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Q46.長男が書かせた遺言のようだが[POSTED]:2020-01-07

「書かせた」の意味。作成過程を治癒する公正証書遺言の署名押印。

本当によく相談者から受ける相談である。
公正証書遺言に関する相談では必ず出てくる訴えである。

遺言者が書いた内容ではない。
このような遺言を書くはずがない。
公証役場に連絡を取っていたのは同居していた兄なので、遺言者の意向とは異なる。

遺言を「書かせた」とはどういうことなのか。
「書かせた」の意味を相談者がどういうつもりで言っているのか。
強制的に意に反して無理やり書かせたという意味なのだろうか。
そこまでは思っていない相談者が多い。

相談者の訴えは、実質的には遺言者の意向ではないという意味であることが多い。
遺言者は違う意向であったにもかかわらず、流れで意味も分からず署名してしまった。
このような相談に対しては、公正証書遺言作成の流れを説明することが必要になる。

公正証書遺言は相談に行った際に即日で作成されることは少ない。
必要書類もあるし、文案を公証役場が修正して最終的なものにする。
この過程を遺言作成者本人が行っていればあまり問題になることはないのだが、問題になる公正証書遺言は遺言作成者本人ではなく、たいていは同居の相続人が、公証役場に相談している。
相談の後に文案のやり取りなどを重ねていき、最終的に、遺言作成者本人が公証人に会うのは、遺言作成当日であることがほとんどである。

公証人に作成当日に初めて会うこと自体はそこまで珍しくなく、それどころか、なかには遺言作成をすること自体を当日、公証人が訪問するまで、全く遺言作成者が聞いていないこともある。
それでも内容を公証人が説明し、最終的には納得して署名していることが、全てを事後的に追認していることになる。
遺言作成者の関与が小さい遺言は、確かに望ましいプロセスではないのだが、最終的に納得して署名していることで治癒されているということになる。

いわば遺言作成者不在の作成過程については、本来の姿ではないとして、批判もある。
公正証書遺言だからこそ、遺言作成者の関与が薄い遺言が作成できる。
自筆証書遺言は財産目録についてワープロ打ちが認められる法改正が行われたものの、徹頭徹尾自筆性が要求されるため、遺言者が知らず知らずのうちに作成されたという評価はしづらい(もっとも遺言能力が疑われることがある)。
それだけにいわゆる書かせた遺言はほぼ例外なく、公正証書遺言を利用している。

遺言作成者がそもそも遺言作成の全過程において関与している公正証書遺言でなければ認めない。
最初の相談の段階から、遺言作成者本人からしか受け付けない。
このような実務に変更になった場合、おそらくは公正証書遺言の作成件数は大幅に激減するだろう。

そもそも遺言を自発的に作成する高齢者は、絶対的に少ない。
高齢者の決断は遅い。
自分の死を前提にする遺言作成をする決断もしない。
そんな中で、たとえ周りのイニシアチブで決断したにせよ、最終的に遺言作成者が署名している公正証書遺言を有効にしなければいけない社会的要請もある。

翻って、見つかった公正証書遺言に対して、遺言作成者本人の意向ではないという相談者に対しては、最終的な署名をしたことによってそれまでの過程に関する関与が治癒されることを説明しなければならない。
それでも遺言が無効であるというならば、遺言能力がないなどの事情を主張していく必要がある。
ただしそれは署名前の遺言作成過程における関与の代償とは異なる問題である。

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