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Q4.介護すれば寄与分が認められるか[POSTED]:2019-06-30

認められにくい

相続法の改正により、相続人でない親族に対しても寄与分が認められるようになった。
長男の嫁が義親を介護していた場合、長男の寄与分であると認定するなどしていたが、今後は嫁の寄与分として認定されることもある。

ところが寄与分の対象者が広がっても、実務に与えるインパクトは小さいのではないか。
寄与分が適用される場面は限られている。
介護の場面ではまず寄与分は認められない。
扶養義務があるものに対する介護は、扶養義務の範囲内の当たり前のこととして扱われる。
扶養義務があるのだから介護をしたところで当たり前の話として扱われる。
逆に扶養義務を果たさずとも特に非難されることはなく、介護したものが負けのような実態があることは否めない。

寄与分が認められる場合は、よほどの犠牲を払って介護をした例外的なケースになる。
実際に公開法廷での裁判と違い、寄与分が争われる遺産分割調停における事例は、公にはならない。
遺産分割調停において交渉カードの1枚として切られる場合も多く、寄与分の主張が結論に何らかの影響を与えたとしても、寄与分の認定の有無について必ずしもすべてのケースで明確になるわけではない。むしろ、明確にならないことがほとんどである。

寄与分の制度が適用される場面はどうなのか

寄与分が認められるとすると、扶養義務の範囲を超えて例外的な検診をしたケースになる。
ただしそこまで例外的な貢献をしないと寄与分が認められないとすると、介護などしないほうがマシということにもかりかねない。
親に対する忠孝を軽くみなす風潮はよくない。
ただもはやそのような時代ではないのかもしれない。
尊属札重罰規定を違憲とした最高裁判例は、45年も前のことである。
道徳を法律で強制することはできないという考えは当時ですらあった。
事実、扶養義務があるといっても具体的な範囲は必ずしも明確ではないし、強制することも現実的ではない。
そうなるとそもそも扶養義務といっても実際は死文化しているようなものである。
実際に裁判に打って出て、扶養義務の履行を強制させることは現実にはない。
扶養義務という概念自体、憲法で謳われる勤労の義務のようなもので、スローガンでしかない。

扶養義務が意味をなさない状況であれば、そもそも扶養義務を盾に、寄与分を否定することも、親の介護を自分ですることが少なくなった現実にそぐわない。
いっそのこと、寄与分が認められるハードルを下げたらどうだろうか。
そもそも扶養義務の程度は親族といえども関係性によって違って当然である。
法的な扶養義務のレベルを一律に判断することは難しい。
にもかかわらず法的には扶養義務があるという一事をもって、介護が寄与分と認められない。
実務の運用が見直されない限り、扶養義務を履行したものがバカを見ることになるのではないか。

他方で寄与分を容易に認めない理由もある。
寄与分を認めることで弾力的な遺産分割ができる一方で、法的安定性が確保できないからである。
寄与分が認められれば法定相続分でバッサリと分割する遺産分割に比べて、細やかな調整ができる。
事案に応じた匙加減や微調整によってオールオアナッシングでバッサリと切ってしまう結論が、ときに残酷ともいえる結果にもなりかねない事態を避けられる。
介護で頑張った分だけ、少し多めにもらうとか、介護で苦労した分、不動産の分割で分けきれない余剰分をもらうなど。
反面で、寄与分を認めることは介護などでかいた汗という見えない部分を金銭に換算することだから、遺産分割毎に一定の明確な基準が分かりにくい。
どの裁判官が判断しても同じ結果が出ることを期待できる法的安定性はそがれることになる。
もめた際に頼る遺産分割調停における基準が明確でないと、自分の主張が認められるのかどうかが判然としない。
やってみないとわからない。
出たとこ勝負になってしまう。
これでは遺産分割を申し立てることをためらってしまうのではないか。

寄与分を認めない理由は、扶養義務の有無というよりも、むしろ法的安定性の要請が強いのかもしれない。
寄与分の問題を解決するためには何が一番良いのだろうか。
どのようなことをしたことによって、どの程度相続財産の維持増加に寄与したかは、結局のところ、寄与を受けた被相続人にしかわからない。
だとすればいっそのこと、被相続人に決めてもらうのが一番良いのではないか。
被相続人が相続人などの寄与を計量化して、寄与分を決める。
寄与を受けた本人が言っているのだから一番信用もできる。
寄与分を認めてもらう相続人以外の者も、納得も行くだろう。

もっともこれは遺言を書くということと実質的には変わらない。
寄与分をポイント化して事前に決めておくくらいであれば、いっそのこと遺言を書いた方がよいのではないか。
遺言を書くことができるにもかかわらず、遺言で優遇されなかった相続人が、寄与分によって優遇されることは実際にはなかなかない。
賢い相続人は遺言を書いてもらっている。

被相続人の財産を自分のもののように費消してしまう家族内ドロボー。
家族内ドロボーは介護者に多い。
介護をするという一見、殊勝な行いと相いれないのだが、介護状態になると財産管理もセットで引き受けることが多い。
自分では財産を管理できなくなった段階で介護をする相続人が必要になる。
家族内ドロボーが目的であるわけではないのだろうが、魔が差すのだろうか。
介護をする相続人がいる場合、介護を寄与分で考慮するかどうかの問題よりもむしろ、家族内ドロボーの疑惑がかかるかどうかの問題の方が、実務としては多いのだ。

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