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5.不動産は所有権だけではない不動産相続の弁護士

5.不動産は所有権だけではない相続における不動産の重要性

借地権も相続財産に

土地の「所有権」とは、その文字のとおり、土地を所有する権利のことです。
通常、売買代金を支払えば、土地の購入者が所有権を有します。所有権によって、土地を売却したり贈与したり自由に処分することができます。土地を所有すると、地代などの賃料はかかりませんが、固定資産税と都市計画税を支払う義務が生じます。
『土地を持っている』というと通常土地に対して、この所有権を持っていることになります。

一定の期間を決めて土地の所有者(地主)から土地を借り、その上に自分の建物を建てるような場合、つまり建物所有を目的として土地を借りる権利を「借地権」といいます。土地を借りている人を借地人といいます。人から借りている土地の上に自分の家が建っているようなケースは珍しくありません。
借地人には、所有者のように固定資産税などを納付する義務はありませんが、最初に支払う権利金と土地を借りている間に継続して支払う地代が発生します。所有権よりはコストを安く抑え土地を使用することができますが、借地上に建物を建てる場合は、住宅ローンの利用がしにくい、建てる建物の構造が制限されるなどデメリットもあります。

所有権だけでなく、この借地権も相続財産として相続の対象になります。
たとえば、借地人(被相続人)が死亡した場合、賃貸借契約はそのまま有効とされ、相続人である配偶者や子がその権利をそのまま相続します。よく借地人の死亡を聞きつけた地主から、賃貸借契約書の名義書換や名義書換料の請求をされるということがあるようですが、相続が開始したからといって、賃貸借契約書を作り直したり、名義書換料を支払ったりする義務は全くありません。相続によって賃借権が移転する場合には、譲渡とはいえず、地主の承諾などは必要ないからです。実際、次の更新時まで被相続人の名義のままにしておいて、新しい契約書で相続人の名義を修正しても法律上問題はありません。
借地権の相続にあたっては、地主の承諾や許可を得る必要はありませんし、原則として地主は、相続人らが借地権を相続することを拒否できません。借地人の死亡を理由に立ち退きを要求されても、応じる必要は全くありません。相続人が被相続人と同居していなかった場合にも同様です。
相続した借地権が定期借地権の場合も相続することができますが、定期借地権は存続期間が定められた借地権ですので、定められた契約期間で借地関係が終了します。その後は契約の更新や延長がなく、建物買取請求なども当然には認められていません。期間が満了すると借地権は消滅し、建物を解体して土地を更地にして地主に返さなければなりません。

借地権の評価方法

借地権は土地の一部を切り取ったイメージの権利といえるでしょう。
通常の土地は相続税評価額(路線価)で評価します。
借地権は、土地の評価額の約50%から70%程度で評価されるのが一般的です。
相続税の計算をする場合、借地権は土地の評価額に対して借地権割合をかけて評価します。
借地権割合は借地事情が似ている地域ごとに定められており、30%から90%の範囲で決まっています。路線価図や評価倍率表に表示され、国税庁ホームページで確認することができます。

たとえば、2500万円の土地で借地権割合が70%の場合、借地権の評価額は、1750円(2500万円×70%)、一方、借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている土地(宅地)を貸宅地といい、貸宅地の評価額は、土地の評価額から借地権を差し引いた金額で、750万円(2500万円-1750万円)となります。

借地権の評価額
2500万円
(土地の評価)
×70%
(借地権割合)
1750万円
貸宅地の評価額
2500万円
(土地の評価)
1750万円
(借地権の評価額)
750万円

借地権の評価額相続における不動産の重要性

借地権の評価額

地主(貸している方)よりも借地人(借りている方)が持つ借地権の方が高く評価されるのは違和感がありますが、日本の借地借家法では、いったん貸した土地は簡単には返ってきません。土地を借りた方が得をする制度になっています。
明治42年に、「建物保護ニ関スル法律」が制定されました。制定以前は、地主の権利が強く、借地人の権利は守られていませんでしたが、この法律によって、建物登記をすれば借地権は第三者にも対抗できるようになりました。

続いて、大正10年に制定された「借地法」、「借家法」により借地人の権利はより確実なものになります。 借地上に建物がある限り、地主側から契約更新を拒むことが難しくなりました。借地人の権利保護に重点が置かれ、地主にとってあまりにも不利な法律であったため、新規での土地貸出しが減少し、社会問題となりました。
そこで、平成4年に制定された「借地借家法」により、「借地法」、「借家法」、「建物保護二関スル法律」は廃止となり現在に至ります。ただし、平成4年7月31日以前から土地を借りている場合、更新等の借地人に有利な事項は旧借地法が適用される事となり、実質的には、地主に返ってこない借地が現在でも存在しています。

【コラム】借地権の種類

借地権には「地上権」と「土地の賃借権」があり、それぞれ法的な扱いが異なります。
まず、地上権は「物権」であり、他人の土地であるにも拘らず、その土地を直接支配できる強い権利があります。地主の承諾なく第三者に地上権を譲渡し、賃貸することができます。また、地主には地上権を登記する義務が生じるため、登記簿に記載されます。地上権は地主にとっては不利なためにあまり設定されていないのが実情です。
土地の賃借権は、土地を間接的に利用できる「債権」であり、物権である地上権ほど強い権利ではありません。賃貸借契約を締結することで設定されます。当該契約は地主と借地人との信頼関係に基づくため、地主に承諾を得ることなく、譲渡や転貸、建物の建替えを行うことはできません。また地主には賃借権を登記する義務がないため、登記簿に記載されないのが一般的です。

賃貸借の基礎知識

賃貸借の対象となる建物には、次のようなものがあります
  • アパート
  • マンション
  • 一軒家
  • 事務所(テナント)
  • 店舗(テナント)
このような建物の賃貸借に対しては、次の法律の規定が適用されます

特別法である借地借家法が民法に優先して適用されることとなります。

賃貸借の注意点

建物を貸す際に注意すべき規程として、借地借家法26条1項、28条があります。
更新拒絶における正当事由の規定であり、貸主が契約の更新を拒絶する際には、更新ができない正当な理由を借主に対して示す必要があります。
また、当事者同士で期間を定めていた場合には、期間満了と同時に賃借物(部屋や建物など)を返還してもらうことが出来ます。(民法616条、597条1項)

期間の定めは法律上20年が上限となっており(民法604条)、さらに契約における目的物が建物であり、1年未満の期間を設定した場合は期間の定めがないということになります(借地借家法29条1項)。
契約の目的物が建物であった場合、期間の定めが設けられていたとしても、必ずしも期間満了と同時に契約終了となり、建物から退去してもらえるとは限りません。契約満了の6か月~1年前までに賃借人から更新しない旨の通知が来なければ、従来通りの条件で契約が更新されます(借地借家法26条1項)。
また、普通の借家契約では、期間満了後も借主が住み続けたい旨を主張すれば、自動的に更新が可能となってしまいます。

賃貸人から解除を申し入れることは出来るか

賃貸人からの解除の申し入れに正当事由があるとみなされたときのみ、賃貸人からの解除は認められます(借地借家法28条)。しかし、賃貸人からの申し入れが認められることは少なく、賃借人が半永久的に住み続けてしまうので、普通借家権は貸主にとって不利です。

正当事由はないが、借家から出ていってほしいという場合には

賃借人に対して高額な立退料を支払う必要が出てきます。立退料の相場が「家賃の200か月分」といわれたこともありました。「高額な立退料を支払わなければならないのなら、貸さないでおいたほうがいい」と考える賃貸人が出てくるようにもなります。つまり、借主を保護しようとする借地借家法が原因で、良質な賃貸住宅の供給が阻害されることになってしまいます。

賃貸人の保護は、なされていないのか

平成12年(2000年)3月1日より、「定期借家契約」が導入されました(借地借家法26条以下)。定期借家契約では、期間が満了した後の更新ができないとされています(借地借家法38条1項)。つまり、定期借家契約をした場合、各条文で定められている期間が経過したときに期間満了となり、同時に契約が終了します。定期借家契約であれば、期間が満了しさえすれば立退料を支払う必要もありません。この制度を利用すれば、高額な立退料を恐れる必要がなくなり、所有している物件を活用できます。

定期借家契約

定期借家契約は、借主が期間満了と共に退去しなければならないため、一般的に通常の賃料よりも多少安くなります。しかし相対的に見ると、定期的に一定額の賃料を得られ、期間満了とともに契約終了するので、貸主にとっては有利な契約といえます。

普通借家契約と定期借家契約の相違点
定期借家契約普通借家契約
契約方法【借地借家法38条1項】
(1)公正証書等の書面による契約に限る
(2)さらに、「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない
書面でも口頭でも可
更新の有無【借地借家法38条1項】
期間満了により終了し、更新はない
【借地借家法26条1項】
正当事由がない限り、更新される
建物の賃貸借期間の上限無期限2000年3月1日以前の契約は20年まで
2000年3月1日以降の契約は無制限
期間を1年未満とする
建物賃貸借契約の効力
【借地借家法38条4項】
1年未満の契約も有効
【借地借家法29条1項】
期間の定めのない賃貸借とみなされる
建物賃借料の増減に
関する特約の効力
【借地借家法38条7項】
賃借料の増減は特約の定めに従う
【借地借家法32条】
特約にかかわらず、当事者は、賃借料の増減を請求できる
借主からの
中途解約の可否
【借地借家法38条4項】
(1)床面積が200㎡未満の居住用建物で、やむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難となった借主からは、特約がなくても、中途解約ができる
(2)上記(1)以外の場合は中途解約に関する特約があればその定めに従う
中途解約に関する特約があれば、
その定めに従う
定期借家契約の手続き

定期借家契約は、口頭でも成立する普通借家契約とは違い、必ず書面を作成しなければなりません。その際書面には「この契約は定期借家契約であり、平成○年○月○日をもって終了する」「この契約は更新されない」などの条項を入れる必要があります(借地借家法38条1項)。

この書面は必ずしも公正証書にする必要はないのですが、争いになった場合に備えて、公正証書を利用する方が無難です。
公正証書は、公証人役場で作成できます。
公正証書は場合によって「債務名義」になり得ることもありますが、建物の返還を請求する強制執行手続においては「債務名義」になることはありません。建物明渡請求のように、金銭ではない特定の物を対象とする請求は、公正証書が「債務名義」として扱われることはありません。つまり、賃借人を強制的に退去させたいということがあれば、賃貸人は必ず裁判手続をとらなければなりません。
定期借家契約の場合、契約書とは別に、定期借家契約であることを記載した書面を予め交付して直接説明することが必要です(借地借家法38条2項)。説明をすることで、後々「定期借家契約だと知らなかった」と借主から言われ、トラブルになることを避けられます。
また、「書面の交付」「定期借家である説明」のどちらかが欠けた場合は、当該契約は普通借家契約とみなされるリスクもあるので、注意が必要です(借地借家法38条3項)。

定期借家契約の期間は、1年以内でもよいことになっています(借地借家法38条1項)。夏の数ヶ月のみ貸すという契約も可能(但し、常識的に明渡期限が判断できる場合には一時使用契約)ですし、長期の制限もないので20年を超える定期借家契約を結ぶことも可能です(借地借家法29条2項)。

書面作成の注意点
記載すべき事項記載すべき理由
当事者の氏名・住所誰と誰が締結した契約であるかを明らかにします。
建物の所在・地番賃借の目的となる建物を特定します。
家賃の額家賃額は最低限必要です。
建物の引渡し時期借家人がいつから使用できるのかを明らかにします。
契約の存続期間期間を定める場合には、必ず契約期間を記載します。
使用目的居住用であるか、事業用であるかなどを記載します。
家賃以外に授受される金銭がある場合には、その金銭の額、授受の時期、目的家賃以外に、敷金、権利金、礼金、更新料などを交付する場合には、額を明示します。また、権利金や礼金などは法律上性質が明らかではないので、契約書にその性質を記載して、内容を明らかにします。
契約の解除に関する定めがある場合にはその内容一定の場合には契約が解除されるという定めをした場合にはその内容(どのような場合に解除されるか)
天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め地震や洪水などの天災で建物が毀損した場合に、その修繕義務を家主と借家人のいずれが負担するのかをあらかじめ明らかにしておきます。
10転貸の承諾の有無借家人が借家を転貸(又貸し)することについて承諾する場合には、その旨を記載します。
11更新の有無定期の場合には必ず、更新がなく、期間満了により契約が終了する旨を定めます。

定期借家契約を終了させたい場合

①貸主が期間満了を理由に、契約を終了させる場合

定期借家契約は、契約の期間満了と同時に契約終了となります。
しかし、定期借家契約の契約期間が1年以上である場合、契約終了の1年から6月前までの間に、「期間満了により契約は終了する」といった旨の通知を借主にしなければならず、この通知がされなかった場合、契約終了を主張できません(借地借家法38条4項)。

期間満了による契約終了の通知は必ずしも書面でする必要はなく、口頭による通知でも可能です。しかし、口頭による通知の場合、後日トラブルになることも考えられるので、内容証明郵便などの書面による通知が望ましいでしょう。
書面で通知をする場合、郵便を出した日ではなく、相手に書面が届いた日が通知日となります。内容証明郵便には配達証明をつけ、通知日を特定しておくべきです。

定期借家の通知期間の特約について

定期借家において、契約期間満了の通知に関して借主に不利な内容の特約は無効とされます。「この契約では更新がなく、期間が満了した時点で終了となる」という内容の通知が、通知期間(契約終了の1年から6月前)に遅れてしまった場合、通知到達日から契約終了まで6月以上に設定する特約は有効ですが、6月未満に設定する特約は無効です(借地借家法38条4項)。
つまり例えば、通知日から契約終了まで8月に設定することは可能ですが、通知日から契約終了まで2月に設定することは、借主に不利なため無効となります。

②借主が期間満了前に終了を申し出る場合

期間が決められている契約においては、定期借家契約に限らず、通常その期間が満了するまでは終了することはありません。借主に転勤などで引越しの必要が出来て、契約期間の途中で契約終了をしたいと主張しても、貸主が同意する義務はなく、契約は継続し続けます。つまり、借主がその家を出て他の家に引っ越したとしても、貸主はその家の家賃を期間満了まで受け取ることができます。

多くの契約には特約があり、その特約によって借主は保護されます。定期借家契約における解約の特約は中途解約条項というもので、例えば「借主が1か月の予告期間を持つ事によって契約を解約することができる」「1か月の予告期間分の家賃を支払った場合も契約を解約することができる」などです。
テナントに貸す場合、一度空き家になると次のテナントがなかなか入らない傾向が高いので、中途解約条項は入れないことが望ましいでしょう。

居住用の建物における定期借家契約では、建物の床面積が200平方メートル未満の場合、転勤や親族の介護、療養などのやむを得ない理由によりその建物における居住が困難となったときは特約が無かった場合でも、契約を中途解約できるため、借主は解約の申し入れができ、解約の申し入れから1か月後に契約を終了させることができます(借地借家法38条5項)。
定期借家において、この規定に関して借主に不利な内容の特約は、無効とされます。借主の解約の申し入れから1か月よりも短い期間での契約終了が出来る旨の特約は可能ですが、1か月よりも長い期間で契約が終了する特約は家賃なども発生するため、借主にとって不利な特約であるといえるので、無効となります。

③定期借家契約での賃料改定

賃料の改定に関する特約があった場合、普通の借家契約(自動的に更新)では、特約にとらわれず、貸主及び借主双方が自由に賃料の増減を請求できます(借地借家法32条1項)。ただし、増減の時期について「一定の期間は賃料増額しない」などの特約がある場合は、その特約に従う必要があります。
これに対し、定期借家契約では、貸主及び借主はその特約に従う必要があります(借地借家法38条7項)。

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民法(抜粋)

民法597条1項

借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。

~601条(賃貸借)

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

602条(短期賃貸借)

処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。

  1. 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
  2. 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
  3. 建物の賃貸借 三年
  4. 動産の賃貸借 六箇月民法602条(短期賃貸借)
603条(短期賃貸借の更新)

前条に定める期間は、更新することができる。ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。

604条(賃貸借の存続期間)
  1. 1 賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
  2. 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。
605条(不動産賃貸借の対抗力)

不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。

606条(賃貸物の修繕等)
  1. 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
  2. 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
607条(賃借人の意思に反する保存行為)

賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

608条(賃借人による費用の償還請求)
  1. 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
  2. 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
609条(減収による賃料の減額請求)

収益を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。ただし、宅地の賃貸借については、この限りでない。

610条(減収による解除)

前条の場合において、同条の賃借人は、不可抗力によって引き続き二年以上賃料より少ない収益を得たときは、契約の解除をすることができる。

611条(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)
  1. 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
  2. 前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
  1. 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
  2. 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
613条(転貸の効果)
  1. 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
  2. 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
614条(賃料の支払時期)

賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。

615条(賃借人の通知義務)

賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。

616条(使用貸借の規定の準用)

第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。

617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)

1 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。

  • 一  土地の賃貸借 一年
  • 二  建物の賃貸借 三箇月
  • 三  動産及び貸席の賃貸借 一日

2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

618条(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)

当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

619条(賃貸借の更新の推定等)
  1. 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
  2. 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、敷金については、この限りでない。
620条(賃貸借の解除の効力)

賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において、当事者の一方に過失があったときは、その者に対する損害賠償の請求を妨げない。

621条(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)

第六百条の規定は、賃貸借について準用する。

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借地借家法(抜粋)

第26条(建物賃貸借契約の更新等)
  1. 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
  2. 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
  3. 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
第27条(解約による建物賃貸借の終了)
  1. 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
  2. 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

第29条(建物賃貸借の期間)
  1. 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
  2. 民法第六百四条 の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。
第30条(強行規定)

この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

第31条(建物賃貸借の対抗力等)
  1. 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
  2. 民法第五百六十六条第一項 及び第三項 の規定は、前項の規定により効力を有する賃貸借の目的である建物が売買の目的物である場合に準用する。
  3. 民法第五百三十三条 の規定は、前項の場合に準用する。
第32条(借賃増減請求権)
  1. 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
  2. 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
  3. 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
第33条(造作買取請求権)
  1. 建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
  2. 前項の規定は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了する場合における建物の転借人と賃貸人との間について準用する。
第34条(建物賃貸借終了の場合における転借人の保護)
  1. 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。
  2. 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。
第35条(借地上の建物の賃借人の保護)
  1. 借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
  2. 前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。
第36条(居住用建物の賃貸借の承継)
  1. 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
  2. 前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。
第37条(強行規定)

第三十一条、第三十四条及び第三十五条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。

第38条(定期建物賃貸借)
  1. 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
  2. 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
  3. 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
  4. 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
  5. 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
  6. 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
  7. 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
第39条(取壊し予定の建物の賃貸借)
  1. 法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第三十条の規定にかかわらず、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。
  2. 前項の特約は、同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。
第40条(一時使用目的の建物の賃貸借)

この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。

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