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相続紛争から商標紛争へ

場所を変えて特許庁でも君島家の兄弟は争っていた。
事の発端は、君島明氏側が登録した商標（登録第5135313号）。この商標は、欧文字「 k i m i j i m a 」を大きく中央に据え、図形と組み合わせたものである。
これ以前に、君島一郎氏の本妻の由希子氏・長男の立洋氏サイドも商標出願していた。しかし、この時に登録できた商標は、立洋氏の氏名の欧文字「 t a t s u h i r o k i m i j i m a 」の商標と、由希子氏のイニシャル２文字「ＹＫ」の大きな図案と欧文字「 k i m i j i m a 」を組み合わせた商標など、両氏の氏名に関連付けた商標のみ。欧文字「 k i m i j i m a 」をメインに据えた商標を登録できていなかった。

問題となった明氏側の商標出願の公開後に、由希子氏・立洋氏側が同様に欧文字「k i m i j i m a 」をメインに据えた商標を出願している。問題の明氏の商標出願が、由希子氏・
立洋氏側の癇に障ったのかもしれない。
明氏の商標出願は審査登録後に、由希子氏・立洋氏側からその登録に対し異議申立てがなされたものの却下され、商標登録は現在も維持されている。

一郎氏あってのブランド

その異議申立ての審決の中で、興味深い判断がある。由希子氏・立洋氏側は、明氏の問題商標が登録されるべきでない理由として「k i m i j i m a 」はデザイナーである君島由希子氏の一部をローマ字表記したものだからと説明。「君島」「キミジマ」「 k i m i j i m a 」の文字は、女性用被服などの消費者にとって、君島由紀子氏を示す著名な略称であり、これらを明氏が使用すると、由希子氏の商品と誤認混同（間違い）が生ずるとして、明氏の商標登録に異議を唱えた。

しかし特許庁は、審決において異なる判断を下した。由希子氏が商業上使用する「Y u k i k o K i m i j i m a 」や「ユキコ・キミジマ」が、「 k i m i j i m a 」や「キミジマ」の文字をもって宣伝広告などで紹介されているわけではない。よって、「 k i m i j i m a 」や「キミジマ」が「 Y u k i k o K i m i j i m a 」や「ユキコ・キミジマ」の著名な略称とはいえない。また、「k i m i j i m a 」や「キミジマ」は、君島由希子氏の女性用被服などの商標として広く認識されたものではないとした。
オートクチュール「君島」ブランドそのものは、一郎氏亡き後はその輝きを失ってしまったともいえる。やはり故人一郎氏あってのブランドなのである。

• 2019-09-25
• [CATEGORY]： 会社支配権争い
• [AUTHOR]：遺産相続の弁護士･税理士 永田町法律税務事務所