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1.改正により納税者は増える不動産相続の弁護士

1.改正により納税者は増える不動産にかかる相続税

「現下の経済情勢等を踏まえ、『成長と富の創出の好循環』の実現、社会保障・税一体改革の着実な実施、震災からの復興の支援等のため」(財務省HPより)に税制が改正されました。
この平成25年度改正によって、相続税の対象となる相続件数は4%程度ですが、「基礎控除額」の引き下げによりその割合が6%程度にまで引き上げられるといわれています。
基礎控除額とは、相続税がかかるかかからないかのボーダーラインとなる額です。相続財産がこの基礎控除額を超えることによって相続税が発生しますので、基礎控除額が低くなると相続税の課税対象者が増えることになります。また、相続税の税率構造の見直しにより、最高税率が55%に引き上げられるなど、これまで相続税の対象であった人もさらに相続税額が上がる可能性があります。

基礎控除額が引き下げられ、相続税率も引き上げ・・・税負担が増す一方なのかというと、必ずしもそうではありません。
平成25年度改正では、小規模宅地等の特例の拡充や贈与税の税率構造の見直し、相続時精算課税制度の対象者の見直しなども行われています。緩和された制度を上手に活用すれば、相続税アップを回避または抑えることができるかもしれませんので、必ず押さえておきましょう。

相続税の改正ポイント

バブル後の地価の大幅下落等への対応、格差の固定化の防止等の観点から、相続税について、基礎控除を引き下げるとともに、最高税率を55%に引き上げる等税率構造の見直しが行われました。
(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用)

基礎控除額の引下げ

基礎控除額は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)で計算されます。
(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用)

基礎控除額の引下げ
基礎控除額の引下げ
たとえば、配偶者と子3人が相続した場合

改正前であれば基礎控除額は9000万円、改正後は5400万円となります。
相続税は「基礎控除額」を超える場合のみに発生し、超えない場合には申告も納税も必要ありません。
基礎控除額が引き下げられたことで今まで課税対象ではなかった相続事案でも相続税が発生します。
(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用)

相続税の税率の引上げ

相続税の税率区分と税率が見直され、税率区分が従来の6段階から8段階になり、現在の税率と比べて改正案では、2億円超3億円以下部分が40%から45%に、6億円超部分が50%から55%に、それぞれ税率が引上げられました。
(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用)

相続税の税率の引上げ
【改正前】【改正後】
課税財産
(基礎控除後)
税率控除額税率控除額
1000万円以下10%10%
3000万円以下15%50万円15%50万円
5000万円以下20%200万円20%200万円
1億円以下30%700万円30%700万円
2億円以下40%1700万円40%1700万円
3億円以下45%2700万円
6億円以下(3億超)
50%
4700万円50%4200万円
6億円超 55%7200万円

未成年者控除・障害者控除額の引き上げ

相続税額から一定額を差し引く税額控除のうち、未成年者控除・障害者控除については、控除額が長年にわたって据え置かれてきており、物価動向や今般の相続税の基礎控除等の見直しを踏まえ、引き上げられました。
(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用)

【未成年者控除額の引上げ】
未成年者控除額の引上げ
【障害者控除額の引上げ】
障害者控除額の引上げ

小規模宅地等についての面積の拡大

小規模宅地等の特例とは、被相続人の居住や事業のために使われていた宅地等について減税がなされる特例です。不動産は相続財産のうちの大部分を占めるケースが多く、この特例を利用できるかどうかで相続税の額が大きく変わってきます。
平成25年度税制改正によって、この特例を適用できる範囲が広がりました。具体的には、住居用の土地はこれまで限度面積240㎡まで最大80%の減額でしたが、限度面積が330㎡まで拡大しました。
加えて、限定的に併用が認められていた居住用宅地と事業用宅地について、完全併用適用が可能になりました。
(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用)

適用対象面積の拡大
適用対象面積の拡大
【併用する場合の限度面積の拡大】
併用する場合の限度面積の拡大

小規模宅地等の特例の居住用宅地の適用要件の緩和・柔軟化

被相続人が二世帯住宅に住居していた場合や老人ホームに入居していた場合などでも、適用を受けられるように居住用宅地の適用要件の緩和、柔軟化がなされました。
なお、この小規模宅地等の特例にかかる改正点は他に先行して、平成26年1月1日以後の相続・遺贈について適用されます。

二世帯住宅に居住していた場合

二世帯住宅については、内部で行き来ができるか否かにかかわらず、特例の適用が可能になりました。
内部で行き来ができないような構造の二世帯住宅でも同居しているとみなされ、土地全体が特例の適用対象になります。たとえば、上下で分断され外階段がないと行き来ができないような場合や左右を隔てる壁があり、一度外に出なければ行き来が出来ないような場合でも特例の適用対象となるのです。
ただし、建物を被相続人と相続人で分けて区分登記している場合には、被相続人の居住用部分の土地のみが特例の対象になります。適用を受けるためには建物を被相続人と相続人の共有にしておくとよいでしょう。
(平成26年1月1日以後の相続・遺贈について適用)

二世帯住宅に居住していた場合
二世帯住宅に居住していた場合
老人ホームに入所した場合

老人ホームに入所したことにより被相続人が居住しなくなった家屋の敷地については、以下の要件の下で、相続開始の直前において被相続人が居住していたものとして、小規模宅地等の特例の適用が可能なりました。

  1. 介護が必要なため入所したものであること
  2. 居住しなくなった家屋が貸付けなどの用途に供されていないこと

改正前は、以下の4つの要件全てを満たす場合に限って特例の適用がなされ、特に4の要件によってほとんどの方が適用を受けることができない状況でした。

  1. 介護を受けるための入居であること
  2. 自宅がいつでも生活が出来るように維持管理されていること
  3. 居住しなくなった家屋が貸付けなどの用途に供されていないこと
  4. 所有権又は終身利用権付の老人ホームでないこと

(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用)

老人ホームに入所した場合
老人ホームに入所した場合

贈与税の改正ポイント不動産にかかる相続税

贈与税の税率構造の見直し

贈与税の税率については、最高税率を相続税の税率と合わせる一方で、20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合と、それ以外の贈与にかかる贈与税とを区別し、子や孫等の直系卑属が贈与を受ける場合の税率構造が緩和されました。
また、贈与税の税率区分と税率が見直され、税率区分が従来の6段階から8段階になった。
(平成27年1月1日以後の贈与について適用)

贈与税の区分と税率の変更
課税財産
(基礎控除後)
【改正前】【改正後】
税 率控除額一 般特 例
税率控除額税率控除額
200万円以下10%10%10%
300万円以下15%10万円  15%10万円  15%10万円  
400万円以下20%25万円  20%25万円  
600万円以下30%65万円  30%65万円  20%30万円  
1000万円以下40%125万円  40%125万円  30%90万円  
1500万円以下(1000万円超)
50%
225万円  45%175万円  40%190万円  
3000万円以下50%250万円  45%265万円  
4500万円以下(3000万円超)
55%
400万円  50%415万円  
4500万円超 55%640万円  

相続時精算課税制度の対象者の見直し

相続時精算課税制度とは、贈与者から贈与を受けた財産について、2500万円までは贈与時の贈与税は非課税とされ、その贈与者が亡くなった場合には、その贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額を合算して、相続税として精算する制度(2500万円を超える部分については20%の税率で課税)をいいます。
改正前は、受贈者(贈与を受ける者)は20歳以上の子ども(推定相続人)に限定されていましたが、20歳以上の孫も対象とされました。また贈与者の年齢も65歳から60歳に引き下げられ、本制度を利用できる方の範囲が広がったことでより利用しやすい制度になりました。
(平成27年1月1日以後の贈与について適用)

相続時精算課税制度の適用者の拡充
相続時精算課税制度の適用者の拡充

子や孫等に対する教育資金の一括贈与

贈与者が金融機関に子や孫名義の口座を開設し、教育資金を一括して拠出した場合、子・孫ごとに1500万円まで非課税とされる制度が、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの期間限定で制定されました。
暦年課税の非課税枠の範囲で贈与した場合、年間110万円までしか贈与することができません。また、相続開始前3年間の贈与は相続税の課税対象となるため、早めに対策を始めなければなりませんでした。しかし、この制度を活用すれば、年間の非課税枠などを気にする必要はありません。また、必ず「教育資金のため」に使われるため、贈与する側としても安心して贈与することができます。
(平成25年4月1日から平成27年12月31日までの3年間の措置)

子や孫等に対する教育資金の一括贈与の仕組み
子や孫等に対する教育資金の一括贈与の仕組み

【コラム】相続税の歴史

相続税は、明治37年2月に開戦した日露戦争の膨大な戦費調達のために導入された税金です。
まず明治37年度に第一次増税として、毛織物消費税および石油消費税が新設されるとともに、地租、営業税、所得税、酒税、砂糖消費税、醤油税、登録税、取引所税、狩猟免許税、鉱区税、関税の増税がなされました。さらに戦費が必要とされたため、明治38年度に第二次非常特別税法により、再び税金が引き上げられました。この第二次増税の際に相続税が新設されたのです。非常特別税法は戦争中のみの臨時的なもののはずでしたが、結局、恒久化されることになりました。その理由としては、税制制度を作る際に参考にした諸外国で相続税が恒久的な税制とされていたからとも、日露戦争に勝利したにもかかわらずロシアから賠償金を得ることができず、明治政府の財産が困窮に陥ってしまったからともいわれています。
相続税が導入された明治38年度の相続税の税収は63万円、39年度は140万円と2年間をあわせても200万円程度にしかなりませんでした。しかし、その後は税収が伸び、昭和初期には3000万円前後、国税収入の3%前後となりました。
2003年度の改正までは、日本の相続税の最高税率は70%で、他国と比較してもかなり高いものでした。70%の税率が適用されるのは、課税対象となる財産が3億円超であるごく一部の富裕層に限られていましたが、それでも、「日本の相続税は高い」というイメージがありました。同年の改正により最高税率が50%に引き下げられ、やっと他国と同じ程度になりました。
アメリカでは2001年の減税法により、日本の相続税に当たる遺産税は2010年にかけて段階的に廃止されました。その結果、2001年当時、非課税枠67万5000ドル、最高税率55%であった遺産税(相続税)は、2010年に一旦廃止されました。しかし、2010年12月に遺産税は復活し、2012年度は控除額500万ドル、最高税率は35%となっています。復活したとはいえ控除額は2001年の約8倍なので、負担軽減の方向に向かっているといえます。
贈与税も、2001年度の非課税枠は67万5000ドルで最高税率は55%でしたが、減税法により段階的に負担が軽減されました。2010年度には、遺産税のように廃止はされませんでしたが、非課税枠が100万ドルに引き上げられ、最高税率は35%にまで引き下げられました。
相続税や贈与税を引き下げる一方で、アメリカでは世代跳躍税という税金が課されます。通常、相続財産は一世代ずつ承継されるので、祖父母の財産が孫に渡るまでには2回の相続税・贈与税がかかります。一方、祖父母から孫へ直接相続・贈与した場合、1回分の税負担が軽減されることになりますが、それでは一世代ずつ承継した場合との公平性が保てなくなってしまいます。そこで世代を飛ばして相続・贈与した場合には、遺産税や贈与税とは別に世代跳躍税が課されます。世代跳躍税の税額は、世代を飛ばして相続・贈与した価額に遺産税の最高税率を適用して計算されます。
相続税の負担を軽減するから、一世代ずつ毎回相続税・贈与税を納めて下さいというメッセージなのかもしれません。
ちなみに、日本の法律でも、相続税額の2割加算といって、被相続人の一親等の血族および配偶者に該当しない人への相続や遺贈の場合には、通常の相続税額に2割が加算されるという制度があります。たとえば、(代襲相続人ではない)孫に財産を残す場合などは2割加算の対象となります。

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