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事前の一策、事後の百策に勝る【日舞花柳流】[POSTED]:2019-10-29
お家騒動における事前準備の重要性
伝統芸能では、「家元」という地位は非常に重要。有名流派の家元であるだけで、弟子が大勢ついてくる。だからこそ「家元争い」はお家騒動としてもっとも熾烈で、もっとも醜い争いとなりやすい。
3代目壽輔氏はこの家元争いの事態を回避するために、生前に策を講じておくべきだった。事前の準備が疎かになったがゆえに、血みどろの争いに発展し、現在も解決に至っていないのだ。転ばぬ先の杖とはよくいったものだ。
生前に次期家元を指名し、家元として必要な稽古場などの資産を贈与
3世家元は、稽古場などの事業用資産も自らの名義にしていたため、跡目を継ぐ際に事業用資産も継がなければならない。スムーズな承継を目指すのであれば、後継者に跡目も資産も全て生前に引き継いでおくべきであった。
特に跡目の指名については、遺言を残すよりも生前に目を光らせることができる分、余計な跡目争いを避けることができる。
跡目・遺産に関する遺言を作成
前述のように生前に指名・贈与できればいいが、「健康だしまだまだやれる。公表は時期尚早」と考えて動かない場合もあるだろう。しかし人生、いつ何が起こるかはわからないもの。生前に次期家元を指名し、家元として必要な稽古場などの資産を贈与しないのであれば、万が一に備え、遺言を残しておくのは最低限の義務といえる。
特に法定相続人がおらず、法定相続人でない者が跡目を継ぐしかないケースでは、遺言は必須だ。遺言がなければ3世家元には法定相続人がいないので、遺産は最終的には国庫に帰属してしまうからだ。
特別縁故者として認められない場合も
法定相続人がおらず、遺言もない場合でも、特別縁故者に対する財産分与が認められる場合がある。
ここで注意したいのは、特別縁故者にあたるか否かは家庭裁判所の裁量次第ということ。特別縁故者にあたらないと判断されてしまえば、財産分与を受けることはできない。また、特別縁故者の申立て期間にも限りがある。相続人の捜索公告の期間満了後3ヵ月以内に申立て手続きをしなければ、特別縁故者として財産分与請求をすることはできなくなる。仮に特別縁故者として認められても、通常の相続の場合と比較し、相続税の面で不利な取扱となる。
後継者のことを思い遣れば、やはり遺言作成は必要だ。
- 2019-10-29
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