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6.不動産の流動性不動産相続の弁護士

6.不動産の流動性相続における不動産の重要性

流動性の高い資産

相続において流動性の高い資産を持つことは重要なポイントです。
流動性が高い資産とは、つまりは現金にしやすい財産。
相続財産のほとんどが不動産や中小企業の株式など流動性の低い財産の場合には、いざ現金が必要になった場合に困ります。まず直面するのは相続税の申告納付のときです。現金が用意できないために想定外の売却や不動産による物納を考えなければならない場合もあります。
流動性の高い資産を持つことは、遺産分割においても大いに役立ちします。現物分割、代償分割、換価分割、いずれの分割方法を選択したとしても、分割手続きがスムーズになります。


自身の資産を把握する

相続税及び遺産分割対策を考えるにあたり、まず重要なことは、自分がどのような財産を持っているか把握することです。相続財産を整理し、今後の財産構成を検討しましょう。

現金

現金は流動資産そのものです。
紛失や盗難の危険性が高い現金を自宅で保管している人はどのくらいいるのでしょうか。2012年末、家庭や企業、金融機関の金庫などで年を越すお札は過去最高の86兆円を記録したと日銀が発表しています。一般的に冬のボーナス支給や正月休暇を控えた年末は、現金需要が高まりやすいとは言いますが、一説には日本人のタンス預金が増えていることが背景にあると言われています。タンス預金というのは金融機関に預金せずに、自宅の金庫などにお金をしまっておくこと。現在銀行の普通預金の平均的な金利は0.02%。つまり、500万円を預金しても1年で付く利息は1000円。この超低金利時代では現金を銀行などに預けずに家で保管する傾向があります。また東日本大震災の影響からか、緊急時時に使用できるよう手元に資金を確保したいと考えている人も増えていると言われます。
現金は意外に自宅に眠っているものなのです。

預金債権

いつでも引き出しができる預金も流動性が高い資産といえるでしょう。
ただし、被相続人の死亡が金融機関に認知され、一度口座が凍結されてしまうと相続人であっても簡単に引き出しができなくなります。いつでも引出しができるのは預金者本人が生きているからこそ。
本来預金債権は分割債権ですから、相続開始とともに法律上当然に分割され、遺産分割協議を経ることなく、各相続人が相続分に応じる金額を各々請求できるとされています。しかし、金融機関がすんなりと払い戻しに応じてくれればいいのですが、相続人間の争いに巻き込まれたくない金融機関は、相続人全員の同意を確認できない限り、払戻しに応じてくれない場合がほとんどです。

株式

上場している株式であれば、証券取引所が開いている時間にいつでも換金することができますから、流動性は高いといえるでしょう。ただし、上場している株式すべてが流動性に優れているわけではなく、株式の銘柄によって流動性が大きく異なります。流動性が低く買い手がいない株式の売却は難しく、売買時期が限定されたり、希望する数量が揃うまで現金化ができなかったりします。

不動産

不動産を売ろうとすると、ある程度の期間がかかります。不動産は時期が悪かったり、ある一定以上の額の物件になったりすると売れにくいもの。今日明日中にすぐにお金に換えることは非常に困難で、不動産は流動性が低い資産といえます。
不動産は通常相対で売買取引が成立しません。賃貸人が賃借人に対して売却するか、近所の知り合いに売却するというような限定的な場面でなければ直接取引は成立しません。仲介業者を通しての取引が一般的ですが、頼んでから売買契約が成立するまでの期間は値段と立地によって異なりますが、平均して6カ月程度はかかります。新しい住まいの購入を決めたが、前の住まいがなかなか売れず、購入資金がないということも、もう少し時間をかければ高く売れたのに、売り急いだために金額的に妥協しなければならなかったということもあります。

流動性が高い不動産とは

不動産は一般的に流動性が低い資産ですが、相続税対策としては一番節税効果が高いものです。
また平成25年度の税制改正によって節税効果が大きく期待できる不動産は注目されています。
たとえば、小規模宅地等の特例は、相続税対策を考える上で必ず利用すべき制度です。小規模宅地等の特例とは、「相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額できる特例」です。簡単にいうと、一定の条件を満たすと、宅地(土地)の評価額を最大80%も減額できる、というもの。たとえば、5000万円と評価される宅地は80%減で1000万円となるので、この特例によって、相続税の額が低くなったり、場合によっては相続税がかからないこともあります。
相続税対策において小規模宅地等の特例を適用できる不動産か否かが大きな鍵になります。

この不動産の節税メリットを享受しつつ、流動性を確保するにはどうすればいいのでしょうか。
不動産は流動性の低い資産と説明しましたが、不動産の中でも流動性には大きな差があります。
駅から遠いマンションと駅から近いマンションでは、どちらの方が人気でしょうか。築30年のマンションと新築マンションでは?地方のマンションと都心のマンションでは?多くの人が駅近で、新しく、都心のマンションを選ぶでしょう。このように、同じ不動産であっても、人気のある不動産とそうでない不動産があります。

人気のある不動産については、ぜひ買いたいという人がたくさんいますので、すぐに買い手を見つけることができますし、その際の価格もおのずと高くなります。一方、人気のない不動産はなかなか買い手が見つかりません。予想した値段で売れないからといって売却を渋っていると、時間だけが経過し、建物の場合は築年もどんどん古くなってきます。大規模な再開発などが予定されている土地の場合は価格が上昇する可能性もありますが・・・。迷っているうちにますます売りにくい不動産となってしまいます。
不動産を持つのであれば、比較的流動性の高い不動産を選ぶことが重要になります。
節税効果や換価のしやすさから不動産を分類すると、次のようになります。

不動産の流動性と節税効果
不動産の流動性と節税効果

まず、の「都心の330㎡超の自宅の土地」との「330㎡超の別荘地」を比べてみます。
双方が同じ広さだとしても、自宅として利用されていた土地(宅地)330㎡までの部分は小規模宅地等の特例が適用され、最大80%減額されます。一方、別荘地は、宅地ではないので小規模宅地等の特例は適用されません。

次に、の「都心の330㎡超の自宅の土地」との「都心の330㎡以内の自宅の土地」とを比べてみましょう。
どちらも自宅の土地(宅地)なので小規模宅地等の特例の利用が可能ですが、330㎡超えの土地の場合は、制限面積によって一部特例が受けられません。自宅であれば330㎡もあれば十分でしょうし、加えて330㎡以上の不動産となるとそれなりの値段になりますので、買い手を見つけるのもなかなか難しく、逆に人気が下がってしまうこともあります。

最後に、の「都心収益不動産」との「地方収益不動産」を比べてみます。
マンションや貸家といった収益不動産は、相続税の課税において不動産の評価額を低くすることができます。節税対策のために収益不動産を建てる人がいますが、収益不動産であればなんでもよい訳ではありません。節税効果を生むには、収益不動産を建て、かつ他人に貸していることが重要なのです。入居者がいなければ減税はできないので、どれだけ有益な収益不動産を持っているかが重要です。そのことを念頭において、都心収益不動産と地方収益不動産を比較してみるとどうでしょうか。人口の多少や利便性等を考えてみても、地方に比べて都心の収益不動産の方が入居者は多いという結論に至るでしょう。大規模な収益不動産を持っているけれども空室率が高いという場合には、規模を小さくしてでも、入居者が多そうな都心収益不動産に買い換えを検討してみるのも良いかもしれません。

結論として、の不動産は、節税効果も期待できますし、いざ売りたいとなったときにも割と早期に相当な値段で売却することができる有益な不動産であるといえます。一方、の不動産は、持っていても節税効果は期待できず、売ろうと思ってもなかなか買い手が見つからず、売却できても評価額に比べてかなり低い値段となってしまう、あまり利益のない不動産ということになります。
もしも、自分の財産を見直してみて、に当てはまる不動産がたくさんある場合には、売却やの不動産への買い替えを検討してみましょう。

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