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    [CATEGORY]:会社支配権争い

後継者争いで「争続」に発展しないために【一澤帆布】[POSTED]:2019-08-24

自社株の生前贈与がポイント

一澤帆布の事例の場合、先代の目の黒いうちに会社の株を信三郎氏に生前贈与しておくことが大切であった。後継者として社長の地位を揺るぎないものにしておくことがポイントだ。
一澤家には信三郎氏以外に2人の兄弟がおり、特に四男の喜久夫氏は本業であるカバン作りの経験があったようだ。信夫氏は、将来的に一澤帆布の経営権争いが生ずる可能性を認識していたはず。
信夫氏が兄弟全員の前で一澤帆布株の帰属を明確にしておけば、このような事態にはならなかっただろう。

これは、信夫氏だけの責任ではない。信三郎氏は信夫氏が亡くなるまでの13年間社長を務めており、その責任として経営の安定を図るための対策を講じるべきであった。信三郎氏は会社の経営に全力で取り組んでいたようであるが、自身の地位の安定については考えが及ばなかった点に落ち度があったといえる。

特別受益に該当しても行うべき生前贈与

信三郎氏に一澤帆布株を生前贈与する場合、「※特別受益」に該当することにも留意しなければならない。ただし、生前贈与での株式一括贈与は、仮に特別受益の問題が生じたとしても、株式という財産の帰属自体は既成事実化し、後継者のものにすることができることから、有効な手段といえる。
遺言によって株式全てを後継者に相続させることにより、他の相続人の遺留分侵害の問題が生じたとしても、遺言がなく株式の所有権の帰属自体に問題が生じる場合よりは、トラブルが大きくなるのを防ぐことができるだろう。

※特別受益…相続人が生前贈与を受けた場合、相続分を計算する際には、その生前贈与の分をいったん相続財産に戻し入れて法定相続分を計算し直すこと。

公正証書遺言の活用

2つ目のポイントは、公正証書遺言を活用することだ。遺言を作成するにあたって、元々相続人同士がいがみ合っていたり、相続人の間で経営方針が対立したりするなど、相続によって自社株の扱いで争いが生ずることが想定される場合は、事の重大性を踏まえて、「※公正証書遺言」を利用したい。

公正証書遺言を利用すれば、遺言が無効になる確率が低くなる。もちろん、公正証書遺言であっても絶対に無効にならないわけではないが、少なくとも形式面での不備は免れる。
一澤帆布の場合は、第一遺言の遺言内容についても、十分とはいえない。

経営者であれば、発行済株式の3分の2以上(67%以上)を確保し、いざとなれば反対株主を排除できるだけの力を持ち、経営を安定化させたいところ。
しかし、信夫氏の遺言では、信三郎氏側の相続分が約66%であり、発行済株式の3分の2以上まであと1%弱程度足りない。一澤帆布の将来を考えると、喜久夫氏に相続させる株式を1%分減らし、その分を信三郎夫妻に相続させる内容とすべきだったといえる。

※公正証書遺言…公証役場で公証人1人と証人2人のもとに作成される遺言のこと。要件不備の不安がなく、確実な 遺言を作成することができること、第三者によって変造・偽造される可能性が低いこと、遺言書の検認手続きが不 要なこと、字が書けない人も利用できることなどのメリットがある。

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  • 2019-08-24
  • [CATEGORY]: 会社支配権争い
  • [AUTHOR]:遺産相続の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所

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