自分が死亡した場合、国際相続になる可能性があるため、対策を講じておきたい。

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自分が死亡した場合、国際相続になる可能性があるため、対策を講じておきたい。

相談者からの相談内容

自分の死後の相続問題について不安を抱えています。 シンガポールで現地企業に就職し、7年前に現地の女性と結婚しました。 結婚当時は一生をシンガポールで暮らすつもりでいました。 しかし、結婚から2年たったころから、妻との間で価値観の相違による諍いが絶えなくなり、結婚3年目から別居するようになりました。 別居当初は連絡を取り合っていたのですが、現在は音信不通です。   離婚に向けた話し合いもしていたのですが、妻が難色を示したため話し合いが進まず、仕事が忙しかったこともあり、話し合いを途中でやめてしまいました。 なお、子どもはいません。現在、帰国を考えていることもあって、妻と正式に離婚したいと考えていますが、どのように手続きを進めればよいのでしょうか。 もし、妻と正式に離婚しない状態で私が死亡した場合、相続問題がどうなるのかについても不安があります。 といいますのも、私の名義になっているが両親にお金を出してもらって購入した不動産が日本に複数あります。 そのうちの1つの物件に両親が住んでいるのですが、離婚が成立していない現時点で私が死亡した場合、これらの不動産はどうなるのか、両親の生活が脅かされることはないのか心配です。   両親には迷惑をかけたくないですし、妻に私名義の不動産を渡したくないと考えているのですが、これからどのようにすればよいのか、専門家である弁護士に相談したいです。。  
弁護士からの
一言アドバイス
「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
今すぐ弁護士度
簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
解決難易度

日本に戻るのを機に奥様と正式に離婚が成立するよう、弁護士に相談の上、話し合いを行うことが重要

離婚の手続きについてですが、現在の国際私法の運用によれば、本国法が異なる夫婦が離婚する場合、夫婦が住んでいる国の法律に従うことになります。ご相談者の場合、長年にわたってシンガポールにお住まいになり、現地の女性と結婚されたとのことですから、離婚に際してはシンガポールの法律が適用されることになります。ただし、日本に住民票を残したままであれば、日本法が適用される可能性があります。

シンガポールの法律が適用される場合、ご相談者が単独で日本での手続を行うことにより、シンガポール人の奥様と別れることはできません。シンガポールの行政府が定める手続に従う必要があります。したがって、正式に離婚をするのであれば、奥様のサインを得てシンガポールで離婚手続を行う必要があります。

次にご相談者自身の相続についてご説明します。上記の通り、現状ではご相談者はシンガポール人の方と婚姻が継続した状態になっています。そして、相続は被相続人の本国法に従うことになります。したがって、仮に日本国籍を有するご相談者が亡くなった場合、日本法が適用されることになります。日本の民法によれば、被相続人に子がいない場合、配偶者が3分の2、親が合計3分の1の法定相続分を有することになります。ご相談者の場合、シンガポール人の奥様が日本の不動産についても相続分を有することになります。

そこで、遺言を作成し、シンガポール人の奥様に家の相続分がないようにすることが考えられます。しかし、日本の民法には遺留分という制度が存在します。法定相続人は、遺言によって相続分なしとされても、一定程度以上は遺産から分け前を得ることができるという制度です。ご相談者の奥様は遺留分を有する法定相続人ですから、遺言で奥様の相続分をなしとしても、奥様が日本の不動産の共有持分を取得する可能性は排除できません。ただし、奥様が遺留分減殺請求(遺留分の請求)を行わなければ、奥様が日本の不動産の共有持分を取得することはありません。

以上の通り、日本の不動産について奥様が共有持分を取得する可能性は否定できません。

奥様とご両親が不動産を共有するという場合、不動産を売却する際には共有者全員の同意が必要となります。すなわち、不動産を売却するにあたっては、ご両親及び奥様全員が同意しなければなりません。同意を得るという作業はなかなか困難なものになることが予想されます。

そうすると、奥様が日本の不動産の共有持分を取得しないようにすることが重要になります。奥様との間で離婚の話し合いがうまく進まないとのことですが、日本に戻られるのを機に奥様と正式に離婚が成立するよう、話し合われることをお勧めいたします。

ここがポイント!

相続人の中に外国籍の方がいる場合、国際相続に精通した弁護士に確認しておく必要があります。

相続人の中に外国籍の方がいる場合、手続きが複雑になり時間もかかります。
外国籍の方が相続人になるのか、手続きはどのように進めればよいのかについては、国際相続に精通した専門の弁護士に確認しておく必要があります。

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

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