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1章 遺産相続がもめるには、理由がある[POSTED]:2017-11-17

人はお金で変わる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

「お金じゃないんです。はっきりさせたいだけなんです」

遺産相続のトラブルでは、最初に誰もがこのように言います。
「財産の全額をはっきりさせて、その上で納得できれば、金額なんて気にしません。別にお金にこだわっているわけではありません」

身内で遺産相続の問題を抱えている40代半ばくらいの男性のケース

あまり欲は深そうではない方で、物わかりがよさそうな方です。
しかし、その印象は遺産分割が進展するにつれて変わっていきました。遺産相続で「5000万円もらえる」とわかったとたん、目の色が変わったのです。
そのあとは、権利を主張して、なんとか一円でも多く、とあの手この手を使って相続額が増えるように画策するようになりました。
結局、大金を目の前にして、気持ちが変わってしまったのです。
「お金じゃないんです」
「お金にこだわっていません」
こうおっしゃる相談者の方は多いです。
けれども結局、往々にしてモメることになります。
お金の話になると人は変わるからです。
サラリーマンにとって生涯所得はたいがい決まっています。宝くじにでも当たらないかぎり、生涯所得を増やすことは自分の力だけではどうにもなりません。
一方、遺産相続はかなり高額の不労所得、つまり、働かないで大金を手に入れる絶好のチャンスです。サラリーマンの年収の何倍もの額の遺産を一時に手にする方もいます。
お金じゃないと言っていた人も目の色が変わります。その人が特に「お金にうるさい人」や「がめつい人」でなくても、普通の人でもそうなりえます。
なぜなら、相続人は様々な事情を抱えているからです。住宅を買って、ローン返済に追われていることもあります。不況の影響で年々、給料が減らされていることもあります。子どもを育てていれば、学校の進学などでお金も必要になるでしょう。リストラされてお金が必要になっている、というケースもありえます。
日ごろ節約しているけれども、思いがけず不労所得にあずかるチャンスにありついた、となりがちなのが「遺産相続」なのです。
お金はあっても邪魔にはなりません。世の中お金がすべてではありませんが、資本主義の世界でお金は誰もが必要とするものです。たかがお金、されどお金。
財産を受け取る権利のある人を、法律用語では「相続人」といいます。相続人が、自分が受け取ることのできる「お金」を目の前にして、変わってしまうことはよくあることなのです。

まわりの影響でモメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

なかにはお金に無頓着で、お金を目の前にしても変わらない人もいます。

また、「お金が欲しい」と思っても、「お金のことで身内と争うのはちょっと……」という控えめな人もいます。
しかし、たとえ相続人がお金に無頓着な人だったとしても、相続人の配偶者がお金にこだわっていれば、影響を受けます。相続人が結婚していた場合、配偶者が背後から何かと意見を言ってくるものです。
妻が夫に、「あなたの稼ぎが悪くて苦労してるんだから、遺産相続で少しでも多くもらえるようになんとかしなさいよ」と文句を言っていたとしたら、どうでしょうか。最初は、「親や兄さんには苦労をかけたあげく何も返せてないようなものだから、いくらでもいいよ」と思っていた夫の気持ちも、妻のささやきで変わるものです。
相続人の数よりも、相続人の背後に潜んでいる利害関係者の数のほうがずっと多いのです。父親が亡くなって兄弟三人が相続するというパターンを考えた場合、相続人は兄弟三人であっても、それぞれが結婚していれば、それぞれの配偶者たちが利害関係者として出てくる可能性もあります。すると、六人の相続人と利害関係者が、遺産相続についてそれぞれの考えをもって、遺産相続に関わってくるのです。
さらに成長した子どもがいれば、子どもも口を出す可能性だって十分にあります。
あるいは、友人に何気なく遺産相続の話をしたところ、「そんな分け方は損じゃない。絶対にきちんと主張したほうがいいわ。後々あのお金があれば、って後悔するわよ。私も後悔したもの」と赤の他人のアドバイスを受けて、ガラッと考えが変わってしまうことすらあります。
遺産相続は、相続人の間だけの問題ではありません。相続人がまわりの影響を受けて変わってしまうことでモメることも、よくあることです。

金額ではない、少額でもモメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

一方で、「お金で変わらない」部分もあります。

たとえば、「お金の問題じゃない!」と言い出す場面です。
あと少しで分割協議がまとまりそうなのに、なかなかまとまらない。そうした遺産相続のケースは少なくありません。
「あと少し」は本当にあと少しなのです。一億円の遺産相続を受けられる相続人が、最後の最後で数十万円のお金について納得しなかったため、話し合いがまとまらなかったのです。一億円もらえる人が、たった数十万円にこだわった理由は何だったのでしょうか。
それは、遺産相続の問題が起きる前から、兄弟姉妹の仲が悪かったからでした。
遺産分割の争いは単純に金額の問題であるとは言い切れません。家族の愛憎劇が絡むので、意地の張り合いになってしまうようなところもあります。
赤の他人である第三者からすると、どうして納得できないのかと疑問に思うようなことが多々あります。損得勘定だけで考えれば、あきらかにまとめるべき場面でも、首を縦に振らない人がいます。
家族だからこそもめる。血がつながっているからこそ、いったん感情的になってしまうと絶対に後には引けない。そういうことがあるものです。
家族だからこそ、他人に対してであれば当然心得るべき遠慮も無用ということになり、言いたい放題で関係がこじれるということもあるでしょう。
家族の人間関係は、相続争いにおいて重要な問題になります。
遺産分割協議は家族の歴史が凝縮した大河ドラマのようなものです。

マンションの頭金、結婚資金を親からもらって、モメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

家族だからこそこじれる、というのが遺産相続の現実です。

モメたときに、必ずといっていいほど、話に出るのは、「兄だけが県外の私立大学に行かせてもらえた」「妹だけが、花嫁道具を用意してもらって、持参金ももらっていた」などの、兄弟姉妹それぞれの言い分です。
「大学資金」「結婚資金」は、兄弟姉妹で、それぞれ事情も違うことが多く、金額を平等にしている家庭ばかりではないと思います。行き違いがあったり、事情があったりして、兄弟姉妹間に差ができて、それがいつまでもしこりとして残り、遺産相続の際に出てしまうことはよくあることです。
「大学資金」「結婚資金」は、「感情のしこり」ということくらいで済むことが多いのですが、「マンションの頭金」「事業の資金」「生活の援助」などのお金は、遺産相続のときに、大きな問題になることがしばしばあります。
「次男だけがマンションの頭金を援助してもらったのだから、その分のお金は、相続財産の中から引くべきだ」
この場合、金額にもよりますが、マンションの頭金も「親が残した遺産」の中に含めることになり、遺産相続時にもらえる次男の相続分は、ほかの兄弟より低くなります。
兄弟姉妹間で、「姉さんは、結婚するときに花嫁資金として300万円ももらったじゃない」「兄さんは、事業を起こすとき、融資をしてもらったそうじゃないか」「生活が苦しい時、親から200万円もらったときいたぞ」などという話になります。このような話し合いをする中で、兄弟姉妹間の対立が深まり、些末な点を言い争う遺産分割調停も珍しくありません。
海外旅行に行った際のお土産の高級バッグの領収書(数万円相当)までもが、証拠として出てきたことすらあります。

介護の負担でモメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

反対に、「親にしてあげたこと」がモメる原因になることも多々あります。

多いのが「介護」の問題です。

ガンを患い身体を悪くした父の面倒をみているのは、もっぱら東京の大学を出てUターン就職をし、
地元出身の女性と結婚した次男であったケース

長男である兄は結婚したものの、嫁が兄の実家の悪口を言い始め、嫁姑の仲が悪くなったため、県外にある嫁の実家の近くに住み、自分の実家には寄りつかなくなりました。
父の看護どころか、見舞いにすらめったにきません。
「兄さんは、まるで奥さんの家に婿に行ったみたいだな。実家のことはみんな俺に押しつけやがって」
弟は事あるごとに兄に不満を覚えるようになりました。
父の病状は深刻化するばかりです。看護と介護のために弟の妻は会社勤めを辞めました。
父の病気に加えて母の腰も悪くなったからです。やがて弟夫婦は両親と同居することになりました。家中の段差をなくしたり手すりを設置したりする工事費用も弟夫婦が出しました。
「お義兄さんは、うちにばかり押しつけて、ズルイ」と妻に言われても、弟は何も言い返すことができません。
やがて父がガンで亡くなり、母と2人の兄弟が相続人になりました。すると、兄は法律で定められた相続分どおりの金額を主張してきました。民法では、「両親+兄弟二人」の家族で、父親が亡くなった場合、母が2分の1、兄と弟は残りの2分の1を半分ずつ、つまり4分の1ずつ相続することになっています。
しかし、弟は不満です。兄は両親の面倒をみないどころか、実家をないがしろにしているにもかかわらず、自分と同等の相続分を主張してきたからです。
「お義父さんの看病なんてしてこなかったじゃない。それに、今、お義母さんの面倒は私たちがみているじゃない。お金だってかかっているのだから、お兄さんと半分ずつだなんて、不公平じゃないの!?」
と妻に言われ、弟も兄に不満を訴えました。結局、このときは、兄が折れたそうです。「介護」もモメる原因になりやすいものです。
年老いて、要介護状態の親をどちらが世話をするのか。介護は、体力的にも心理的にも、また金銭的にも負担が大きいものです。その介護を負担した人と、負担していない人が、同じ額の相続分をもらえるというのは不公平ではないか、ということです。

「遺産相続においては他人」である嫁の問題でモメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

遺産相続においては、「嫁」の問題がキーになる場合が多いものです。

親の介護をする場合でも、息子が実際に介護するわけではありません。息子の妻が会社勤めを辞めるなどして義理の両親の看護や介護をするケースが多いでしょう。
こうしたときに、「私の苦労も認めてよ」とばかりに口を出してくるのです。
また、嫁・姑、嫁・小姑の仲が悪いことも、遺産相続には影を落とします。

41歳のパート勤めをしている主婦のケース

兄と母の遺産相続についてモメています。
「もともと仲の良い兄妹で、小さなころから兄は可愛がってくれたし、大きくなってからもずっと気にかけてくれた。ただ、結婚して兄は変わった。お嫁さんの言うがままで、あんなに大好きだった母のことまでないがしろにするようになった。今回の遺産相続の件も、きっと嫁がよけいな入れ知恵をしているに違いないわ」
と兄嫁について、不満をもらしていました。
この方の場合、兄弟は、兄と妹の二人。父親は既に亡くなっていて、さらに母親が亡くなって遺産相続となり、兄がいろいろと主張をしてきたとのことでした。
相談者(妹)としては、母と兄嫁の仲が悪かったというのもこじれる原因でした。
兄に多くのお金がいくということは、母をないがしろにした嫁のところにお金がいくことでもあり、納得がいかないようです。
遺産相続は、「第三者が関わると、モメる」といわれています。お嫁さんが第三者かというと、「家族関係においては『身内』だけど、相続においては『第三者』」になります。
小さいころから仲が良かった兄弟が、大学進学などを機に別々に暮らし始めることはよくある話です。そして、それぞれに配偶者をもち、別々の家庭をもつことになります。
すると、兄にとっては、お嫁さんはもちろん家族であり、身内です。ですが、母親の相続となると、血縁関係がないため、身内にならないのです。
家族生活においては「身内」、しかし、遺産相続においては「第三者」、それが「嫁」の相続における微妙な立場です。

「長男VS他の子ども」でモメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

「伝統的な価値観」と、「民法」とのギャップが生じていると考えられます。
そのひずみが、さまざまな遺産相続問題を引き起こしています。

昔は、「長男が年老いた両親の面倒をみる代わりに、家の一切の財産を受けつぐ」という家督相続の制度がありました。戦後、家督相続制度は廃止されましたが、廃止後もその価値観はしばらく浸透していたものです。
しかし、現在では、「長男が年老いた両親の面倒をみるが、財産の分け方は法律に定められたとおり」と主張する長男以外の兄弟が増えました。
「争続」でよくある構図の一つが、長男VSその他の子なのです。

被相続人(亡くなった親)と一緒に暮らしていた長男と、一緒に暮らしていなかった他の兄弟姉妹との仲が悪いときも、モメることが多いようです。

特に長男が親(被相続人)と一緒に暮らし、面倒をみていたとなれば、ほかの兄弟よりも多目にもらってしかるべきであるという意識が長男にはあります。これに対して長男以外の弟や妹は、民法の原則どおりの遺産相続を求めてくるのです。権利意識が高まっている現代ではなおさらこの傾向が強いのです。
時には「長男だからといって、同居してたいした介護もせずに親に援助してもらっていたのだから、平等に分けるべきじゃないか」という兄弟姉妹もいて、「長男の問題」や「介護の問題」「同居の問題」は、遺産相続の問題に根深く関与してきます。

「財産らしい財産は、一軒家だけ」でモメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

モメる事例であっても、被相続人である親が残した財産が預金などの現金であれば、比較的簡単に話は進むことがあります。

お金を分けるだけで解決するからです。
しかし、遺産が「分けられない財産」の場合、往々にしてモメる大きな原因になります。

「分けられない財産」の代表格が、不動産

「法定相続分通りに分割する」という内容の遺言を残して、父親が亡くなったケース

母親はもうすでに亡くなっています。「兄弟二人で仲良く家を守っていってほしい」、「兄弟平等に」の親心から書いた遺言です。
残された父親の相続財産のうち、財産らしい財産は、約4000万円と評価された一軒家と、あとは年金暮らしだったため、400万円の貯金のみでした。
残された2人の兄弟は、仲が良かったので、「2人仲良く相続」という遺言に異存はありませんでした。しかし、貯金は兄弟で仲良く分けられますが、不動産はそうはいきません。
一軒家を売り払って、お金を分ける話も出ましたが、「自分たちが育った家だから売却もしたくない……」という強い想いもあります。
ですが、片方が4000万円の家をもらって、片方が400万円の貯金では、あまりにも不平等です。かといって、家をもらう代わりに2000万円を支払うような現金もお互い持っていません。
話し合いを重ねた結果、兄が一軒家を相続して、その半分にあたる金額を代償金として弟に分割で支払うことになりました。
ところが、分割で2000万円を支払うことになったものの、兄はだんだんと支払いが滞りがちになり、ついにのらりくらりと弟の請求をかわすようになってしまいました。困り果てた弟はとうとう、兄に対して裁判を起こすことにしました。
一度成立した遺産分割は原則として覆すことができません。つまり遺産分割をなかったことにはできませんので、兄に支払うように請求し続けるしかありません。
このように「兄弟仲良く2分割」と遺言にあったとしても、それをお互い納得していたとしても、モメることが相続にはあります。相続財産の中には、簡単には「分けられないもの」があるからです。

不動産の価値の評価でモメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

「分けられない財産」である不動産を長男が相続する代わりに、代償金といって、不動産の相続分に値するお金を、不動産を取得しなかった次男に支払う方法もあります。

しかしながら、代償金によって遺産分割することを合意しても、また、モメることがあります。

「不動産の評価方法」でモメる

父親が亡くなり、母親が一人で住んでいる実家を、
遺産分割においてどのように評価するかが問題になったケース

「長女・長男・次女」の3兄弟が相続人です。
唯一の男の子どもである長男は、母親と一緒に住む代わりに家を相続し、その代わり、姉と妹には、「代償金」として、ある程度のお金を渡す方向で話し合っていました。ところが、その「代償金」の金額でモメたのです。
長女は、独自の方法で実家の不動産を1億2000万円と評価し、その3分の1にあたる金額を代償金として要求してきました。
長男は「路線価」に基づいて、実家を9600万円と評価しました。路線価とは、よく1年に1回「今年の路線価で全国で一番高かったのは銀座で、2200万円です」と報道されている1平方メートルあたりの値段のことです。
さらに地元の不動産業者に依頼をして買い取り見積もりも出してもらったところ、やはり「路線価」と同じような価格で9800万円と評価されました。
しかしながら、長女が提出してきた評価額との差は2000万円以上。同じ不動産でも評価方法によってこれほどまでに差が出るのです。
長女はなかなか納得せずに、結局、不動産鑑定士に評価を依頼してはどうかという提案が出ました。けれども、不動産鑑定士に対する報酬は50万円以上にもなる可能性があります。
長男は、悩んだ末に結局、不動産鑑定士には頼まずに、相手方が主張していた価格に近づいて妥協をしました。

不動産の評価は遺産分割の中でも特に重要なポイントです。不動産に対する強い思い入れがある場合は、相場よりも高額で土地を評価してしまいがちです。とはいえ、不動産市況は経済情勢や社会情勢の影響を受けて変動します。
遺産分割で不動産を取得する相続人にとってみれば、自分の相続分からいって、不動産がこれだけ低額の価値しかない以上、もっともらえるはずであるということになります。不動産を取得しない人間にとってみると、不動産の価値がそんなに低いわけがないということになるわけです。
不動産をもらうかわりにお金を支払うことに決めたとしても、今度は、その不動産をいくらと評価するのかでモメることも、よくあるパターンです。

トラブルメーカー一人で、モメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

兄弟全員が合意しているのに、一人だけが反対している。

これも遺産相続で、よくあるモメるパターンです。
相続人の間で、相続財産のすべてをテーブルの上に乗せて、分割方法について話し合いをすることを「遺産分割協議」といいます。この遺産分割協議は「全員合意」が必須です。つまり、相続人が全員「OK」と言わなければいけないのです。
遺産分割協議は、多数決で決まるわけではないので、一人でも反対する人間がいると成立しません。
法律的に正しい遺産分割を提案しても、たった一人「俺は納得しないんだ」と言い切ってしまえば、まとまることを阻止することができるのです。
いわゆる「モンスター相続人」のせいで、遺産相続が混乱することはよくあることです。
父親が亡くなって、残された母親と三姉妹が相続人になったケースで、母親も長女も三女も合意しているのに、次女一人が納得いかないといって弁護人を連れてきて、裁判沙汰になった例がありました。
その次女は、借金を抱えた内縁の夫に貢いでいるという事情もあったので、お金が必要だったのでしょう。弁護士を連れてきて、一円でも多い相続分を主張したのです。
相続事件では家族が全員で争うという構図を想像しがちですが、問題を起こすのは一部の相続人であるというケースは多いのです。

前妻の子、愛人の子が出てきてモメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

相続におけるトラブルメーカーは、「モンスター相続人」にかぎりません。

戦前生まれの父親(被相続人)が亡くなり、母親と長男、長女が相続人になったケース

都内に一軒家と、貯金が2500万円ほどありましたが、長女が「お嫁にいった立場だから」と貯金から500万円を相続するだけで譲ったため、遺産分割協議は、円満に成立するかと思われました。
ところがです。なんと、遺産相続のために戸籍謄本を取り寄せたところ、父親にはもう一人子どもがいることがわかったのです。
「父親には隠し子がいたのか!?」と驚いた長男が事情を調査したところ、「隠し子」ではなく「養子」であることがわかりました。長男の父親は、戦争から帰ってきて、戦死した兄の妻と所帯をもったそうです。戦後の混乱期には、戦死した兄の未亡人を弟が嫁にもらって再婚する例がけっこうあったといいます。長男の父親も、まさにその例でした。その未亡人には、一人、男の子がいて、再婚するときにその男の子も養子にしたそうです。
けれども、養子であっても子どもは子ども。民法上は、長男と同じだけの権利を有します。
この場合、養子を含めると「妻+子3人」ですので、妻が2分の1、子どもは6分の1ずつ相続することになります。都内の一軒家と合わせて、相続財産は、6000万円以上にのぼります。となると、その会ったこともない養子にⅿ万円以上の財産を渡さないといけない計算になるのです。
結局、長男は、この養子に連絡をとり、事情を正直に話して、「相続財産はいりません」という意味の「相続放棄」をお願いしました。いったんは、「事情はわかりました。相続はしません」と養子は納得したのですが、後日、「やはり、いくらかは欲しい」と言ってきたため、しかたなく500万円を渡すことになりました。
このように、「全員合意」の遺産相続では、トラブルメーカーにもいろいろいるのです。声高に「財産を多くくれ」という人にかぎらず、愛人の子であったり、前妻の子であったり、あるいは、身元不明の身内が一人でもいると、とたんにモメる確率があがります。

両親のうち、2回目のほうがモメる1章 遺産相続がもめるには、理由がある

遺産相続問題は二次相続になると深刻化するといわれます。

両親のうちの片方が最初に亡くなる「一次相続」では、残ったほうの親に気兼ねして子どもたちが相続争いをしません。残された親が健在なうちは、お金のことで争うようなみっともないことはできないという理由からでしょう。あるいは、とりあえず親がすべてを相続して、子どもたちの間に差が生まれないようにしていることもあります。
実際に配偶者が相続すると、配偶者を優遇する配偶者控除が使えるために、配偶者が多く相続するケースは多いようです。税制上もそのほうがお得です。
しかし次に残された親が亡くなると、争いが起きます。この二人目の親が亡くなることを「二次相続」といいます。
残された親の面倒を見ていた子どもは、自分が他の兄弟よりもたくさんの相続財産を相続することを当然の権利として要求します。あるいは、もともと仲の悪かった兄弟ですと、もう親に遠慮する必要はない、とばかりに強く権利主張をしてきて、モメにモメることが多いのです。
両親のうちの片方が亡くなっただけの一次相続は、睨みをきかせる親が健在なので争いが起きにくい。ところが残された親が亡くなると、一気にバラバラになることがある。これが「二次相続」のおそろしいところです。

モメる原因は大きく3つある1章 遺産相続がもめるには、理由がある

モメるパターンとして、大きく3つに分けられます。

①親が生きているうちの行動でモメる

親が生きているうちにくれたお金や不動産や、親が生きているうちにしてあげた介護のことなどでモメる

②分けられない財産でモメる

不動産や事業など、分けられない財産をどう分けるかについてモメる

③トラブルメーカーの存在でモメる

「全員合意」が必要となるが、一人でも主張の強い相続人がいる場合や、隠し子などがいた場合などにモメる

遺産相続は、多数の人間が絡む問題ですので、さまざまな理由でモメます。けれども、ある程度、モメるにもパターンがあるものです。
「もしものときの相続知識」として、この3つのパターンを把握しておけば、心強いといえるでしょう。
この3つのパターンについてご説明する前提として、簡単に遺産相続の流れと概要についてふれておきます。

相続の流れ1章 遺産相続がもめるには、理由がある

一口に「相続財産」といっても何を指すのでしょうか。

遺産相続の場合、亡くなった方のことを「被相続人」といいます。相続は、この被相続人の死亡をきっかけに開始します。
よく、「遺産相続は、3カ月以内に決めなければいけない」と思っていらっしゃる方がいます。これは、半分正解で、半分間違っています。
というのも、3カ月以内に決めなければいけないのは、相続するかどうかの意思表示です。
被相続人の財産の中に借金などの債務がある場合があります。
プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合、相続人は、「相続をしません」といって相続放棄することも可能なのです。しかし、全財産がどれくらいあるかが把握できていなければ、そもそも相続をするかどうかの判断ができないことになります。相続放棄や限定承認は相続開始を知ったときから3カ月以内に行う必要があります。そのため、少なくとも3カ月以内には被相続人の財産について大体は分かっている必要があるのです。
ですから「遺産相続は、3カ月以内に」というように解釈されている場合が多いのです。
しかし、「財産をどのようにわけるか」を話し合うのに、デッドラインはありません。
極端なことをいえば、10年後でも、20年後でもかまいません。昭和時代に亡くなられた親御さんの相続の件で、相談にこられた方もいます。
相続について相続人の間で話し合うことを「遺産分割協議」といい、その結果、全員合意のもとに「遺産分割協議書」をつくり、全員が署名捺印することで、「遺産相続が調う」ことになります。これに締切はないのです。
ただし、相続税の申告・納付には締切があります。相続の開始があったことを知った日の翌日から十月以内に、相続財産を確定させて、相続税を申告・納付する必要があります。
相続手続きの流れは以下の図のとおりです。

相続手続きの主な流れ
相続手続きの主な流れ

相続人になれる人1章 遺産相続がもめるには、理由がある

相続人には、誰もがなれるわけではありません。相続人は、「配偶者相続人」と「血族相続人」の2つに分けられます。
「配偶者相続人」とは、配偶者、つまり「妻」や「夫」のことです。被相続人(亡くなった人)が死亡したときに、配偶者である人のことです。ですから、前妻などは、これにあたりません。「配偶者相続人」は、どの相続人より優先されます、
「血族相続人」とは、子どもや両親、および兄弟姉妹のことです。この血族相続人には、財産を相続するにあたって優先順位があります。
第一順位「直系卑属」・・・①子ども ②孫 ③ひ孫
第二順位「直系尊属」・・・①父母 ②祖父母 ③曾祖父母
第三順位「兄弟姉妹」・・・①兄弟姉妹 ②姪・甥
相続の順位は、「直系卑属」が第一優先であり、この直系卑属がいない場合、「直系尊属」に相続の権利があり、「直系卑属」も「直系尊属」もどちらもいない場合に限ってはじめて第三順位の「兄弟姉妹」が相続人になるのです。

法定相続分の割合1章 遺産相続がもめるには、理由がある

相続人のなかでも、法律上の立場によって財産を受け取れる割合が異なります。
これを法定相続分といいます。

配偶者はどの相続人よりも優先されるため、配偶者の法定相続分が一番大きくなっています。
基本の法定相続分のパターンは以下のとおりです。

①配偶者と子どもがいる場合
配偶者と子どもがいる場合

配偶者と子どもがいる場合は、配偶者が2分の1で、残りの2分の1を子どもの人数で割ることになります。

②配偶者はいるが子どもがいない場合
配偶者はいるが子どもがいない場合

配偶者はいるが子どもがいない場合は、配偶者が3分の2で、残りの3分の1は被相続人の親や祖父母(直系尊属)が受け取ることになります。親が2人とも存命の場合は、3分の1を半分ずつ均等に分割します。

③配偶者はいるが、子どもも両親もなく、兄弟姉妹がいる場合
配偶者はいるが、子どもも両親もなく、兄弟姉妹がいる場合

配偶者はいるが、子どもも両親もなく、兄弟姉妹がいる場合は、配偶者が4分の3で、残りの4分の1を被相続人の兄弟姉妹で均等に分割します。ただし、片親が異なる半血兄弟の場合は、両親とも同じくする全血兄弟の2分の1の相続分になります。

④配偶者も子どももいない場合
配偶者も子どももいない場合

配偶者も子どももいない場合は、まずは、直系尊属である両親だけが相続人になります。両親も死亡している場合は、兄弟姉妹で均等に分割します。

なお、この法定相続分の割合は、このとおりに分けなければならないという強制ルールではなく、あくまでも遺産分割の話し合いがまとまらない場合に、指標となる割合です。

財産にあたるもの、調べ方1章 遺産相続がもめるには、理由がある

相続財産にどのようなものがあるか、また現在はどのような状態にあるか(使用者・保管者は誰かなど)、相続開始後に相続財産が変更されていないかなどについての調査が必要となります。
まずは、被相続人所有の不動産の権利証や預貯金の通帳、株券などを探します。財産が不明な場合は、不動産登記簿、預貯金の残高証明書、被相続人の残した所得税の申告書、株式に対する配当通知など財産に関係する書類、相続税の申告書など各種の書類から、相続財産を調査することになります。

弁護士の珍プレー1章 遺産相続がもめるには、理由がある

弁護士の仕事の進め方が遅いせいで遺産分割の話し合いに時間がかかりすぎてしまうケースがあります。もともとモメやすい遺産分割とはいえ、弁護士の進め方が原因でまとまるのに時間がかかることもあるのです。
遺産分割調停は、期間制限がありません。必ずしも毎回書面作成を要求されるわけでもない。調停委員とのやり取りが主で、裁判官に直接、訴訟指揮をとられるわけでもない。緊張感も持たずに、のんびりと進める弁護士もいます。
調停の期日が空転している遺産分割調停に途中から介入したことがありますが、提出書面はろくに出ていませんでした。何年間も何をやっていたのだろうと思ったものです。
通常の裁判においても提出期限を守らない弁護士はたくさんいますが、調停になるとなおさらという傾向があるようです。結果、ついずるずると長引いてしまうことがあります。
また、遺産分割調停は通常、月1回程度のペースで開かれます。毎回、目に見える成果があるともかぎらず、事件にもよりますが、遅々として進まないものです。
たとえば、電話一本ですむようなことであっても、わざわざ開いた期日に依頼者の意向を確認せずに出席し、結局は次回期日までの宿題になる。期日間に代理人である弁護士同士で話して事前に書面を出すことに決めても、結局、期日まで何も書面が出てこない。代理人間で期日までに話し合う宿題があるにもかかわらず、こちらから投げたボールが次の期日まで帰ってこないことも多々あります。すると仕方なく、次の期日まで待つことになります。期日が1回空転すると、月1回の期日ですので、2か月は事が進まないのです。
調停というペースメーカーがない状態でこの弁護士とやり取りをしていると、永久に話し合いが進まないのではないかと思う事件もあります。
遺産分割の話し合いに弁護士が入ったとしても、なかなか決着がつかないのは、ごくまれに弁護士が原因をつくっている場合もあるのです。
もちろん、普通の弁護士であれば、弁護士が入ったことで協議は合理的に進むはずです。

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2021-09-10 [ 相続弁護士の最前線 ]
相続税申告が間に合わないときには
相続税の申告には期限があります。相続開始から10カ月以内、つまり被相続人が亡くなってから10カ月以内、もしくは、被相続人の死亡を知ったときから10カ月とされています。ちなみに納付期限と申告期限は同じです。 10カ月と聞くと一見長いようにも感じますが、相続開始からの10カ月は本当にあっという間に過ぎ去ります。相続人が複数人いた場合、そう簡単に遺産分割は終わりません。しかし、相続税は遺産分割が終わっ…
2021-09-01 [ 相続弁護士の最前線 ]
相続税の申告期限を過ぎるとどれくらい損する?
相続税には納付期限があります。相続開始から10カ月以内、つまり被相続人が亡くなってから10カ月以内、もしくは、被相続人の死亡を知ったときから10カ月とされています。 10カ月と聞くと一見長いようにも感じますが、相続開始からの10カ月はあっという間に過ぎ去ります。相続人が1人であれば問題はありませんが、複数人いた場合はそう簡単に遺産分割は終わりません。相続税は遺産分割が終わっていない場合でも、10…
2021-08-31 [ 相続弁護士の最前線 ]
配偶者居住権と注意点
平成30年7月、約40年振りに「相続法」が大きく改正されました。相続法改正の中でも、よく耳にするのが「配偶者居住権」という新しい権利。配偶者居住権という言葉は知っているが、内容については知らない方のために、配偶者居住権の内容と配偶者居住権についての注意点についてわかりやすく解説していきます。 1、配偶者居住権とは 配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間…
2021-04-15 [ 相続弁護士の最前線 ]
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    商標登録を行いました「磯野家の相続」