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事業承継で「争続」に発展しないためには【ニトリ】[POSTED]:2019-08-08
創業家における事業承継のポイント
創業家による事業承継の場合、事業会社の株を後継者のみに引き継がせることは決して不自然なことではなく、経営安定化の観点からは正しい判断といえる。「※被相続人」である先代の株が相続人の間で分散して相続されると、のちにトラブルになるからだ。
例えば、創業者である父親が亡くなった場合、その創業者が、相続人である妻(母親)、後継者である社長の長男、そして二男の3人に平等に財産を相続させたいと考え、遺言によって株を3人に等分に分配したとする。するとどうだろう。将来、妻と二男が結託して3分の2の株をもって、後継者である長男を社長の座から引きずり降ろし、会社を乗っ取ってしまうことも可能なのだ。
「会社は生き物」というが、経営者はまさにその頭脳。無能な者が会社を乗っ取ると、本業がうまくいかなくなることがある。だからこそ経営者は、会社をつぶさないためにも経営を託せると判断した後継者に対して、株を含めた事業用資産を一括承継させることが大切だ。
※被相続人…相続される人、つまり相続される財産、権利の元の所有者のこと。
67 %以上の株式確保を目標に
ニトリ株を誰に承継させるのかという問題だが、前述のとおり後継者である昭雄氏に株を一極集中させることが望ましい。
義雄氏は生前に、ニトリ株を全て昭雄氏に承継させることに家族全員が従わざるを得ないような状態になるよう調整するべきであった。
ただ、全ての株を 1 人に渡すとなると、他の家族からの反感を買い、調整が難しくなることもしばしば。全ての株の承継が難しい場合、どこまで譲歩できるのだろうか。一つの考え方としては、後継者以外の家族や株主が不穏な動きを見せたら、株の強制買取ができるだけの株式を手元に残しておくこと。この場合、強制買取手続きの過程で株主総会の特別決議を得なければならず、議決権の3分の2以上が必要になる。そのため、譲歩ラインの一つの目安は、発行済株式の67%となるだろう。
ニトリのケースでは、義雄氏が後継者の昭雄氏に対してニトリ株を生前贈与し、可能であれば全ての株を、調整が難しいようであれば最低67%の株式を譲渡すべきであったのだ。
事業承継において株式を生前贈与する際の注意点
株式の生前贈与については、相続時精算課税方式を用いて贈与することもある。これは通常の譲渡と異なり、株価の算定を生前贈与の時点で固定してから、実質的には相続税を課税するものである。株価が低迷している時に贈与したり、株価を人為的に下げたりしてから贈与することにより、相続発生時に株価が上がっていたとしても、贈与時の低い株価で評価することが可能になる。
もっとも、生前贈与をする場合には、特別受益に該当する点に注意が必要で、遺産分割時に他の相続人から調整を求められる可能性がある。これについては、生前贈与を受けた相続人が代償金を支払えるよう対策を講じておく必要がある。
生命保険を活用して代償金を確保
代償金確保の方法として有効なのが生命保険の受取金。生前贈与を受けた相続人を保険金の受取人に指定しておけば、保険金を代償金として活用することができる。
生命保険の受取金は相続財産とみなされないので、特別受益を計算するにあたって考慮されない。間違っても、生前贈与を受けていない相続人を受取人にしてはいけない。相続財産としてカウントされない生命保険金を受け取るだけ受け取ったうえで、更に特別受益の持ち戻しを主張できてしまうからだ。
不平等な分け方の時こそ遺言を活用
裁判所も昭雄氏へ極端に偏って遺産分割されたことを認めているが、後継者に株式を集中させる場合のように、「※法定相続人」の間で相続分に偏りが出る時こそ、遺言が必要となる。
前述のように生前贈与をしないのであれば、株式全てを昭雄氏に一括相続させる旨の遺言の作成が必須だ。遺言があれば、遺産分割協議を経ることなく遺産分割をすることができ、昭雄氏がみつ子氏らから裁判を起こされることもなかったであろう。遺言がないと、ニトリ株が昭雄氏以外の相続人に相続されて離散し、会社の承継がうまくいかなくなったり、将来相続人同士でニトリの経営権争いが起こったりすることもあり得る。
遺留分に配慮した生前対策
特定の相続人に対して多くの財産を与える内容の遺言を書く際には、「※遺留分」に気を付ける必要がある。多くの財産をもらった相続人は、遺留分を侵害された相続人から裁判を起こされる可能性があるからだ。
ニトリのように創業者が後継者に株式を一括集中して相続させることにより、ほかの相続人の遺留分を侵害することが避けられない場合はどうしたらよいか。
そのためには遺留分を少なくすることが有効だ。
つまり、遺留分トラブルを封じるためには、遺留分をできるだけ小さくするよう、生前に対策を講じておく必要があるのだ。
具体的な遺留分の額は、シンプルに説明すると下の計算式で算出される。
遺留分額 = 相続財産 × 法定相続分 × 遺留分割合
相続財産を小さくすると二重のメリットが
生前対策の一つは、相続財産の部分を小さくすること。
例えば後継者を受取人とする生命保険に加入し、相続財産を小さくしておく。この方法は、後継者に二重のメリットがあるので一般的によく使う手だ。
相続財産は、支払った保険料の分だけ減ることになる。また、生命保険金は相続財産ではないので、受取人が相続財産を受け取ったことにはならず、遺留分に影響しない。他の相続人の遺留分を減らしつつ、後継者の受け取る金銭を増やせるので、後継者以外の相続人がいる経営者の方にはおすすめの方法だ。
養子をとって法定相続分を小さくする
もう一つは、法定相続分を小さくすること。
法定相続分を小さくすることは、相続人を増やせば実現できる。養子をとればよいのだ。長男の嫁や孫などを養子にとって相続人を増やせば、法定相続分はどんどん小さくなり、遺留分を減らせる。
養子は子どもがいる場合に1人までと制限があるのでは、という質問を受けるが、それは例えば基礎控除額を計算する際など、相続税の計算をする時の話。遺産分割で遺留分を計算する時には、特に人数制限はない。
※ 法定相続人…被相続人の財産を相続する権利があると民法で定められた人のこと。
※ 遺留分…遺言の内容によっても奪われることがない法定相続人の最低限の権利のこと。ただし、兄弟姉妹には遺留分は認められない。
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