相続税の評価減相続税の税理士
相続税評価減可能性チェックシート相続税の評価減
チェックシートにある項目に該当すると、なぜ評価減となる可能性があるのか。
以下で具体的にみていきます。
不動産は評価額が高額なため、相続財産に占める割合も大きいです。
平成25年分の国税庁のデータでは、相続財産全体12表5326億円のうち、46.7%の5兆8567億円を不動産が占めています(土地:41.5%、5兆2073億円/家屋:5.2%、6494億円)。
ちなみに、現金・預貯金等は全体の26%の3兆2548億円、有価証券は全体の16.5%の2兆676億円であることからも、不動産が相続財産のうち大きいウェートを占めていることがわかります。
相続財産の金額の構成比の推移
土地の評価は相続財産の評価額に多大な影響を及ぼすため、土地の評価額いかんによって相続税が大きく変わる可能性があるのです。
土地を評価する際には、その利用目的や形状だけではなく、周囲の環境等のさまざまな要素を組み合わせて判断します。
書類上では同じ地積、同じ形状の土地でも、実際に見てみると違っていたり、逆に、見た目は同じでも、借地権や賃借権が付いているなどの違いがあったり、という場合があります。このような確認作業は難しく、おのずから土地の評価も難しくなってしまいます。
土地の数が多ければ多いほど、評価を間違えるリスクが高まるといえます。
面積が非常に広い土地を広大地といいます。
広大地は地価の総額が大きくなるため、売ろうと思ってもなかなか買い手がつきません。一般に広大地は、戸建て分譲住宅を開発する専門業者が買うことが多いです。
ただし、戸建て分譲住宅として売るためには時間も手間もお金もかかります。いくつもの分譲住宅を作る場合、各住宅の間に道路や公園、緑地などの公共施設を作らなければなりません。
公共施設の分の価格を分譲住宅の購入者に負担させることはできませんので、その分だけ収入が減ることになるのです。したがって、広大地については売却時に評価額が低くなることが予想されるため、相続税の土地評価額も低く評価されるのです。
【広大地と認められるための条件】
①その地域における標準的な宅地の面積よりも著しく広いこと
- 東京圏、名古屋圏、大阪圏の市街化区域は500㎡以上
- 上記以外の市街化区域は1000㎡以上
- 非線引き都市計画区域(市街化区域と市街化調整区域の区域区分が行われていない区域)については、3000㎡以上
※なお、さらに小さな区分による開発分譲が多い地域では、上記の面積基準以下の土地でも広大地として認められることがあります。
②公共公益的施設用地(開発道路)の負担が必要なこと
道路から奥行きがある土地で、戸建て分譲住宅の開発を行う場合、開発道路を新設しないと何軒かの住宅を建てられない場合をいいます。
③大規模な工場用地や中高層マンションに適している土地ではないこと
容積率が200%以下であれば、マンション適地ではありません。
④開発が終わっているビルや大規模店舗などの敷地でないこと
自宅や低層アパートの敷地であれば問題ありません。
形が良い四角形の土地と比較して、いびつな形の土地を不整形地、四角形と照らし合わせた際に不足している部分をかげ地といいます。
不整形地は、画地の全部が土地としての機能を十分に発揮できないため、整形地に比べて一般的にその利用価値が低くなります。かげ地の割合が多くなるほど土地の評価は下がります。
不整形地の評価減は、最大40%まで認められます。
間口が狭い土地は出入りがしにくいので、利用価値が下がります。
間口が狭い宅地についての相続税の計算はとても複雑なので、専門家でないと間違えてしまう可能性があります。
道路からの奥行きが長い、うなぎの寝床のような土地も、評価減の対象となります。
道路と高低差がある場合、道路面と同じ高さまで土を盛ったり、盛った土が周りに出ていかないように壁をつくったりする作業が必要となります。
その際にかかる費用は、土地の評価額から控除することができます。
土地の一部が崖になっている宅地は、崖部分の比率に応じて評価減を行います。
住宅地では、敷地内に30度以上の急傾斜地があるなど、住宅としての使用が難しいと判断されると、評価減につながります。
このような土地を住宅用に造成する場合に、必要な費用を宅地造成費として控除することができます。
公道に全く接していない土地を無道路地といいます。
このような土地の場合、公道に出るために他人の土地に公道まで通じる通路を作らせてもらう必要があります。
無道路地は、通路を開設する費用を控除して評価します。
公道は最低限4mの幅が必要とされています。そのため、道幅が4m未満の道路については、道路の幅を広げる必要があります。
このような狭い道路に面している土地は、道路用に土地の一部の提供を求められる可能性があります。
その際、通常は元の道路の中心から2mのラインまで敷地を後退させることになり、広げた範囲に含まれる土地を提供することになるので、その分所有する土地が減少します。
この後退部分をセットバックといい、セットバックが必要となる部分については、70%の評価減となります。
都市計画道路の計画が決まってから、道路用地として買収されるまでには時間がかかることがあります。
その間は、他の宅地よりも利用が制限されるので、土地の評価減がなされます。
都市計画道路予定地となっている割合などにより減額率は異なりますが、1%から最大50%までの評価減が受けられます。
生活環境が悪い土地としては、具体的に次のような場合が考えられます。
- 激しい振動がある
- 線路や空港が近く騒音が激しい
- 地盤にはなはだしい凸凹がある
- 日当たりが悪い
- 臭気が漂う
- 土地の取引に不利な条件がある(墓地に隣接するなどの忌み地)
生活環境が悪い土地の評価では、問題の大きさを客観的な基準で計測して数値化し、問題の影響を受けない付近の土地と比較することで、どれぐらいの悪影響があるかを判断します。
その悪影響の大きさによって、評価減の割合が決定されます。
利用制限がある土地として、具体的には、「高圧線が通っている土地」が考えられます。
電力会社の高圧線が土地の上空を通っている場合には、土地利用について、建物の建築制限、景観阻害や心理的圧迫感、電波障害、電磁波による健康被害の不安感、といった不利益を被ることになります。
高圧線下地について、建物を建てることができるとしても、高さ制限や利用制限を受ける場合、制限を受ける部分について評価額が30%減額されます。
制限により、建物を全く建てることができない土地の評価額は、50%減額されます。
ただし、このような制限のある土地であっても、畑や駐車場などの形で利用している場合には、評価額が減額されない、または低率で減額されることとなります。
文化財が埋まっている土地を埋蔵文化財包蔵地といいます。
埋蔵文化財包蔵地は、発掘調査の必要性や保存の義務があるため、土地利用が制限されます。
一般に埋蔵文化財包蔵地については、発掘調査に係る費用と期間を算定した上で、通常の評価額から発掘調査費用の80%を引いて評価します。
土壌が汚染されている土地といっても、公害の影響を受けた土地に限られません。
例えば、過去にガソリンスタンドとして使われたことのある土地は、土地が汚染されている可能性があります。過去に工場の敷地だった土地も同様です。
土壌が汚染されていること自体はもちろん、そのために生じる心理的な不安も土地の評価にとってはマイナス要素となります。
汚染地については、汚染がない状態の評価額から、環境を改善するための処理にかかる作業の見積額の80%が控除されます。
土地の権利を持っていたとしても、その土地または土地上の建物を他人に貸している場合、すぐに出ていくように主張できる強い権利はありません。
自分のために使えないという点で使用の制限がかかっており、評価も低くなります。
相続税評価減可能性のまとめ相続税の評価減
このように利用が制限されているなど、土地にとってマイナスな要素があると、土地の評価は下がります。
利用が制限されているということは、法律や条例による規制があるということです。
【具体例】
土地に関しては、たくさんの法律や条例があります。
- 都市計画法
- 森林法
- 建築基準法
- 生産緑地法
- 国土利用計画法
- 各都道府県の都市計画に関する条例
- 農地法
- 各都道府県の開発指導要綱 など
それに加えて、法令に明確な規定はなくても、過去の裁判例から減額が認められるべきであると考える場合もあります。
法律に詳しくないと、該当する法律を見落としてしまったり、判例を知らなかったりということになりかねませんが、それこそが土地評価を誤ってしまう要因なのです。
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