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井川家による統治の崩壊【大王製紙】[POSTED]:2019-10-05
お家騒動のきっかけは刑事事件
意高氏は、高雄氏の絶大な影響力を背景に、子会社役員らと強い主従関係を結んだ。子会社役員らは、意高氏の要求を断れない極めて従属的な立場にあった。
意高氏はその立場を利用し、社長を兼務している子会社から、計85億円あまりを自分個人への貸付として個人口座やラスベガスの口座に振り込ませた。その多くはカジノなどの遊興費につぎ込まれる。
2011年9月7日、井川家ファミリー企業から大王製紙の関連事業部宛てに「9月2日に会長の個人口座に3億円を振り込んだ」とのメールが届く。社内調査を行ったところ、意高氏への多額の貸付が発覚。意高氏は責任をとり、会長職を辞任した。
同年 11 月、意高氏は東京地検特捜部に逮捕された。翌年10月の第一審では、特別背任罪で懲役4年の実刑判決。翌々年2月に上告が棄却され、判決が確定した。
この事件をきっかけとして、井川家直系と大王製紙との対立が激化し、井川家直系の失脚が進むことになる。
創業家と会社の全面対立
井川家直系の高雄氏は顧問の職を解任され、高雄氏の二男の高博氏も取締役を辞任した。
大王製紙は、脱井川家を進めるため、創業家が保有する子会社株の買取を目指したが、井川家直系は提示された金額が安価であったため拒否。大王製紙は関連会社が持ち合っている株式を買い取り、子会社数を増やした。
脱井川家の動きに対抗するためなのか、2012年2月から3月にかけて、井川家直系は、自らが過半数を握る井川家ファミリー企業において、大王製紙からの出向役員を解任し、経営陣を一新。
井川家直系と大王製紙は、井川家ファミリー企業の経営権を巡り、全面対立することとなった。
- ①しかし、意高氏の巨額な借入金返済もあり、高雄氏は同年8月までに、保有する大王製紙株とその井川家ファミリー企業株を全て北越紀州製紙に売却。
- ②そのうち井川家ファミリー企業株については、北越紀州製紙が大王製紙に譲渡した。
これにより、井川家直系の大王製紙に対する支配力は著しく低下したが、高雄氏は株を手放す見返りとして大王製紙に顧問として復帰。大王製紙への井川家直系の関与は続くことになった。
井川家直系による大王製紙株の売却の結果、北越紀州製紙が大王製紙の筆頭株主となった。
脱創業家とはならず
創業者伊勢吉氏の子どもで高雄氏の兄弟ら(井川家傍系)は、保有する大王製紙株と井川家ファミリー企業株を手放さず、大王製紙株についてはむしろ買い増しを行い、経営への支配力を強めていた。
大王製紙の経営陣は、井川家直系からの株買い上げに協力した北越紀州製紙より経営統合を打診されていたが、頑なに拒み、あくまで独立路線を貫いている。その一方で、井川家傍系とは歩調を合わせていくことを匂わせる発言も。結局、脱井川家とはまではならず、大王製紙と井川家の強いつながりは今後も継続ということだろうか。
- 2019-10-05
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