代償分割 -遺産分割の方法遺産分割の弁護士
代償分割遺産分割の方法
代償分割とは、現物取得することにより相続分よりも多くの遺産を取得する相続人が、その他の相続人に対して、金銭を支払うなどして過不足を調整するという分割の方法です。
例えば、遺産が住居用の不動産のみで、そこに相続人のうちのある者が生活しており、その者の生活関係の安定を考慮しなければならない場合や、農地、営業用資産など、細分化を避ける必要性が高い場合、相続財産の種類や性質によっては現物分割が困難である場合に利用されます。ただし、いずれの場合も相続分よりも多くの遺産を取得する相続人が、債務を負担する資力が十分でないときは、代償分割は適当ではありませんので、協議の際に十分に注意しましょう。
代償分割の注意点
協議分割で代償分割を行う場合は、代償金額の決定はもちろんのこと、その代償金を支払う相続人(代償債務の負担者)の支払能力を検討することが最も重要なポイントです。例えば、分割協議が成立しても代償金の支払をしてくれなければ、意味がありません。債務を負担しないからといって、他の相続人は債務の不履行により分割協議の解除を求めても判例では否定されていますので注意が必要です。
代償分割は、代償金の支払能力を見極めた上で合意し、必ず遺産分割協議書に代償金の支払期日、支払方法等を記載しましょう。支払日までの期間や支払回数なども当事者の話し合いで決めることができますが、出来るだけ短期間のうちに一括で支払うようにした方がトラブルは少ないでしょう。支払猶予の場合の利息も約することができ、一般的には民事法定利率の年5分とされています。
支払いが長期間にわたる場合は、代償債務の履行を担保するための措置(代償金支払者の資産に対する抵当権の設定など)も考慮する必要があるでしょう。履行を担保するために担保の設定などが出来るとされていますが、現物を取得する相続人の固有財産に担保設定を行うことは出来ず、分割対象の遺産に限られるべきであるとされています。
代償分割と相続税
相続税は、遺産分割により取得した各相続人の財産価額をもとに課税することを原則としており、この点は現物分割でも代償分割でも変わりません。ただ、代償分割については、相続税の課税価格の計算に特別な取扱いが定められています。
代償分割とは、共同相続人がAとBの2人(相続分は2分の1)、相続財産は土地のみ2億円という場合に、土地の全部を相続人Aが取得し、AからBに不動産価額の1/2の1億円を金銭を支払うという方法です。この場合、相続人Bが取得する1億円は、被相続人から相続により取得した財産ではありませんが、相続税の課税上は相続財産とみなすことが適当であり、一方の相続人Aの相続財産は、実質的には土地2億円から代償金1億円を控除した1億円とするのが適当です。相続税の課税価格の計算は次のように行います。
代償財産(代償金)を負担した相続人(A)
代償財産(代償金)を受けた者(B)
代償財産の価額
代償分割により負担する資産が金銭ではなく、土地などの現物である場合には、その代償財産の評価は、遺産分割時ではなく相続開始時の価額で算定します。たとえば、相続人Aが相続人Bに、A所有の土地をもって代償する場合、土地の評価額が相続開始時で1億円、遺産分割時で1億2000万円というときは、上記算式の「代償財産の価額」を1億円とするということです。
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