sozoku.com相続専門の弁護士･税理士による
ワンストップサービス

会社支配権を巡る裁判へ発展

2013年10月、ききょう企画の保有する大塚家具株を巡って、勝久氏と久美子氏の間で裁判上の骨肉の争いが起きていた。

ききょう企画は、大塚家具株189万株（9・75 ％）を保有しており、実質上、久美子氏の支配下にあった。
経緯は以下のとおりである。

• ①勝久氏は大塚家具株の一部130万株をききょう企画に譲渡。ききょう企画は株式の買取資金を捻出するために銀行から 15 億円の短期融資を受けた。
• ②ききょう企画は 15 億円の短期融資を返済するために同額の社債を発行し、
• ③勝久氏が引き受けた。
• ④勝久氏は、社債償還を求め、ききょう企画を相手取り、東京地方裁判所に訴訟を提起。

一方、久美子氏は、ききょう企画は事業承継のために設立されたものなので、未達のうちに償還してはスキームが無意味になると反発。社債の償還期限の延長を主張した。
もし、社債が償還されるとなると、資金がないききょう企画は※代物弁済として大塚家具株を引渡すしかない。結果、久美子氏の支配下にあるききょう企画の大塚家具に対する持株比率が下がり、大塚家具における久美子氏の影響力が低下することになる。
ききょう企画の社債償還を巡る訴訟は、大塚家具の支配権を巡る裁判にほかならなかった。

※
代物弁済…債務者が本来負担していた給付の代わりに、他の財産を給付すること。本来の給付が行われた場合と同様に、既存の債務を消滅させる。

久美子氏の対抗策

前述のききょう企画保有の株争奪戦に付随して、久美子氏は先手を打つ。

• ⑤社債償還訴訟係属直前に、ききょう企画との間で、大塚家具株約189万株の譲渡担保契約を締結した。つまり、
• ⑥久美子氏がききょう企画に資金を貸し、その担保として、ききょう企画が久美子氏に大塚家具株約189万株を差し出すというスキームで、大塚家具株が勝久氏の手に渡らぬように避難させたのだ。 これにより、大塚家具株は、ききょう企画の証券口座から久美子氏の証券口座に移された。
  名義がききょう企画から債務者ではない久美子氏に変更されているため、債権者の勝久氏は、ききょう企画の大塚家具株に手出しができなくなった。
• ⑦勝久氏は、久美子氏の行為は金銭の貸付の実態がなく、社債償還を巡る裁判に負けて資産を差し押さえられることを回避する目的でなされた「財産隠匿」であると強く非難。その譲渡担保契約が無効であると主張し、2015年に訴訟を起こした。

ききょう企画に関する二つの戦いの両方で勝久氏が勝訴すると、譲渡担保契約は無効となり、大塚家具株は 15 億円の社債償還の代物弁済として勝久氏に渡ることになる。すると、久美子氏側の持株比率が 10 ％弱低下するため、経営者としての地位が不安定となり、大塚家具は勝久氏に乗っ取られる可能性もある。
久美子氏としては、どちらか一方の戦いに勝てば、当面は凌げることになる。

ページトップへ戻る

• 2019-07-27
• [CATEGORY]： 会社支配権争い
• [AUTHOR]：遺産相続の弁護士･税理士 永田町法律税務事務所