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    [CATEGORY]:会社支配権争い

京都遺言事件【一澤帆布】[POSTED]:2019-08-20

2通の遺言が存在

一澤帆布は、厚布でできた帆布カバンで有名な1905年創業の京都の老舗カバンメーカー。
創業者の一澤喜兵衛氏は、シャツや道具入れの製造を中心に行っていたが、 2代目一澤常次郎氏の時代に職人用カバンの製造を開始。
3代目社長の一澤信夫氏は、第二次世界大戦後にリュックサックやテントも手がけた。

信夫氏には長男の信太郎氏、早世した二男、三男の信三郎氏、四男の喜久夫氏の4人の息子がいた。1980年、三男の信三郎氏が家業を継ぐために家に戻り、1988年に4代目社長となる。4代目の下で、老若男女を対象とした帆布カバンが考案され、色数や種類も豊富な一澤帆布のカバンは、広く世間に知られることになる。
4代目が社長として店を切り盛りしていた2001年3月、信夫氏が亡くなった。

弁護士に預けられていた信夫氏の遺言(1997年12月12日付「第一遺言」)の内容は、次のようなものだったようだ。

  • ①信夫氏保有の一澤帆布株(発行済株式10万株のうち6万2000株、発行済株式の62%)の3分の2(発行済株式の約41%)を信三郎夫妻に譲る。
  • ②信夫氏所有の一澤帆布株の残り3分の1(発行済株式の約21%)を喜久夫氏に譲る。
  • ③信太郎氏には一澤帆布株を相続させず、現金などを譲る。

(日経ビジネスオンラインh t t p : / / b u s i n e s s . n i k k e i b p . c o . j p / a r t i c l e / t o p i c s / 2 0 0 9 0 6 2 5 / 1 9 8 5 9 1 / より)

10万株のうち3万8000株については、既に生前贈与として信三郎夫妻に2万5000株(発行済株式の25%)、喜久夫氏に1万3000株(発行済株式の13%)が渡っていた。第一遺言の内容どおりに相続が実行されれば、信三郎夫妻が約66%の株を所有し、経営権を掌握できるはずだった。
ところが、2001年7月、信太郎氏は自分が預かっていたという信夫氏の遺言(2000年3月9日付「第二遺言」)を提示。第二遺言は次のような内容だったようだ。

  • ①信夫氏所有の一澤帆布株の5分の4(発行済株式の約 50 %)を信太郎氏に渡す。
  • ②信夫氏所有の一澤帆布株の残り5分の1(発行済株式の約12%)を喜久夫氏に渡す。

遺言無効確認訴訟を提起

原則として、複数の遺言が発見された場合、矛盾する部分の内容については遺言者の死亡時に一番近い時期に作成された遺言の内容が優先する。
一澤帆布株に関する信夫氏の遺言内容は、第二遺言に記載されたとおりとなるのだ。信夫氏所有の一澤帆布株は、その当時の社長である信三郎氏に一切渡らないことになり、事実上、一澤帆布の経営権を信太郎氏に明け渡すことになる。

信三郎氏は、第二遺言を疑わしいものとして遺言無効確認訴訟を起こし、最高裁判所まで争ったが、2004年に敗訴が確定。
結果、信太郎と喜久夫の両氏は、信夫氏所有の一澤帆布株を取得した。

遺言無効確認訴訟終結後の動き

一澤帆布の筆頭株主である信太郎氏は、2005年12月の臨時株主総会で、信三郎夫妻を取締役の地位から解任し、代わって自らが社長となった。
信三郎氏は社長を解任された後も工場でカバン製造を続けたため、信太郎氏は信三郎氏に対し、工場明け渡しの仮処分申請を行い、2006年3月1日に強制執行した。その際、信三郎氏が従業員を率いて店を出た。一澤帆布は事実上製造部門を全て失い、一時的に営業停止を余儀なくされた。
一方、信三郎氏は 2006年3月に新たなブランドを立ち上げ、翌月に店を再始動した。

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  • 2019-08-20
  • [CATEGORY]: 会社支配権争い
  • [AUTHOR]:遺産相続の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所

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