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預金の不正操作遺産分割の弁護士

預金の不正操作預金の不正操作

1 類型

(1)被相続人が生前に引き出した場合
①被相続人が自分で使用

被相続人が自分の預金を自分のために引き出し、使用したのですから、問題は発生しません。

②被相続人が長男に贈与した場合

長男の特別受益が問題となります。

③使途不明の場合

使途についての証明ができなければ、訴訟において問題にすることはできません。多くの場合は自分で使ったのであろうという推定がなされ、①と同様の結論になります。

(2)長男が引き出した場合
①長男が被相続人の指示で引き出し、被相続人のために使用した場合

上記(1)①と同様に、被相続人が自分のために使用したのですから、問題は発生しません。

②長男が被相続人の指示で引き出し、長男に贈与した場合

上記(1)②との違いは被相続人自らが引き出したか、長男が代理人となって引き出したかという点のみですから、同様に長男の特別受益が問題となります。

③長男が被相続人の指示で引き出し、使途不明の場合

預金を引き出すこと自体には何ら問題はありません。上記(1)③と同様に、使途についての証明ができなければ、訴訟において問題にすることはできません。多くの場合は引き出しの指示をした以上は自分で使ったのであろうという推定がなされ、①と同様の結論になります。

④長男が被相続人に無断で引き出し、被相続人のために使用した場合

引き出し自体は被相続人の無断で行っていますから無権代理行為ですが、結局は被相続人のために使用したのですから、特に問題とならないでしょう。

⑤長男が被相続人に無断で引き出し、自分のために使用した場合

このパターンが正に財産の不正操作に該当します。

⑥長男が被相続人に無断で引き出し、使途不明の場合

これも上記⑤と同様、財産の不正操作のパターンとなります。

(3)引き出した者及び使途が不明の場合

この場合は、引き出した者及び使途について証明できなければ、訴訟において問題とすることはできません。

【コラム】 金融機関における本人確認の実情

金融機関では預金引き出しに当たって顔写真の入った運転免許証やパスポートのような身分証明書の提示を求め本人確認を行っています。
身分証明書について以前は、健康保険証などでも通用したようですが、現在は顔写真入りのものを求められます。運転免許証がない場合は、健康保険証でも通用するようですが、その他の本人確認書類も合わせて提示を求められます。
ただしどんなに本人確認を徹底しても、同性で年齢の近い家族が本人を語った場合には、顔が似ていることも多く、すり抜けてしまうことも多いと予想されます。
多数の財産の不正操作が発覚している現実からしても、本人確認はある程度杜撰なやり方で行われている現状があると想像できます。

2 取り戻す方法

(1)取り戻す方法(相続開始前の引き出し)

相続人の1人が無断で被相続人の預貯金を引き出した場合、引き出した相続人は金員を受領した時点で民法704条前段の悪意の受益者となります。
相続人が無断で預貯金を引き出した場合であっても、直ちに他の共同相続人に対する不法行為となるわけではありません。引き出した相続人が被相続人の口座を管理していることを利用して金員を引き出したうえ、自己の利益のために隠匿ないし領得した場合に限り、他の共同相続人に対する不法行為が成立することになります。
長男が父親に無断で預金を下ろした場合、父親の長男に対する不法行為損害賠償請求権又は不当利得返還請求権が発生し、父親が死亡による相続開始時にこれらの請求権が長男以外の相続人に法定相続分に応じて当然に帰属することになります。父親が死亡した時点で、預金は各相続人の法定相続分に従って当然に分割されます。相続人が兄妹2人であるなら、その預金の半分は自分のものですから、兄である長男が勝手に引き出した預金額の半額の返還を請求できるのです。

(2)取り戻す方法(相続開始後の引き出し)

相続預金を勝手に引き出した人があるとき(相続開始後と限定します)、 相続預金は可分債権なので、相続開始と同時に法定相続人が法定相続分で承継しますから、自分の財産を勝手に使われたとして勝手に引き出した長男に対して、他の相続人は不当利得として返還請求していくことができます。

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