記録が医療現場で採用されるテストよりも重視されているケースが多い。
長期間にわたり遺言作成者がどのように振舞っていたかをみているのだが、疑問もある。
これらの資料がどこまで厳密に作成されているのか。
作成者は医師のような専門家なのか。
すでに述べたように、客観的根拠に基づかずに所感で認知症と判断する医師もいる。

公正証書遺言よりも自筆証書遺言の方がよい?

こう考えると、公正証書遺言よりもむしろ自筆証書遺言の方が無効にされにくいとも思えてくる。
筆跡もわかるし、これだけ長文の遺言をを自筆で作成したとなると遺言内容をしっかりと理解しているともいえるからである。
逆に公正証書遺言ではこれらの資料がない。
結果だけを確実に残すという公正証書遺言の良さが逆に、裏目に出ているのかもしれない。
作成過程も含めてしっかりと形に残る自筆証書遺言は、ある意味、真に遺言作成者の意志によるものなのかがわかりやすい。
ただし自筆証書遺言はハードルが高い。
全文自筆は財産目録のワープロ打ちが認められたことで改善されたが、
長文の遺言を作成する際に不可避的に生じる訂正などは面倒である。
遺言作成者が思い立って作成する場合は自筆証書遺言でも書ききるのかもしれないが、
受益相続人の提案によって作成する場合は作成を完遂できないこともある。
いずれにせよ形だけ整えればよいと判断しない実質資料重視の傾向からすると、
公正証書遺言が自筆証書遺言よりも優れているという「公正証書遺言神話」も崩れてきているのかもしれない。

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