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ステークホルダーとの良好な関係を最優先に【佐川急便】[POSTED]:2019-10-26
株を買い増して株主としての支配力を徐々に強める
光氏の代表権を剥奪し、クーデターを企てた旧経営陣の有力者である副社長2人を解任したのは見事であった。カリスマ経営者である清氏も2002年に亡くなった。
光氏ら佐川一族が保有する佐川急便株は当時で合計20%程度であり、取引銀行など他の株主は社長側を支持する姿勢を明確にしているため、今となっては佐川一族の存在が経営を脅かすほどではない。
今後は、株の後ろ盾がない栗和田氏が、株を買い増して株主としての支配力を徐々に強める必要もあろう。ただ、株の買い増しには多額の資金が必要なため、おいそれと実現できるものではない。過半数の持株比率を獲得できていないうちは、大株主らとの良好な関係構築を優先すべきである。大株主らステークホルダーをないがしろにすることがないよう、注意が必要だ。
一度社長を解任された後、間をおかずして社長に再任
取締役会で社長を解任された栗和田氏が、同じ取締役会の中で再任されるのはおかしいのではないかと思う方もいるのだろう。
しかし法律上は、社長の解任は代表権の剥奪を意味し、平取締役に戻っただけである。
平取締役は社長に選任される候補者であり、平取締役に戻った栗和田氏にも社長に選任される権利は当然あるのだ。
それにしても、一度社長を解任された後、間をおかずして社長に再任されることには、違和感を禁じ得ない。なぜ法律は、これを規制あるいは禁止しないのか。
そもそも、取締役会設置会社において、代表取締役(社長)の選任は、取締役で構成される取締役会で決定される。その取締役は、「経営のプロ」として株主総会で経営を任された者たちである。株主総会で選任された経営のプロに、代表取締役の選任・解任を任せることで、会社の適切な業務執行を実現するというのが法の趣旨だ。だから、これを禁止する理由がないということになる。
もちろん、建前は理解できる。ただ感覚的なことをいえば、一度代表者として失格の烙印を押された者が、その数分後に代表者として復活するのは奇妙であり、世間から厳しい目で見られるのは確実。経営陣のいざこざに取引先も不安を禁じ得ないだろう。再任した社長は、これまで以上に高い成果を求められる。
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