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遺言による相続[POSTED]:2017-10-24
1 遺言を残す意味遺言による相続
遺言をするメリットは、自分の思い通りに財産の処分ができることです。遺産分割協議の結果や法定相続分よりも、自分の意思を優先させたいと思った場合に、遺言をしておくメリットがあります。また相続人間の争いに対する抑止力にもなります。
たとえば、相続人でない内縁の妻に財産を残したいときは、生前贈与をするほかに、遺言状で内縁の妻に遺贈する遺言を残す方法があります。もっとも遺留分を侵害した場合には相続人から減殺請求を受けます。また同じく相続人でない息子の嫁に面倒を見てもらった場合は、子の配偶者は相続人ではないので、相続人であることが前提である寄与分も認められません。この場合は生前贈与以外に遺言で贈与する方法があります。
もっとも相続人の遺留分を侵害すると遺留分減殺請求を受けます。さらに相続財産の大部分が居住している土地家屋である場合は、住居だけは特定の相続人に残すなど特定の相続人に特定の財産を残す場合にも、遺言が活躍します。他の相続人の遺留分を確保しつつ、それ以外の財産は特定の相続人に相続させるという遺言ができます。もっとも全財産を特定の相続人に遺贈しても、遺留分減殺請求に対してはその遺留分の価格を支払えば問題はありません。他の相続人が遺留分減殺請求をしない場合、遺留分を無視して全財産を特定の相続人に残す遺言をしても問題ありません。妻と兄弟姉妹のみが相続する場合は、兄弟姉妹に遺留分はないので妻に全財産を相続させる遺言をしておく方法もあります。
親不孝息子に対して相続分をゼロにする遺言を書いても、遺留分減殺請求をされると、遺留分は取り返されます。まったく相続分を皆無にしようとする場合、廃除によって相続人でなくしてしまう方法があります。廃除は生前にもできますが、遺言ですることもできます。遺言で廃除をする場合に実際に廃除手続は遺言執行人がします。遺言書には廃除の意思と廃除の理由を書き、廃除が認められなかった場合と認められた場合の両方の遺産分割方法を書きます。
類型的に相続人間で争いになることが多いケースでは、遺言を残すべきです。次のようなケースなどは争いになる可能性が類型的に高いといわれます。
兄弟姉妹の仲が悪い場合
特に被相続人と一緒に暮らしていた長男(もしくはその嫁)と他の兄弟姉妹との仲が悪いときは相続争いが起こることが多いようです。
経済的に苦しい相続人がいる場合
経済的に苦しい相続人は、相続において多くの相続分を要求することが多いようです。
先妻、後妻ともに子がいる場合
先妻は相続人になりませんが、先妻との間にできた子は当然に相続人になります。後妻の子との仲がよくないのが普通ですので、争いになることは少なくありません。
内縁の妻やその子がいるとき
内縁の妻が相続人になることはありませんが、その間の子を認知している場合は、嫡出子の半分の相続分がありますので、法定相続分を要求してくる可能性があります。
自宅等以外に分ける財産がない場合
財産が自宅以外にない場合は、自宅を売却してその代金を分けるしかないということも考えられます。残された配偶者が住む家に困るということにもなりかねません。
自営業者や農家である場合
財産が分散してしますと家業の継続ができなくなります。
面倒を見てくれた嫁がいるとき
息子の嫁は相続人にはなれませんので、財産を相続することはできません。しかし年寄りの面倒をみるのは実の子よりも嫁であるケースが少なくありませんので、こんなときは遺言で嫁に財産を残してあげましょう。
2 遺言の基本知識遺言による相続
遺言は15歳以上であれば原則として誰でもできます。成年被後見人は、事理を弁識する能力を一時回復した後に、医師2人以上の立会いの下で遺言することが可能です。被補佐人や被補助人が遺言をするのに、補佐人や補助人の同意は要りません。ただし、被補佐人や被補助人が遺言をした当時に遺言能力を欠いていれば、その遺言は無効となります。
遺言書はあくまでも書面にして書くことが求められています。遺言者が遺言内容を話した状況をテープレコーダーに録音し、ビデオに撮影したものは編集による偽造・変更の可能性もあり、法律上、遺言としては取り扱われません。
遺言を書くときに、相続分の指定だけを書くと、個々の相続財産の具体的配分に関して紛争が起きる可能性があります。相続財産を指定しておけば、相続人間の紛争を未然に防ぐことができます。遺留分を侵害しないことも紛争を避けるためには重要です。不動産の相続に関しては物件を指定しておくと、不動産登記の時も便利です。行方不明や音信不通の相続人がいる場合に、遺産を分配しない旨の遺言をすると、失踪宣告などの手続きの手間が省けます。遺留分があっても、本人から連絡が来なければ問題がありません。
遺言の内容の変更は一部撤回とみることができます。遺言の取消(撤回)には5つのパターンがあります。
1つ目は、遺言の方式による取消で、後の遺言で前の遺言を撤回する方式です。どの方式の遺言でも作成日付が厳格な要件とされるのは、この先後関係が重要だからです。ここでの取消という用語は、「撤回」の意味で、遺言者が死亡して初めて効力が発生する遺言を発効前に撤回することです。取り消しをする遺言の方式には制限がなく、取り消すべき前の遺言の方式を問わず、すべての方式を利用できます。
2つ目は、前の遺言と後の遺言とが抵触するときは、抵触する部分については「取り消す」と明文で記載しなくても、後の遺言で前の遺言を取り消したことになります。
3つ目は、遺言の内容と遺言後の生前処分その他の法律行為が抵触する場合は、その遺言は撤回したものとみなされます。
4つ目は、遺言者自らの意思で遺言書の全部または一部を、破り捨てたり焼き捨てたり内容が判別できない程度にまで墨で塗りつぶすなどして破棄したときは、破棄された部分は撤回されたものとみなされます。
5つ目は、遺言者自らが遺言の目的物を破棄したときは、その部分が撤回されたとみなされます。
遺言の取り消しに当たらなくても、相続開始時に相続財産に属さないものを対象とする遺贈には効力がありません。ただし遺産に属さない権利でも、遺贈の目的としていることが認められる場合には遺贈は有効で、相続人はそれを入手して遺贈を実行する必要があります。金銭の遺贈は、現金がなくても遺贈の効力ありと解される場合があります。
遺言に何を書くのか?遺言による相続
遺言には何を書いても構いませんが、特定の事項以外は法的拘束力を持ちません。特定の事項は、認知、財産の処分、未成年後見人および後見監督人の指定、相続人の廃除または廃除の取り消し、相続分の指定または指定の委託、遺産分割の指定または指定の委託、遺産分割の禁止、相続人相互の担保責任の指定、遺言執行者の指定または指定の委託、遺贈減殺方法の指定に限定されます。
ちなみに認知を遺言でしても、事実に反する認知は無効です。遺言によって無効な認知が行われた場合は、家庭裁判所に認知無効の調停を申し立てます。また訴訟で争うことにもなりかねません。認知無効が認められれば、判決後1か月以内に戸籍訂正の申立てを行います。
身分に関する事項
- (1)認知
- (2)未成年後見人の指定および後見監督人の指定
相続に関する事項
- (3)相続人の廃除および廃除の取り消し
- (4)相続分の指定または指定の委託
- (5)特別受益の持ち戻しの免除
- (6)遺産分割方法の指定または指定の委託
- (7)遺産分割の禁止
- (8)相続人相互の担保責任の指定
- (9)遺贈減殺方法の指定
財産処分に関する事項
- (10)遺贈
- (11)寄付行為
- (12)信託の設定
その他
- (13)遺言執行者の指定または指定の委託
- (14)祭祀承継者の指定
以上の遺言事項以外の事項を書いた場合には法律上の拘束力はありません。
遺言でしか できないこと | |
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生前でも できること |
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ちなみに遺言では、「遺贈する」よりも「相続させる」旨の遺言のほうが有利です。理由は登記手続きに際して遺贈の場合と異なり、相続の場合は登記手続きが単独ででき、遺産が農地の場合にも所有権移転に知事の許可が不要だからです。
特定の遺産について「相続させる」遺言があれば遺言者が死亡した時点で相続人は遺産分割協議を要せずに遺産を取得できます。ただし特定の遺産ではなく、抽象的な割合について「相続させる」旨の遺言があった場合には、遺産分割協議が必要になります。また、不動産の所有権移転登記手続きをする際に「遺贈する」遺言では他の相続人と共同申請することになり、法定相続人全員の印鑑証明書などが必要になります。これに対し「相続させる」遺言書では、不動産を相続する人が単独で申請することができ、他の法定相続人の印鑑証明などが不要です。遺言執行者がいる場合でも、不動産を相続する人が単独で申請できます。農地の相続では、「遺贈する」遺言であれば所有権移転登記に知事などの許可が必要であるのに対し、「相続させる」遺言であれば不要です。
もっとも「相続させる」旨の遺言ができるのは、あくまで法定相続人に対してのみです。なぜなら遺贈は相手が相続人である必要性がないのに対して、遺産分割方法の指定・相続分の指定は共同相続人間での遺産分割を前提としているので、相手は相続人に限られます。
4 遺言の種類遺言による相続
(1)自筆証書遺言
自筆証書遺言はいつでもどこでも簡単に作成でき、遺言したことを秘密にしておけます。費用もほとんどかかりません。もっとも遺言を紛失するリスクもあり、発見されないことがあります。第三者によって変造、偽造される可能性もあります。検認の手続も必要です。検認手続が完了するまで1カ月ほどかかるため、葬儀に関する希望などを記載しても要望どおりにならないといったデメリットがあります。要件を満たさないものは無効になるリスクもあります。遺言書の一部が無効でも、他の部分は有効です。遺言書としては無効でも贈与契約書として有効とみる余地もあります。
自筆証書遺言は遺言者が自分の手で作成して署名押印するものです。署名は戸籍上の氏名に限らず、遺言者が通常使用している雅号や芸名でも遺言者との同一性が認められれば有効です。民法は自筆証書遺言に関しては遺言書の全文を遺言者が自ら自筆で書くことを要求しており、日付や署名のすべてが遺言者の自筆である必要があります。遺言は遺言者の死後に発効するもので、遺言者が本当に作成した遺言書か否かについて争いが生じても、遺言者本人に確認する方法がなく、間違いなく遺言者本人が書いたことを明確にするために自筆が厳格に要求されています。ワープロやパソコンを使っての遺言は効力がありません。フロッピーディスクなどに遺言の内容が入った状態はもちろんのこと、打ち出してあっても無効です。遺言本文が手書きでも、不動産や預貯金を記載した財産目録がワープロやパソコンで作成された場合は、遺言書全文が自筆ではないので無効です。これは遺言者が病気やけがなどで字が書けない状態でも自筆の要求は変わりません。
字が書けない場合は、遺言者が遺言書の全文を自筆する必要のない公正証書遺言を作成すればよいのです。公正証書遺言では公証人が作成した遺言書に署名をするだけで足ります。けがや病気で署名もできない場合には、その旨を公証人に説明すれば、署名しなくても公正証書遺言は作成できます。口がきけない場合でも、通訳人の通訳を介して公正証書遺言を作成することができます。自筆証書遺言の場合、遺言者が問題ないと思っていても、記載が不十分で遺言が無効になってしまう場合があります。遺言者の死後、家庭裁判所で検認手続きも必要です。公正証書遺言は、遺言者の意思が公証人によって確認されて作成されているので、ワープロでの作成が認められています。秘密証書遺言についても、署名は自筆しなければなりませんが、内容をワープロで作成することは可能です。
以下に具体的な書き方について説明します。
遺言書はどのような紙を使用してもよく、広告の紙の裏に書いても有効ですが、下書きの原稿であると判断される恐れがあるので避けるべきです。10年ほどでインクが消えてしまうコピー用紙よりも和紙などが確実といわれます。筆記具はボールペン、サインペン、万年筆、筆など何でも構いませんが、鉛筆は変造される危険が高いので避けるべきです。
数字の書き方は、アラビア数字でも漢数字でもどちらでもよいのですが、不動産の表示や金額の数字については、変造を避けるために多角漢数字を使用したほうがよいでしょう。
書き方は縦書き横書きのどちらでも問題ありません。
「遺言書」としての表題がなくても遺言書として有効です。
だれに何を相続させるか、遺贈するかはしっかりと特定する必要があります。表現は具体的にする必要があります。銀行口座は銀行名、支店名を明確にし、不動産は円滑な登記手続きのために住居表示上の住所ではなく不動産登記簿謄本の表示に従って記載すべきです。「あの家」「駅前の土地」などの表記は避けてください。「土地の半分を次男○○に相続させる。」では、土地の半分がどの部分かは特定できず相続人間で紛争が生じる可能性があります。争いを避けて土地を具体的に分割して相続させたい場合は、生前のうちに分筆登記をするべきです。
「左記建物を長女○○に使わせる。」という表現に関しては、「使わせる」という表現では、意味が明確になりません。所有権を譲渡するのか使用貸借の権利を与えるのかが明確にならないからです。「管理させる」「まかせる」などの表現も不明確ですので避けるべきです。所有権を譲渡するのであれば、「相続させる」「遺贈する」のどちらかの表現を使用するべきです。全財産を渡すという遺言をした場合は、預金債権を引き出す際に金融機関から相続人全員の署名・捺印を求められます。
修正・変更がある場合は、修正・変更する箇所に押印し、上部余白に修正・変更した箇所と内容を付記して署名します。何行目のどの字をどのように変更したのかを遺言書の余白に書き、変更を指示した箇所にその都度署名します。書き間違い部分を訂正し、訂正部分に印を押します。この方式を履践していない場合は、変更や修正がないものと扱われます。変造を防ぐために極めて厳格な方式に従って訂正する必要があるのです。
遺言の最後には日付を記載して署名をします。年月日のない遺言は無効です。日付は具体的な日時で記載する必要があり、○月吉日という書き方では遺言書が無効となります。署名に関して代筆は無効で、署名とともに押印も必要です。遺言者が他人に手を支えられて書いた場合や、外国語や略字で書いた場合も遺言者の意思と認められる限りは有効です。「遺言者 甲野太郎 遺言者 甲野花子」などと2人以上のものが共同で1通の遺言書に書いた遺言書は無効です。夫婦でも別々に書く必要があります。印鑑は三文判でも構いません。
遺言書が複数枚に渡るときはホチキスかのりでとじ、契印を押します。
保管の形態は特に決まっておらず封筒に入れる必要もありませんが、書き終えたら遺言書を封筒に入れ、のりづけし、封筒の表に遺言書と書くのが一般的です。保管場所としては、銀行の貸金庫や弁護士などに預けるという方法があります。
(2)公正証書遺言
公正証書遺言はまず、本人が原案の文章を作ります。内容はメモの形式でもよく、原案を公証役場とファックスでやり取りできます。原案が固まったら公証役場に出向いて公証人が書いた文面を確認します。後日、証人2人以上の立会いのもと、公証人が口授する公正証書遺言の内容を最終確認し、公証人、証人、本人の全員が署名・押印します。遺言者が署名できないときは、公証人がその旨を付記して署名に代えることもできます。公正証書遺言は遺言者が自筆する必要がなく、自筆証書遺言や秘密証書遺言と異なり、まったく字が書けない人でも遺言書を作成することができます。口がきけない人でも、公証人および証人の前で遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述するか自筆することにより口授に変えることができます。さらに筆記内容の確認方法が閲覧でもよく、通訳人の通訳によって遺言者に伝えることで読み聞かせに変えることもできますので、耳が聞こえない人でも公正証書遺言を利用できます。なお公正証書遺言は、公証役場で作成するのが原則ですが、病気などの場合、日当を払えば公証人が家や病院に出張してくれます。
証書のコピーは遺言者本人に手渡され、原本は公証人役場に5年間保存されます。遺言者の存命中は本人しか見ることはできず、死後も利害関係人しか見ることができません。公正証書遺言は、専門家である公証人が作成してくれ、原本が公証役場に保管されるので確実です。作成後変造される危険もほとんどありません。他の遺言では相続の開始後に遅滞なく家庭裁判所に検印を請求する必要がありますが、公正証書遺言は検認の必要がありません。証人2人の立会いの下、公証人によって遺言者の意思を確認しながら作成されることから、遺言の効力が問題となる可能性も少ないからです。家庭裁判所の検認が不要なので、相続発生後にすぐに相続手続きに入ることができます。もっとも公証人手数料がかかり、遺言書の作成と内容が第三者に知られてしまいます。公正証書は一番確実性が高いといわれますが、遺言者が死亡しても遺言書をもってきてくれるわけではありません。公正証書遺言があることを貸金庫などに保管する書類に書いておくとよいでしょう。
公証人役場では平成元年以降、公正証書遺言を登録するシステムを採用しており、当該遺言に利害関係を有する者の求めにより検索に応じています。
(3)秘密証書遺言
秘密証書遺言は遺言の内容を遺言者以外に知られることなく作成できます。自筆証書遺言は、全文、日付および氏名を自筆して押印するものであることから、遺言の内容はもちろん、遺言を作ったこと自体も秘密にすることができます。公正証書遺言は、2人以上の証人などに遺言の内容を知られてしまいます。秘密証書遺言は、封印した遺言を公証人と証人2人以上の前に提出して公証してもらうので、遺言の存在を秘密にすることはできませんが、遺言の内容を秘密にすることができます。遺言の内容を秘密にする遺言の方式としては、自筆証書遺言と秘密証書遺言の2つがありますが、遺言の存在自体を秘密にしなくてもよいのであれば、遺言の存在を公証してもらう秘密証書遺言の作成による方が望ましいです。
秘密証書遺言は自筆でも構いませんし、第三者に代筆してもらってもワープロを使っても構いません。
自筆による署名・押印は必要ですが日付は不要です。修正・変更は自筆証書遺言と同様の方法です。
証書は封筒に入れて証書と同じ印章で封印します。封入と封印は遺言者が自分でする必要があります。封印ができたら公証役場に行き、公証人1人と証人2人以上の前に封書を提出して遺言者であることを申術します。第三者が書いた場合は、筆者の住所・氏名も述べます。公証人が証書の提出された日付と遺言者の申述を封書に記載した後、遺言者、公証人、証人がともに署名押印します。口がきけない遺言者は、公証人および証人の前でその証書が自分の遺言である旨や筆者の氏名および住所を封筒に自筆して申述に代え、公証人がこの方式を踏んだ旨を封紙に記載して、申述の記載に代えることで秘密証書遺言を作成することができます。公正証書遺言と異なり、公証人は秘密証書遺言を保管しません。自分で保管する必要があります。
秘密証書遺言は遺言書の内容の秘密を守れることと代筆やワープロも認められるという利点がある反面、作成に手間と費用がかかり、検認手続も必要である不利益があります。
形式に不備があれば秘密証書遺言として無効ですが、自筆証書遺言としての要件を備えていれば自筆証書遺言として有効です。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
利用できない人 | 字の書けない人 | 原則として誰でも利用可能 ※意思能力は必要 |
字の書けない人 ※自己の遺言である旨、住所、氏名がかければよい |
作成 | 本人 |
公証人( |
誰でも可 ※本人が望ましい |
作成場所 | どこでもOK | (原則)公証役場 | どこでもOK ※封印後の手続は公証役場 |
証人 | 不要 | 証人2人以上 | 公証人1人 証人2人以上 |
ワープロ等 | 一切不可 | 可 ※署名は自筆 | 可※署名は自筆 |
日付 | 要 | 要 | 要 |
署名・押印 | 本人 | 本人 証人・公証人 |
本人 公証人・証人(封紙) |
印鑑 | 実印・認印・拇印 ※いずれも可 |
実印 |
本人は遺言書に押印した印鑑 証人は認印でも可 |
封印 | 不要 ※封入しておく方が安全 |
不要 | 要 |
保管 | 本人 | 原本 公証役場 正本 本人 |
本人 ※作成した事実を公証役場で記録される |
費用 | 不要 ※後で検認費用が必要 |
要(作成手数料) |
要(公証人の手数料) |
検認手続 | 必要 | 不要 | 必要 |
遺言の存在の 秘密 |
確保できる | 確保できない | 確保できない |
遺言の内容の 秘密 |
確保できる | 確保できない ※弁護士が証人になる場合は守秘義務により実現可 |
確保できる |
本人の遺言か どうかの 争いの可能性 |
高い | 低い | 低い |
効力の争いの 可能性 |
高い | 低い | 高い |
変造等の恐れ | 多い | 少ない | 少ない |
滅失・隠匿の 恐れ |
多い | 少ない | 多い |
5 遺言書の保管(自筆証書遺言と秘密証書遺言で問題になります。)遺言による相続
遺言は内容によって、得をする推定相続人や損をする推定相続人が出てきます。相続人以外の者に遺贈をする内容になっていることもあり、遺言の存在自体や遺言の内容は非常にデリケートなものです。そこで、遺言は遺言者の生前に他人の間に触れないところに保管をする必要があります。
遺言書の保管は、発見されやすいところに置くと見つけられて偽造・変造される危険があります。反面、あまりにも発見されにくいところに保管すると、逆に紛失し、遺言者が死亡した時に誰にも発見されずに遺言書の存在が闇に葬られることにもなります。
結論として遺言の保管方法は、生前は発見されづらく、死後は確実に発見され、かつ、変造が行われないようにすべきです。
保管場所や保管方法の問題は、遺言書の存在を人に明かすかどうかにも関わる問題です。遺言書の存在を他人に言わないでおく場合は、死後に直ちに見つかる場所に保管する必要があります。たとえば銀行の貸金庫はよい保管場所ではありますが、貸金庫の開扉は相続人だけで行いますので、相続人以外の者への遺贈をする遺言書の場合には注意が必要です。
遺言書を確実に見つけてもらうには、遺言書の存在を信頼のおける人に保管場所とともに伝えておき、死後に相続人や遺贈をした人などに報告するように依頼します。弁護士に保管を依頼した上、遺言書でその弁護士を遺言執行者に指定しておくのが、1つの確実な方法です。
6 遺言書を発見したら遺言による相続
検認手続
遺言者が死亡したことを知ったときは、遺言書を預かっている人と遺言書を発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所にその遺言書を添えて検認の申し立てをします。検認手続は相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防ぐ手続です。遺言の有効無効を判断するものではありません。(遺言者がかいたものではないとか、自由な意志で書いたものではない、遺言能力に欠けていたなどして無効を主張する場合には別に訴訟手続きを擦る必要があります。)
遺言書の内容を実現するには検認手続は不可欠で、検認手続を経ていない自筆証書遺言に基づいて不動産の登記をしようとしても、登記所では受け付けてもらえません。検認手続には1、2カ月かかります。法定相続人全員の戸籍謄本、住民票などを用意して、全員が家庭裁判所に招集されます。検認手続を怠ると、5万円以下の過料に処せられます。遺言書を発見した時に隠したり捨てたり、変造したりすると、法定相続人の場合は、相続人の地位を失うこともあります。検認を終えた遺言書は、申し立てをすればその旨の証明がなされます。公正証書遺言の場合は検認手続が不要です。
遺言書が封印されていてもいなくても検認手続は必要です。遺言書に封がされているときは勝手に開封することが禁じられており、検認の手続の中で開封されます。家庭裁判所は、相続人や利害関係者を立ち会わせたうえで、遺言書を開封し、遺言の方式に関する事実を調査して調書を作成します。誤って開封してしまった場合でも、遺言の効力には影響がありませんが、検認の申し立てをしなかったり、故意に遺言書を開封したりしたときは、5万円以下の過料に処せられる場合があります。
複数の遺言書
遺言書が数通見つかった場合は、遺言者の死亡した時点に一番近い時期に作成された遺言のみが効力を持ちます。自筆証書・公正証書・秘密証書などの方式の違いによる効力の優劣はありません。作成の時期だけを比べて、新しい遺言が優先します。同じ事柄について前後2通の遺言で異なる処分をしている場合には、後の遺言で前の遺言が変更されたとみなされます。異なる事柄についての内容であるならば、作成時期の異なる数通の遺言であっても、どの遺言も効力があります。
遺言と遺産分割協議
遺産分割協議で遺産分割をし、相続手続きを済ませた後に遺言書が出てきたときは、原則として遺言が優先します。もっとも相続人全員の合意で遺言に反する遺産分割協議をすることやすでにした遺産分割協議を維持することも可能です。再分割の場合、相続人のうち1人でも遺言を理由に遺産分割協議に異議を唱えれば遺産分割のやり直しになります。遺言で何らの処分もしてない財産があれば、相続人間で遺産分割協議をすることになります。
遺言による認知があった場合で被認知者を無視した遺産分割協議や、遺言による廃除があった場合で被廃除者を加えた遺産分割協議はそれぞれ無効になります。財産を処分済みの場合は価格による支払いで解決します。
遺言で遺言執行者が選任されていた場合には、相続人は遺言の執行を妨げることができません。遺言執行者が再分割か遺産分割協議の追認かを判断します。
遺言無効の訴え
被相続人の死後にいきなり、特定の相続人に全財産を相続させる旨の遺言が発見されたケースもあります。遺言の内容があまりにも一方的で、特定の相続人にだけに有利に書かれていた場合は、自筆であるかどうかや署名の真性などを問題にされることがあります。自筆であるかどうかを争うには、手帳や日記など、比較材料を用意しておくべきです。鑑定は専門家を依頼します。遺言無効の訴えでは、医師の証言や遺言が書かれた当時の被相続人のカルテなどが証拠となります。無効原因としては、方式違背、遺言能力の欠如、共同遺言、被後見人による後見人またはその近親者に対する遺言、公序良俗違反、錯誤などです。無効とされる遺言により真に相続権が害された相続人だけが当事者適格を持ち、相続人であっても、別に法定の割合の遺産を受けている者については、訴えの利益がないとして訴訟却下となります。遺言の無効が認められない場合には、寄与分の主張や生前贈与を特別受益として主張し、遺留分で争う方法があります。遺言作成に不正があれば、不正に関与した相続人の相続欠格を主張することもできます。
7 遺言執行者遺言による相続
遺言の内容の実行は、家庭裁判所による遺言書の検認後に行います。相続手続きは各種財産ごとに異なり、財産の種類によっては相続人全員の印鑑証明や戸籍謄本などが必要になります。
遺言の執行は相続人全員でするのが原則ですが、遺言施行者が選任されていれば相続手続きの一切を遺言執行者が単独で執行者の印だけで行うことができます。遺言執行者は遺言による指定や遺言による指定の委託を経ての指定、相続人による家庭裁判所への選任申し立てを経て選任されます。遺言執行者が選任されると、相続人は執行権を失い、勝手に遺言を執行しても無効になります。
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相続税の納税義務があり、 かつ遺産分割でもめている事件 | 無 料 | 1時間:62,000円税別 | 電話:初回15分 メール:初回1往復 土日夜間:初回15分 無 料 |
内容証明が届いた事件 | 1時間:12,000円税別 ※来所困難な方に限り、 1時間30,000円税別にて 電話相談に応じます。 | ||
対立当事者に弁護士が就いた事件 | |||
調停・裁判中、調停・裁判目前の事件 | |||
弁護士を替えることを検討中の事件 | |||
その他、紛争性がある事件 (潜在的なものも含めて) | 非対応 | ||
税務に関する法律相談 | 1時間:50,000円~税別 | 1時間:100,000円~税別 | |
国際法務・国際税務に関する法律相談 | 1時間:100,000円~税別 | 1時間:150,000円~税別 |
来所 | ビデオ通話 | 電話・メール・土日夜間 | |
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内容証明が届いた事件 | 1時間: 12,000円(税別) ※来所困難な方に限り、1時間30,000円(税別)にて電話相談に応じます。 | 電話:初回15分 メール:初回1往復 土日夜間:初回15分 無 料 |
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対立当事者に弁護士が就いた事件 | |||
調停・裁判中、調停・裁判目前の事件 | |||
弁護士を替えることを検討中の事件 | |||
その他、紛争性がある事件 (潜在的なものも含めて) | 非対応 | ||
税務に関する法律相談 | 1時間: 50,000円~(税別) | ||
国際法務・国際税務に関する法律相談 | 1時間: 100,000円~(税別) |
- ※お電話やメール、土日夜間の電話相談は、「内容証明が届いた」「対立当事者に弁護士が就いた」「調停・裁判中」「調停・裁判目前」「弁護士を替えることを検討中」など、紛争性が顕在化している相続事件に限定して、簡略なアドバイスを差し上げる限度で提供しています。メール相談、電話相談または土日夜間の電話相談よりお問い合わせください。
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一般的な相続知識に関する情報は弊所の各サイトでご案内していますので、こちらをご利用ください。
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- 03-5532-1112 9:00~18:00 土日祝日除く※お電話又は予約フォームにて法律相談のご予約をお取り下さい。
※小さなお子様の同伴はご遠慮ください。