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    [CATEGORY]:会社支配権争い

いざとなった場合に使用権を取り上げるには【キタムラ】[POSTED]:2019-09-03

ブランドイメージの毀損を回避する

同じ横浜元町という立地で、同じマークを同じ商品群で使用すれば、顧客層が重なって商売敵になることや、キタムラとキタムラK2の関係を知らない顧客にとってどちらも同じ店に見えてしまうことは、当然想定されることである。
キタムラK2が、キタムラにとって想定外の商品や他のブランドとのコラボレーション商品に「K」マークを使用すれば、その商品自体はキタムラK2のものであっても、キタムラのブランドイメージに影響を与えるだろう。

仮に、キタムラK2商品の品質が劣悪である場合、キタムラの商品と誤認した消費者から商品クレームが多数寄せられ、その対応に追われるなど、キタムラに営業上の損失が生じる可能性もある。また、結果としてキタムラの商品の評判が落ち、キタムラのブランドイメージが毀損され、売上が減少することもあるだろう。
たとえ品質に問題がなかったとしても、同じ業界で同じマークを使用する兄弟会社を消費者が区別することはかなり難しい。

厳格な使用条件や禁止行為事項を定めるべき

本来、トレードマークを変えることが両者を区別しやすくするもっとも有効な方法の一つなのだが、同じ「K」マークの使用を許すのであれば、営業エリアや取扱商品など、マーク以外で消費者が識別できるようにする手当をすべきだった。

特に、ファミリーネームやペットネームと違い、「K」マークや「 K I T A M U R A 」ロゴといった自社のハウスマークの使用を他の会社に認めるのであれば、厳格な管理をしないと、自社のレピュテーションやブランドイメージの毀損を免れない。

キタムラの場合、リスク回避のため、営業譲渡契約に厳格な使用条件や様々なリスクを想定した禁止行為条項を定めておかねばならなかったといえる。
営業譲渡契約中に規定された、キタムラK2の商標使用の制限に関する内容は、次のとおり。

  • ・指定された物(ハンドバッグ・カバン・小物類・Tシャツ・その他現在使用している商品など)に「K」マークを使用。将来指定された物以外の商品などに使用する必要がある場合、キタムラと協議。
  • ・「K」マークを第三者に使用させない。
  • ・看板や広告などに「K」マークを使用する場合、キタムラK2、キタムラ2あるいはK2と明示。キタムラとの識別を周知徹底させる。

ハウスマークを使用させるにしては、契約条件の内容が著しく抽象的でリスクを回避できているとはいえない。
営業譲渡契約においては、禁止行為として、許諾マークの識別力を失わせる行為、許諾マークの信用を毀損する行為、許諾マークと類似・混同する商標の出願行為などを明確化しなければならない。また、許諾マークを使用した商品の品質基準や事前品質検査を定め、許諾マーク使用商品の品質管理を徹底させる必要がある。更に、禁止行為に及んだ場合や品質管理に従わない場合は、即座にマーク使用の中止・商品の製造販売の中止ができる権利を定めておくべきであろう。

契約内容の定期的な見直しが必要

これらの契約条件を盛り込むことは、契約内容を予めコントロールすれば十分可能だ。ここまで契約書で手当しても、許諾する側としては不安が残るもの。兄弟会社への使用の許可であったことや、紛争処理委員会頼りで、詳細な条件を決めずに、曖昧にしてしまったのかもしれない。その心の隙が、ここまでもめた要因であったといえる。
また、契約で定めた条件は、年月が経過するにつれて実態に合わないものとなる可能性が高い。特に、商標のライセンスは長期的な使用が見込まれる。一方、技術は日進月歩の勢いで進化し続けており、使用権を認めた当時には想定されなかったビジネススキームやリスクも登場し、新たなブランド毀損リスクが発生する恐れもある。そのため、定期的な見直しは必須。見直しを可能とする条項を契約に盛り込んでおくとよいだろう。

マーク使用許諾条件の厳格化がポイント

ちなみに、商標は、商品やサービスに付ける文字、図形、マークなどのこと。商標出願し、商標権として登録できれば、原則10年間、出願の際に指定した商品やサービスの範囲で、その商標を独占的に使用でき、販売促進やブランドイメージの確立に利用される。
商標権は、出願から原則20年で権利が満了する特許権とは違い、更新料さえ支払えば何度でも更新が可能な半永続的な権利。キリンのビールラベルなど、100年以上前に登録された老舗の商標が、更新し続けることにより現在も保護されている。

使用許諾するマークについては、商標権として権利が確保できているかを事前に確認したい。特に商標権は、権利化の際に使用する商品を指定しなければならない。指定商品の範囲にしか商標権の効力が及ばないため、指定商品の範囲については十分に検討が必要だ。使用許諾する相手が将来的に使用しうる商品を全て網羅しておかないと、商標権を主張できないこともある。
マーク使用許諾条件の厳格化がポイントだ。

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  • 2019-09-03
  • [CATEGORY]: 会社支配権争い
  • [AUTHOR]:遺産相続の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所

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