sozoku.com相続専門の弁護士・税理士による
ワンストップサービス

会社支配権争い 遺産相続の弁護士・税理士相談はお任せ下さい|sozoku.com

    [CATEGORY]:会社支配権争い

親子げんかを未然に防止するために―久美子氏側の対応【大塚家具】[POSTED]:2019-07-31

ブランドイメージの低下を避けるためには

委任状争奪戦に関する一連の親子げんかは、従業員や取引先を不安にさせただけでなく、「IDC大塚家具」ブランドのイメージを大きく毀損した。
高級家具を扱うだけに、ブランドイメージの低下は何としてでも避けるべきで、これを未然に防ぐことが大塚家具にとって最良の選択肢であったといえる。
双方は何をすべきであったのだろうか。

久美子氏がとるべきであった対応から検討したい。

2015年1月のクーデターで、久美子氏は社長の座を取り戻したものの、勝久氏に筆頭株主としての力が残っていたために、委任状争奪戦を繰り広げることになった。
久美子氏としては、筆頭株主としての勝久氏の力を封じることが重要であった。取締役会から勝久氏サイドの人間を放逐すれば、久美子氏は委任状争奪戦を回避し、経営者としての地位を確固たるものとできたはず。

逆に筆頭株主としての勝久氏の力を封じることができなければ、今回は経営陣から勝久氏側を追い出せたものの、今後、久美子氏が社長を追われる危険もある。

株主として勝久氏を超える力をつける

まず考えられるのは、久美子氏による大塚家具の買収、「MBO(マネジメントバイアウト、経営陣が参加する買収)」だ。

このケースの MBO では、まず大塚家具の発行済株式数の3分の2まで TOB(株式
公開買付)で買い集める。次に、株主総会で普通株式を「※全部取得条項付種類株式」に変更する「※特別決議」を行う。その後、勝久氏側の株式を含めた少数株主の持つ残りの株式を公正な価格(例えば TOB 価格)で強制的に全て買い上げる。この手法は、少数株主を締め出す「スクイーズ・アウト」と呼ばれ、企業の組織再編や M&A(合併・買収)によく利用される。
ただし、買収が成功する可能性は非常に低い。久美子氏がTOBで発行済株式数の3分の2まで買い集めることが事実上難しいからだ。

勝久氏側は当然、買収に反対の意向を示し、当時保有していた約 18 %の株式について、TOBには応募しなかったと予想される。ききょう企画の保有株約10%については、担保目的で久美子氏名義になっているが、訴訟の行方次第では久美子氏の自由にならなくなる可能性もある。

その結果、勝久氏側とききょう企画保有の株式計約28%を除く72%のうち、67%の株式の応募がなければならず、久美子氏の勝ち目は薄い。実際そこまでハードルを上げず、取締役の選任決議に必要な過半数までの株を買い集めることが現実的だろう。

また、TOBでは買付条件が公開されるため、TOBの動きが反対勢力に丸見えとなる。
大塚家具の事例では、勝久氏側がこれに抵抗し、株の買い増しやTOBを仕掛けてくる可能性もあろう。


全部取得条項付種類株式…株主総会の特別決議で、会社が強制的に取得できる株式。普通株式を全部取得条項付種類株式に変更するには株主総会での定款変更が必要。


特別決議…定款変更や解散などの重要な事項を決議する際に行われる。株主総会に出席した株主が持つ議決権が総議決権の半数以上であることを条件(定足数)として出席株主の議決権の3分の2以上が賛成すれば通る。

勝久氏側の経営陣の一掃

前述のTOBにより、少なくとも過半数の株式を確保した久美子氏としては、既に取締役会の多数派を握っていれば、取締役会で勝久氏を代表の座から引きずり降ろせばよい。
仮に、取締役会で多数派を握っていなくとも、株主総会で勝久氏側の人間を排除した取締役人事案を株主として提案し、可決すれば、反対勢力を一掃できる。
反対勢力をただ追い出すだけでは、じきに戻ってくる可能性がないわけではない。戻れると期待して不穏な動きを見せるかもしれない。それを全て挫くべきだ。
そこで、例えば取締役に定年制を設けて、 70 歳過ぎの勝久氏が再任されることを制度上不可能にすることも手段として考えられる。

定年制の導入に関しては、上場企業・非上場企業を合わせて、会長21.5%、社長35.4%と、約3社に1社が代表権のあるポジションの定年制を導入済み(産労総合研究所「2013年役員報酬の実態に関する調査」より)であり、日本でも広く導入されつつある。
取締役定年制を導入するにあたっての注意点は、創業者などの功労者を特別扱いしないこと。創業者を特別扱いしてしまうと、創業者の排除ができず、取締役定年制を導入した意味がなくなってしまうからだ。

ページトップへ戻る
  • 2019-07-31
  • [CATEGORY]: 会社支配権争い
  • [AUTHOR]:遺産相続の弁護士・税理士 永田町法律税務事務所

会社支配権争い』のその他の記事

情報過多の時代における弁護士業務
法律知識は調査済み ここ数年間、相談内容のレベルが上がっている。かつては条文を読めばすぐに解決できる内容の質問を受けることが多かったが、最近は事前にしっかりと勉強をされている方が多い。 相続についていえば、相続税法改正をきっかけとした相続ブームの影響かもしれない。 テレビや雑誌であれだけ取り上げられれば、関心を集めるのも当然だろうが、知識にアクセスしやすくなったせいもあると思う。インターネッ…
2019-11-22 [ 会社支配権争い ]
    配偶者選びは慎重に【グッチ】
    事業承継において将来の経営者の最有力候補は配偶者 グッチ家の最後の経営者マウリツィオ・グッチ氏の妻、パトリツィア氏は、元々貧困家庭の出身であったが、上昇志向が殊のほか強かったという。その美貌で、グッチ家の相続人になる見込みだったマウリツィオ氏に近づき、マウリツィオ氏はグッチ家の猛烈な反対を押し切って結婚。パトリツィア氏は夫をそそのかして操り、グッチ株の過半数を取得させて乗っ取ったものの、財産目当…
    2019-11-20 [ 会社支配権争い ]
      商標権の怖さ【グッチ】
      商標権侵害となる行為 「G U C C I 」はイタリアの G U C C I O G U C C I 社の登録商標であり、例えば権利者以外がカバンに「 G U C C I 」と付けると商標権侵害となる。仮に、グッチを離れたパオロ氏やロベルト氏が新たにカバンの製造・販売を始めようとする場合、自らのファミリーネームである「 G U C C I 」や自らの氏名を商品に表示することは可能だろうか。 G…
      2019-11-18 [ 会社支配権争い ]
        「兄弟平等」は命取り【グッチ】
        事業承継においては、兄弟平等が命取りに グッチオ氏は、親心からか兄弟平等に株を譲渡。これが悲劇の始まりだった。兄弟であっても、家を出て家庭を持てば他人意識が強くなる。孫に代替わりすれば、なおさらだ。一族経営といえども、所詮他人の集まりとなってしまう。兄弟を平等に扱いたいという親心は、父親としては当然なのかもしれない。しかし、経営者の立場から考えれば失格。もっともやってはいけない形の譲渡である。 …
        2019-11-16 [ 会社支配権争い ]
          失われたブランド【グッチ】
          第3世代の反乱 1921年にグッチオ・グッチ氏がフィレンツェにカバン工房として創業し、世界的ラグジュアリーブランドに成長したイタリアのファッションブランドであるグッチ。バッグ、サイフ、宝飾品、時計、服、靴などを幅広く扱う。グッチオ氏の三男で、2代目社長のアルド・グッチ氏は、グッチのロゴを商品に付けて「グッチ」ブランドを確立。世界展開に成功し、グッチは急速に成長した。1953年、グッチオ氏が亡くな…
          2019-11-14 [ 会社支配権争い ]
            ページトップへ戻る
            他にはないサービス。無料相談は原則、受け付けません。

            無料相談を掲げる法律事務所とは一線を画し、価格競争には参加せず、報酬に見合う良質なサービスを提供しています。他の弁護士事務所にできないミッションを達成し、紛争解決に集中してリソースを割くために、相談対象を紛争性がある相続事件に限定しています。
            「内容証明が届いた」「対立当事者に弁護士が就いた」「調停・裁判中」「調停・裁判目前」「弁護士を替えることを検討中」など、紛争性が顕在化している方は電話相談(初回15分)・メール相談(1往復のみ)・土日夜間の電話相談(初回15分)で対応します。

            相続税を納める必要があり、
            かつ遺産分割でもめている方は相談無料

            来所ビデオ通話電話・メール・土日夜間
            相続税の納税義務があり、
            かつ遺産分割でもめている事件
            無 料1時間:62,000円税別電話:初回15分
            メール:初回1往復
            土日夜間:初回15分
            無 料
            内容証明が届いた事件1時間:12,000円税別
            ※来所困難な方に限り、
            1時間30,000円税別にて
            電話相談に応じます。
            対立当事者に弁護士が就いた事件
            調停・裁判中、調停・裁判目前の事件
            弁護士を替えることを検討中の事件
            その他、紛争性がある事件
            (潜在的なものも含めて)
            非対応
            税務に関する法律相談1時間:50,000円~税別1時間:100,000円~税別
            国際法務・国際税務に関する法律相談1時間:100,000円~税別1時間:150,000円~税別
            来所ビデオ通話電話・メール・土日夜間
            内容証明が届いた事件1時間:
            12,000円(税別)
            ※来所困難な方に限り、1時間30,000円(税別)にて電話相談に応じます。
            電話:初回15分
            メール:初回1往復
            土日夜間:初回15分
            無 料
            対立当事者に弁護士が就いた事件
            調停・裁判中、調停・裁判目前の事件
            弁護士を替えることを検討中の事件
            その他、紛争性がある事件
            (潜在的なものも含めて)
            非対応
            税務に関する法律相談1時間:
            50,000円~(税別)
            国際法務・国際税務に関する法律相談1時間:
            100,000円~(税別)
            来所予約・お問い合わせ
            03-5532-1112 9:00~18:00 土日祝日除く※お電話又は予約フォームにて法律相談のご予約をお取り下さい。
            ※小さなお子様の同伴はご遠慮ください。
            商標登録を行いました「磯野家の相続」