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第4章 財産の不正操作をした者と戦う遺産分割の弁護士

1 財産の不正操作が発覚したら最初にすべきこと第4章 財産の不正操作をした者と戦う

財産の不正操作が発覚したら、スピード対応が求められます。この瞬間にも、証拠が破棄されている可能性があります。すぐに遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談し、今後の対応を検討すべきです。不正操作をした者と戦うことを躊躇していては手遅れになってしまう可能性もあります。
遺産相続開始後に故人の財産が不正操作されていたことが発覚した場合、故人を問い質し真相を明らかにすることはできません。
預金はいつでも引き下ろされる恐れがありますし、不動産の名義が第三者に移される可能性もあります。不動産の名義を第三者に移されてしまうと、不動産を取り戻すことは難しくなります。
財産の不正操作と戦ううえで、遺産分割専門の遺産相続弁護士が提案する一番のポイントは、最初に不正操作をした者の財産隠しを封じておくことです。
家族の財産を不正操作する人間ですから、一筋縄ではいかないのは当たり前でしょう。事前の準備をせずに正面から返して下さいと頭を下げても無駄です。遺産分割専門の遺産相続弁護士とよく相談して請求方法や最初の対応を考えるべきです。
不正操作をした者は、遺産相続トラブルに関する裁判では証拠がないのをいいことに事実を否認するでしょうし、遺産相続トラブルに関する裁判中に財産を隠すでしょう。財産を隠されると、遺産相続トラブルに関する裁判に勝ったとしても判決は紙切れになってしまうので、確実に執行するためには相手の財産を凍結しておく必要があります。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が提案する財産凍結の方法としては、仮処分の手続きを使って、仮差し押さえをしておくことや、銀行口座を事実上凍結させて引き出しをさせないことなどです。また、来たるべき遺産相続トラブルに関する裁判に向けて、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談して証拠も集めておきましょう。

(1)今すぐ差し押さえろ!

不正操作をした者相手に裁判をする場合の注意点を遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明します。財産の不正操作をするほどの人間だから、遺産相続トラブルに関する裁判が係属している間に財産を隠してしまったり、第三者に売却してしまったりして、強制執行できなくさせてしまうことも考えられます。
遺産相続トラブルに関する裁判に勝っても、請求権が存在することが確認されるだけです。不正操作をした者が財産を持っていなければ、実際に請求しても回収できない可能性もあるのです。
契約書でしっかりと確認できる請求権があって、請求権については相手も認めていたとしても、ない袖は振れないと踏み倒されることがあるのと一緒です。
また時間と労力をかけて遺産相続トラブルに関する訴訟に勝っても、遺産相続トラブルに関する訴訟終了時に不正操作をした者が財産を持っていなければ、勝訴判決は絵に描いた餅。結局、お金は返してもらえません。
このように、裁判で勝つことと回収できることはイコールではなく、両者にはギャップがあります。このギャップを埋める手段が民事保全制度です。
苦労して得た勝訴判決を単なる紙切れにしないために何をすべきか。遺産分割専門の遺産相続弁護士としては、何よりもまず、仮差押えや仮処分の申立てを行うべきであるとアドバイスします。
遺産相続トラブルに関する訴訟や調停をする前に、不正操作をした者の持っている不動産や預金口座を移動・出金できなくし、不正操作をした者の財産を凍結するのです。

(2)民事保全手続きの中身

遺産相続トラブルに関する裁判においても重要な役割を果たす民事保全手続きについて、遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。
民事保全手続とは、民事訴訟の本案の権利(貸金返還請求権など)の実現を保全するために行う仮差押えや仮処分の手続きをいいます。
将来なされるべき強制執行における請求権を保全、つまり強制執行の場合に備えて相手の財産を仮に確保するため、裁判に先立って相手方の財産の現状を維持・確保することを目的とする予防的・暫定的な処分です。
民事保全には①仮差押え、②係争物に関する仮処分、③仮の地位を定める仮処分があります。
①仮差押えは、裁判を起こす前に、相手方の不動産や預金などの財産を前もって仮に差し押さえ、将来の回収を容易にする手続です。
仮差押命令は、債権者の申立てにより裁判所が決定で行います。
債権者は被保全債権(債権者が債務者に対して有する金銭債権の存在)および保全の必要性を明らかにする必要があります(民事保全法13条、20条)。
保全の必要性とは、本案訴訟を提起して判決を待っていたのでは強制執行をすることができなくなり、又は著しい困難を生ずるおそれがあることをいいます。現時点で仮差押えをしておかなければ、執行力のある債務名義を取得した時点で当該目的物が散逸しているおそれがあるかどうか、仮差押えが認められることで被る可能性がある損害よりも仮差押えの目的物の価値が小さいかなどの点が実務上考慮されます。
具体的には、不動産が目的物である場合には、その不動産が処分されたり、担保が設定されて余剰がない状態になってしまったりするおそれがあると判断されれば、保全の必要性があることになります。
仮差押命令の審理や担保金について、遺産分割専門の遺産相続弁護士と見てみましょう。仮差押命令の審理は、書面審理または債権者と裁判官の面接により行われます。仮差押命令の申立てがなされたことが債務者にわかってしまうと、債務者が急いで仮差押えの対象となる財産を処分してしまう可能性がありますから、債務者の審尋を行わないのが通常です。
仮差押命令の被保全債権が存在しなかったにもかかわらず、仮差押命令を受けたために、債務者が被った損害などを被った場合のために、損害を填補するものとして、裁判所は債権者に担保を立てさせるのが通例です。担保金は仮差押えの対象となる財産の価額の一定割合とされます。
仮差押命令が発令された場合、債権者は仮差押命令が送達された日から2週間以内に仮差押命令の執行の申立てをする必要があります(民事保全法43条2項)

保全の必要性の判断
保全の必要性の判断

②係争物に関する仮処分は、特定物の引渡しなど、金銭債権以外の請求権について、将来における執行保全のために物的状態の現状維持を命ずる手続で、2つに分類できます。各分類について遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が説明します。
1つは、処分禁止の仮処分です。これは登記請求権を保全するために不動産の処分を禁止するための仮処分です。自分の所有する不動産の登記が他人名義になっているため、抹消登記請求訴訟を提起する場合に、債務者が訴訟係属中に第三者に登記を移転してしまわないようにするための処分です。
もう1つは、占有移転禁止の仮処分です。不動産の明渡し請求権を保全するために占有の移転を禁止するための仮処分です。明渡し訴訟係属中に債務者が当該不動産に第三者を住まわせるなどして占有を移してしまい、明渡しの強制執行ができなくなるおそれがある場合などへの措置です。
③仮の地位を定める仮処分は、判決によって権利または法律関係が明確になるまで現状を放置しては取返しのつかない結果になるおそれがある場合に、裁判により一応、暫定的に法律状況を定めておく手続きです。
例えば、自分の土地の上に立っている他人の建物を明け渡すように求めたり、自分の土地の隣地に建設予定のマンションの計画をやめさせたりするために利用されます。
遺産相続トラブルに関する裁判に先立って行う財産の不正操作に対する仮処分としては主に、①仮差押え②係争物に関する仮処分を使っていくことになります。

ア 貸金庫はこうして差し押さえる

遺産相続トラブルにおいて、相続人のうちの1人が、被相続人が契約していた貸金庫内の保管品を独占し、他の共同相続人に開示しない場合があります。
通常、貸金庫内の保管品の出し入れは契約者本人および予め登録した代理人だけが可能です。
したがって、たとえば親と同居していた長男が、貸金庫開設時に代理人として登録されていることをいいことに、貸金庫内の保管品を独り占めしてしまうのです。
貸金庫契約は、銀行の付随業務である保護預り(銀行法10条2項10号)のひとつです。
有価証券や通帳、権利証などの大切な財産を保管するための金庫を利用できるサービスで、専用鍵やカード、暗証番号を利用して金庫に入室することになるため、安全性やプライバシーにも配慮されています。
銀行は貸金庫の保管品に対して、貸金庫利用者とともに占有、つまり支配をしていますが、貸金庫内の各保管品について個別に支配をしているのではなく、貸金庫の保管品全体について包括的に支配していることになります。
したがって、銀行は個別の保管品の出し入れについては把握しておらず、貸金庫の中に過去において何が保管されていたかなど記録に残す義務はありません。つまり、銀行は金庫の中身はまったく把握していないのです。
遺産相続開始後、相続人の1人が貸金庫の内容物を取り出したいと言ってきた場合、銀行はどのような対応をするのでしょうか。銀行実務を踏まえて遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。銀行実務では、この内容物取出し請求は処分行為であるとされているので、共同相続人全員の同意が必要となります。銀行は、被相続人の戸籍謄本により相続人を確認し、相続人全員の印鑑登録証明書の提出を求め、相続人全員の立会いによって、貸金庫の開扉と保管品の搬出を認めています。遺産分割によって貸金庫の権利帰属が決定する前に、共同相続人の1人から内容物取出し請求があった場合、銀行はこの請求を拒否する取扱いになっています。
このように、銀行は、遺産相続開始後において相続人全員からの請求があったときに、全員立会いの下での内容物の開扉を認めています。
判例では、貸金庫利用者は貸金庫契約に基づき、銀行に対して、貸金庫室への立入りおよび貸金庫の開扉を求め、内容物を取り出すことができる状態にして、貸金庫の内容物全体を一括して引き渡すことを請求する権利を有するとされています(最二小判平成11年11月29日、民集53巻8号1926頁)。また、共同相続人が銀行に対し、遺産を構成する貸金庫の内容物全体の引渡しを請求する場合、占有権に基づく妨害予防請求権および、共有持分権に基づく妨害予防請求権としての内容物取出し請求権を行使することになるとされています(東京地判平成15年5月22日、金法1694号67頁)。

そもそも相続人の1人が、遺産相続が発生したことを隠して開披請求した場合、やはり契約者に成りすましての内容物の取り出しを見過ごしてしまいます。貸金庫利用にあたって求められるものは、届け出印と鍵くらいです。利用票の筆跡の照合も真剣にはやっていません。
もともと被相続人と同居していた相続人を代理人に指定している場合もあり、貸金庫の財産の不正操作は横行しているものと遺産分割専門の遺産相続弁護士は分析します。
遺産相続における遺産分割調停では、相続人の1人が代表で貸金庫の開扉および内容物の保管をすることについて、他の相続人の合意を得ることができれば、中間合意調書を作成し、任意に委任状を提出して開扉してもらうことになります。委任状を提出できない場合は、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談し、保全処分により財産の管理者を定めて(家事事件手続法200条)、貸金庫の開扉などの手続きを行わせることも検討すべきでしょう。
貸金庫の内容物について争いが生じる可能性がある場合の対処法を遺産分割専門の遺産相続弁護士が紹介します。銀行が貸金庫の開扉を承諾している場合、公証人によって事実実験公正証書が作成されることもあります。事実実験公正証書とは、公証人が嘱託を受けて、自らの五感で直接体験し、認識した事実を記載して作成するものです。裁判所の証拠保全や検証、あるいは捜査機関の実況見分に似たもので、権利の得喪変更に直接・間接に影響を及ぼす多種多様な事実を対象とします。相続人の嘱託を受けた公証人が貸金庫を開扉して点検をし、その結果を証書に記録して、記載内容の正確なことを確認した嘱託人とともに署名押印することになります。

イ 相手方からの仮差押さえもありうる

遺産相続トラブルに関する裁判で仮差押えを行った際に、遺産分割専門の遺産相続弁護士の立場から注意してもらいたい点は、相手方が反訴を提起のうえ、こちらの財産に対して仮差押さえをしてくる可能性は大きいという点です。
自分の財産も差し押さえられるだろうと予測し準備したうえで、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談し遺産相続トラブルに関する訴訟の提起について準備を進めるべきです。場合によっては口座からお金を引き出しておく必要もあります。

遺産相続弁護士のコラム 隠し口座を暴け

見つかりたくない財産を保管する場合、発見されにくい金融機関の口座に預けていると考えるのが自然でしょう。地方銀行や信用金庫、ネット銀行などが、発見されにくい金融機関といわれています。これらの金融機関についても仮差押えの対象として検討すべきです。
仮差押えを申立てる際の金融機関の支店の特定については、たいていの場合、預金者の居住地や勤務先近くにの口座についてのみを仮差押えの対象とします。しかし、預金者の居住地や勤務先から離れた支店に口座を開設して財産隠しをするケースも多いので、仮差押えをする場合は、いくつか考えられる銀行や支店名で仮差押えをかける必要があります。東京在住・在勤であるにもかかわらず、北洋銀行網走支店に口座を持っているケースもあるのです。
また、仮差押えの際には、銀行名だけでなく支店名まで特定する必要があります。遺産分割専門の遺産相続弁護士の立場から注意が必要であると考えるのはネット銀行です。ネット銀行は支店名がトリッキーですので、仮差押えに当たって特定が困難といわれています。
銀行で本人を特定する場合、第一段階として氏名と生年月日、住所で検索されることが多いようです。氏名といっても「漢字表記」ではなく、「フリガナ」で判断されるとのこと。
「山田幸子」については、「ヤマダユキコ」名義と「ヤマダサチコ」名義の2つの預金口座の可能性を検討するべきです。女性の場合、旧姓で開設した口座をそのまま生かしておき、その口座を利用して財産の不正操作で得たお金を保管していることも考えられます。
遺産分割専門の遺産相続弁護士からのアドバイスは、差し押さえるべき口座を検討する場合には漢字の読み方を複数検討すべきであるということです。

(3)差し押さえが無理でも口座を凍結させる

裁判上の手続きを踏むいとまがない場合はどうするか?遺産分割専門の遺産相続弁護士が有効な手段を提案します。
手っ取り早く、銀行に口座を凍結させることを検討すべきです。
凍結させる口座は、故人の口座でも、不正操作をした者の口座でも、その時々の状況に応じてターゲットを変えます。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が注意を促したいのは、故人の口座は遺産相続が開始した瞬間に凍結されるわけではないという点です。
銀行が遺産相続の事実を把握するまでは、口座が有効なまま生き続けるのです。本人がいなくても暗証番号を知っていれば、ATMからはお金を引き出すことができます。委任状をもって銀行に行くと窓口でも引き出すことができますが、遺産分割専門の遺産相続弁護士として多くの事例を見ていますと、遺産相続開始後の被相続人の口座からの引き下しはATMを利用することが多いようです。
親と同居していた兄が無断でATMからお金を引き出しているに違いない。そのような場合は、銀行に相続が発生した事実を告げて口座を凍結させましょう。
故人の口座からは既に無断で引き下ろされている。凍結が間に合わなくても、相続人名義の口座に故人のお金が入っていることがわかっている場合は、不正操作した相続人の口座を凍結させることも考えます。
相続人の口座は、実質的に故人のお金が入っている名義預金であるから、引き下しに応じないようにと要求するのです。
銀行に対しては、「口座の中に入っているお金は自分のものであるから、預金名義人は仮装の債権者である。真実の債権者は自分なので引き出しに応じないように。応じてしまって自分に損害が生じた場合は、銀行に対して損害賠償請求をする」という内容証明を遺産分割専門の遺産相続弁護士に依頼して送付します。これで銀行が口座を凍結することもあります。
もっとも口座を凍結させたからといっても、口座名義人が引き出せなくなるだけで、中に入っているお金を自分のものにするためには、遺産相続トラブルに関する裁判で実態的に自分こそが権利者であることを証明する必要があります。
銀行としては本当の債権者が誰かがわからないので、供託(供託所に一旦お金を預けること)することもあります。供託してしまえば、少なくとも相手方は自分こそが権利者であることを証明しない限り自由には引き出せなくなりますので、不正操作をした者の遺産隠しを心配せずにゆっくりと遺産相続トラブルに関する裁判に集中できます。相手がお金を自由にできる状態ですと、遺産相続トラブルに関する和解などの交渉でも相手が主導権を握ることになってしまいがちです。相手も本気で遺産相続トラブルに関する訴訟を遂行しなければならない状況をつくることで、遺産相続トラブルに関する裁判での地位を対等にするのです。

(4)証拠を収集する

ア 相続税申告を単独で

不自然な預金の引き出しや偽造贈与契約の可能性があるけれど、証拠を掴むことができない。このまま遺産分割をしてしまうと、財産の不正操作に罰を与える機会を逃すことになってしまう。
こうした場合の有効な対処法を遺産分割専門の遺産相続弁護士が提案します。とりあえず単独で相続税の申告(遺産未分割での申告)をし、後日遺産分割が完了した時点で更正請求や還付手続きをするという方法です。
人が死亡し遺産相続が開始すると、死亡後1週間以内に死亡届を役所に提出しなければなりません(戸籍法86条)。
死亡届が提出されると、市町村は死亡届に記載されている内容を税務署に通知します(相続税法58条)。この通知の際、死亡の事実だけではなく、固定資産税評価額なども通知されるといわれています。つまり、税務署は死亡した人の財産がどの程度あったのか、相続税を納付する必要があるのかについて予め把握しているのです。
単独で相続税の申告をする理由は、相続税の税務調査をしてもらうためです。相続税の申告は、相続財産について各相続人間で矛盾する内容の申告が行われないように、通常は相続人全員がそろって行うことが通例なのですが、単独で行うことも可能です。各相続人間の申告内容に矛盾が生じている場合は、相続税の税務調査が行われる可能性が高くなります。結果、財産を隠している相続人が調査の過程で相続財産の存在を自白することもありうるのです。
相続人自らの通報をきっかけに相続税の税務調査を行ってもらうことで、遺産全体の金額や不正行為を炙り出すことができます。
相続税の申告後、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談して家庭裁判所に遺産分割調停を申立てます。遺産分割調停の場で、不正引き出し分も被相続人の遺産に含めて具体的な相続分を計算すべきであると主張します。財産の不正操作した張本人も、税務調査で不正が明らかになっている以上、自分が不正に引き出したことを認めざるを得ません。
相続税の税務調査と聞くとできれば避けて通りたいと消極的になりがちですが、財産の不正操作の不正を暴く手段としても活用できるますので、遺産分割専門の遺産相続弁護士の立場からは積極的に活用することをお勧めします。

イ 銀行相手に裁判をする

銀行から証拠を引き出すための方法を遺産分割専門の遺産相続弁護士が紹介します。銀行を被告にして民事訴訟を提起するという手段を活用するのです。銀行と預金者の関係は債務者と債権者です。預金者は銀行に対し、預金の引き出しに応じるように求める権利を有しています。銀行が預金の払い戻しに応じない場合には、銀行を被告として各相続人が自己の相続分に基づき預金払い戻請求訴訟を提起できることが、裁判でも認められています。相続人勝訴の判決が下されれば、金融機関は払い戻しを拒否できません。
この場合、金融機関としては、他の相続人に対する責任を免れるために、相続人全員に対して訴訟告知をすることになるでしょう。訴訟告知を受けた相続人は、自己の払い戻請求権に基づいて訴訟参加することになり、相続人間の遺産相続に関する紛争が激化するリスクもあります。
ここで訴訟告知について遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が説明しておきます。訴訟に参加しうる第三者に対して、当事者の申し出に基づいて訴訟係属の事実を法定の方式によって通知することです。当事者のほかに訴訟に利害関係のある第三者がいる場合に、その者に訴訟に参加する機会を与え、たとえ参加しなくても告知者と第三者との間に一定の効力(参加的効力)を発生させるものです。
訴訟になれば、銀行も防御活動のために内部資料を出すでしょうから、不正操作をした者との遺産相続に関する裁判にも使える証拠が入手できることもあるのです。最近では、訴訟提起に先立って事前に相談すれば払い戻しに応じる金融機関もあるようです。

遺産相続弁護士のコラム 証拠の時系列を意識

遺産分割に詳しい遺産相続弁護士の考える証拠評価のポイントは、時系列です。
証拠を提出する際は、重要と考える証拠から提出することが多いでしょう。
裁判官は提出された順番で証拠を見ることになりますから、どうしても最初に提出された証拠の印象が強く、無意識のうちに時系列を誤って理解してしまうことがあります。証拠に記載されている日付の順番に読んでいれば間違わないことを、提出された順番に読むことから勘違いしてしまうのです。
しかし、財産の不正操作において真実を読み解くには、実際に起きた出来事の時系列が非常に重要です。遺産相続トラブルに関する訴訟の最初の段階から、発生した順番を間違えずに把握してもらうために、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に相談して背景事情を説明した当事者および関係者の陳述書や報告書を早期に提出し、裁判所に一連の背景事情を理解してもらう必要があります。さらに時系列に沿って証拠を整理した主張をするなどの工夫をすることも訴訟を進めるうえでのポイントになると遺産分割に詳しい遺産相続弁護士は考えます。

遺産相続弁護士のコラム 身の危険に備えて緊急避難

財産の不正操作特有の問題として、激情タイプの相続人が、裁判所からの訴状が届くと同時に押しかけて、他の相続人に暴力をふるうことがあります。不正操作をした者に対してどのように責任追及していくのかとは別に、安全上の配慮が必要になることもあるのです。
家族間の紛争は、ときに当事者を極度に感情的にさせます。
今まで身内の甘えで通らないはずのことを通してきた人間が、初めて法律という社会のルールによって特別扱いを拒絶された。思い通りにならないことに対する怒りが、刃傷沙汰に結びつくこともあります。極端なケースでは、親族間で遺産分割の進め方や遺産分割方法などでもめ、カッとなって相手を殴ったとか、刃物で刺したようなこともあります。実際に起きた事件としては、平成19年に鳥取県で、母親の四十九日の法要後の会食中に、遺産相続を巡って口論になった甥を刃物で刺殺し、実姉2人にもけがを負わせた男が逮捕されました。また、不正に遺産を相続することをもくろんで、計画的に殺人を犯す事例もあります。夫を暴行して死なせた妻が「夫は病死」という虚偽の死亡届を役所に提出。亡き夫の親族が相続放棄したように偽装工作し、預貯金のほかに虚偽の登記によって土地を1人で遺産相続していました。この妻は、裁判で夫への傷害致死罪だけでなく、夫の死後に別の男性を殺害した殺人罪にも問われ、最高裁で無期懲役が確定しています。
遺産分割専門の遺産相続弁護士としては、家族における人間関係や相続人の個性などを考慮して、必要に応じて、攻撃にさらされる可能性のある方をホテルに避難させることも検討しなくてはなりません。居場所が突き止められた場合でもすぐに逃げられるよう、ウィークリーマンションを借りる方法も有効です。
遺産相続トラブルに関する裁判の訴状には原告の住所を記載するのですが、現住所が相手方にバレてしまうと危害を加えられる恐れがある場合には、依頼している遺産分割専門の遺産相続弁護士が所属する事務所の住所を記載し、「○○法律事務所内」とすることもできます。
当事者の現住所を相手方に伝えたくない場合には、裁判所に住所を教えたくない相当の理由を説明し、認められれば都道府県までの表記、本籍での表記、最後の住所地での表記なども可能です。実際に危害が加えられる前に、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談して対処法を検討しましょう。

2 遺産かどうかをはっきりさせる第4章 財産の不正操作をした者と戦う

(1)遺産の範囲確定訴訟

遺産相続で発覚した財産の不正操作。財産の不正操作が絡む遺産相続トラブルを解決するには、具体的にどのような手続きを経る必要があるのでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。
遺産を分ける裁判は遺産分割調停なので、財産の不正操作も遺産分割調停で一気に解決できると思いがちです。
しかし財産の不正操作は、遺産分割調停だけでは解決できないのです。
というのも、遺産分割調停での最初の確認事項は遺産の範囲なのです。どこまでの財産が遺産なのかを決めることが遺産相続における先決問題なのです。どの財産が遺産でどの財産が遺産ではないかということが決まらなければ、遺産分割調停が始められません。
遺産相続における先決問題が解決していない場合は、遺産の範囲を確認する訴訟を別に提起して、遺産の範囲を確認してから、再度、遺産分割調停を起こし直す必要があります。
遺産の範囲を争う訴訟は家庭裁判所で行う遺産分割調停と異なり、通常の裁判所で行う訴訟です。
ここで遺産分割調停について遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が説明します。調停は、裁判官のほかに一般市民から選ばれた調停委員2人以上が加わって組織した調停委員会が当事者の言い分を聴き、必要があれば事実も調べ、法律的な評価をもとに条理に基づいて歩み寄りを促し、当事者の合意によって実情に即した解決を図る手続です。遺産分割調停では、調停委員(裁判官1人と調停委員2人)が間に入り、各相続人の言い分を聞いた上で、客観的に妥当な方向性や相続分を示し、共同相続人間の話し合いが円滑に行えるよう、提案や指導を行います。遺産分割調停の本質は、第三者である裁判所が介入した協議の場と考えて構いません。調停委員の提案には強制力がありませんので、誰か1人でも納得がいかない場合などは調停不成立で終了します。その場合は、家庭裁判所の審判手続きへと移行します。

(2)調停手続きは後回しに

遺産の範囲の確定のように、遺産分割の前提問題に争いがあり、遺産相続トラブルに関する訴訟の提起が見込まれる場合、その争いが解決するまでの間は遺産分割手続を進めるべきではありません。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が実務における取り扱いを説明しますと、申立人に調停の取下げを勧告することになります。遺産相続トラブルに関する訴訟が係属したり、遺産相続トラブルに関する訴訟の提起が見込まれたりする場合には、前提問題が解決するまでの間、遺産分割手続を進めることが適当ではないからです。
申立人がこれに応じない場合は、審判に移行したうえで、分割禁止の審判をすることになります(民法907条3項)。
2カ月に1回程度の割合で調停期日を開き、当事者に訴訟事件の経過報告をさせることもあります。遺産相続における前提問題の訴訟が長引きそうな場合には、一部の遺産分割をすることも検討します。さらに、不起訴合意のうえで審判を続けたり、調停をしない措置(家事事件手続法271条)がとられたりすることもあります。
訴訟と審判の違いについても遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明しておきましょう。訴訟とは、国家の司法権の行使によって、その権力を背景に紛争を強制的に解決するための手続のことをいいます。裁判所は、当事者が提出した証拠の判断と法律の適用から、最終判断として判決を言い渡します。一方、審判は家庭裁判所の審判官が相続人の主張や遺産の内容を客観的に判断して、遺産の分割について決定を出す分割の方法です。審判分割においては、民法906条の分割基準に従って、「遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮して」各相続人の法定相続分に反しないよう遺産分割を実行します。
いずれにせよ、遺産相続における前提問題が解決するまでは、遺産分割手続はストップすることになります。
こうした問題を解決するために新たに設けられた制度について、遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します、家事事件手続法では、中間決定の制度(80条1項)が設けられました。民事訴訟でしか解決できなかった前提問題を家事審判手続きの中で取り扱うことができるようになり、審理の迅速化に資するものといえます。
中間判決は、①審判の前提となる法律関係の争い、②その中間の争いについて、裁判するのに熟した時にすることができます。遺産の範囲や遺産の評価について争いのある場合が該当します。

(3)審判では解決できない

ある財産が被相続人の遺産に含まれるのか否かという問題は、実体法上の問題、つまり法律上の権利義務が存在しているかどうかに関わることであり、民事訴訟により確定する必要があるものです。
訴訟による解決は、実体的権利義務の存否を確定するものですから、その解決には既判力が生じます。既判力が生じるというのは、権利についての判断が確定し、後で蒸し返すことができなくなるということです。
一方、審判は、実体的権利義務が存在していることを前提として判断する手続きですから、遺産の範囲についての判断に既判力は生じません。
したがって、遺産相続において遺産分割の前提問題に争いがある場合には、審判手続きで全ての問題を解決することはできず、民事訴訟による解決が必要となるのです。

3 遺言を無効にする第4章 財産の不正操作をした者と戦う

(1)遺言無効確認訴訟

遺言が無効になる場合としては、①法定の要式(形式)を欠く場合、②遺言無能力者が作成した場合、③要素の錯誤に基づく場合、④公序良俗・強行法規に反する場合などがあります。
遺産分割専門の遺産相続弁護士として多くの事例を見てきたところ、問題になることが多いのは、②遺言無能力者が作成した場合に関するトラブルです。
遺言が無効であることを主張するには、遺言無効確認訴訟を提起することになります。遺言が無効であると考える相続人は、他の相続人と共同でなくとも、単独で提起することができます。遺言執行者がいる場合、遺言を無効と考える遺言執行者も遺言無効確認訴訟を提起することができます(大決昭和2年9月17日民集6巻501頁)。また、相続人は、被相続人の遺言執行者を被告として遺言の無効を主張し、相続財産について持分権を有することの確認を求める訴えを提起することができます(最三小判昭和31年9月18日民集10巻9号1160頁、判タ65号78頁)。この訴訟は、遺言の無効を確認することにより、遺言の内容通りの財産分配を阻止することが目的です。
遺言無効確認については、必ず調停を経ることが必要です。いきなり裁判を提起するのではなく、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければなりません(家事事件手続法257条1項)。もっとも、家事調停を申立てることなく遺言無効確認の訴えを提起した場合であっても、遺産相続をめぐる紛争の状態や程度などに照らして、家事調停では解決する見込みがないと考えられる場合には、例外的に遺言無効確認の訴えの審理をそのまま進めることもあります。
遺言無効確認訴訟における訴額についても、遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明しておきます。遺言無効確認訴訟の訴額(原告が主張する利益を金銭で見積もった額)は、遺贈などにより処分された財産の価額×原告の法定相続分という計算により算出されます。遺言の内容が相続分および遺産分割方法の指定に関するものである場合には、
(遺言により原告が取得する財産の価額+遺言により被告が取得する財産の価額)×原告の法定相続分÷(原告の法定相続分+被告の法定相続分)―遺言により原告が取得する財産の価額
という計算により算出されます。
遺言無効確認訴訟において原告の請求を認める判決が確定すると、既判力により遺言が無効であることが確定します。したがって、遺言から生じる法律関係や遺産相続に関するトラブルについての以後の訴訟では、裁判所は遺言無効判決を前提として判断しなければなりません。
これに対し、原告の請求を棄却する判決が確定すると、既判力により遺言の有効性が確定します。否定の否定は肯定ということです。したがって、遺言から生じる法律関係や遺産相続に関するトラブルについての以後の訴訟では、裁判所は遺言が有効であることを前提として判断しなければなりません。
遺言が無効であることが確認されたうえで、実際にどのように財産を分けるかということは、改めて裁判の後に話し合うことになります。

(2)実際の遺言無効確認訴訟の進行

ア 訴え提起

訴える相続人は、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談して訴状に以下の請求原因(裁判の請求が認められるための根拠事実)を掲げて訴訟を起こします。
①遺言が存在すると被告が主張していること
②遺言者が死亡したこと
③遺言者が、死亡時に①の遺言の目的である財産を所有していたこと
④原告が遺言者の相続人またはその承継人であることを基礎付ける遺言者との身分関係

①から④は、いずれも確認の利益を基礎付ける事実とされ、これがなければ訴えが不適法になるものです。

イ 訴えられた側の反論

訴えられた側である被告は何について反論すればよいのでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。遺言が無効であることの主張立証責任は原告にはありません。遺言が有効であると主張する者(被告)が、遺言が有効であることの主張立証責任を負うことになります(最一小判昭和62年10月8日民集41巻7号1471頁)。したがって、遺言の成立要件を満たしていることを主張することが抗弁(被告の反論)となります。
有効であると主張する被告は具体的に何を主張していくことになるのか、遺産分割専門の遺産相続弁護士が考える主張のポイントを踏まえて説明します。

(ア)自筆証書遺言の場合

①遺言者が、遺言の全文、日付および氏名を自署し、押印したこと
②(加除訂正箇所がある場合は)加除訂正部分につき、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記してこれに署名し、変更場所に押印したこと
以上の2点を主張します。
よく問題となるのは、遺言の署名と被相続人の署名の同一性です。
遺言者の筆跡については、日記やメモなどが提出され、筆跡の同一性を判断します。
契約書記載の筆跡について争われている場合には、裁判所に提出されている訴訟委任状の文字や印影と対照することも効果的です。訴訟委任状の署名は、作為なく書かれていることが多く、契約書の字体と似ていることも多いため、照合するのには適切な資料です。もっとも、筆跡は本人の体調・感情によって異なることも多く、また時の経過によって筆跡が変わってくることもあります。
筆跡の同一性を証明しようとするのであれば、成立に争いのない照合文書の原本をできるだけ多数提出するべきだというのが遺産分割専門の遺産相続弁護士のからのアドバイスです。
筆跡の同一性が問題となる場合において、筆跡鑑定が行われることもあります。
判例では、いわゆる伝統的筆跡鑑定法は、多分に鑑定人の勘に頼る部分があるので証明力に限界があるとしても、直ちにこの方法が非科学的で不合理だとは言えず、筆跡鑑定におけるこれまでの経験の集積によって裏付けられた判断は、鑑定人の単なる主観でないのは当然と判示されています(最判昭和41年2月21日判時450号60頁)。
貶めつつも持ち上げるのが、裁判所の筆跡鑑定に対する態度ですが、筆跡鑑定だけで決定打になるわけではないというのが遺産分割専門の遺産相続弁護士としての実務の感覚です。
筆跡が問題となるケースといっても、程度は様々です。誰が見ても一目瞭然であるケースから、微妙な判断を強いられるケースまであります。また、筆跡は変化するものです。遺言の文字が遺言者の筆跡と全く似ていないので問題になった遺産相続事件で遺産分割専門の遺産相続弁護士が確認したところ、病気をしていて筆跡が全く変わってしまったということもありますから、遺産分割専門の遺産相続弁護士としては、筆跡の同一性を過度に重要視するのは問題であるとアドバイスします。

(イ)公正証書遺言の場合

公正証書の場合、
①証人2人以上の立会いがあったこと
②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授したこと
③公証人が、遺言者の口授を筆記し、これを遺言者および証人に読み聞かせ、または閲覧させたこと
④遺言者および証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名押印したこと
⑤公証人が、①から④の方式に従ったことを付記して、これに署名押印したこと

以上の5点を主張します。
②の「口授」について判例では、遺言者が何らかの文言を発したことが必要とされており、公証人からの確認に頷いただけでは「口授した」とはいえないとされています(最二小判昭和51年1月16日裁判集民117号1頁・金法761号28頁、最一小判昭和54年7月5日裁判集民127号161頁・判時942号44頁・判タ399号140頁、最一小判平成11年9月14日裁判集民193号717頁・判時1693号68頁・判タ1017号111頁)。
③の「公証人」について遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説しますと、当事者その他の関係人の嘱託により、法律行為その他私権に関する事実について公正証書を作成し、認証を与えるなどの権限を持つ者です。法務大臣が任命し、その指定した法務局または地方法務局に所属します。裁判官・検察官・法務局長などを務めた人の中から選ばれ、法務大臣が任命する公務員です。公正証書遺言を作成したり、公正証書遺言の有効性を争ったりする場面においては、よく登場しますので覚えておきましょう。

ウ 訴えた側の再反論

訴えた側である原告としては、何について再反論することになるのでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。
訴えた側の再反論(再抗弁)としては次のものが考えられます。
①遺言時に遺言能力がなかったこと(民法963条)
②民法総則の規定による無効・取消し
③遺言の証人または立会人の欠格事由(民法974条)

①の「遺言能力」とは、単独で有効に遺言を行うことができる資格のことです。
遺言は財産関係や身分関係に重大な影響を及ぼす法律行為ですから、遺言を作成するには合理的な判断能力が必要とされます。
未成年でも15歳以上であれば遺言を作成することが可能です(民法961条)。また、成年被後見人であっても、事理弁識能力(物事を認識し意思表示する能力)があり、医師2人以上の立会いがあれば、遺言を作成することできます(民法973条1項)。このように、15歳以上であれば原則として遺言能力が認められ、遺言者は遺言時に行為能力(単独で確定的に有効な法律行為をなしうる地位または資格)までは不要ですが、意思能力は必要とされます。遺言能力は通常、誰もが持っているといえますから、それが争われる場合にのみ問題とすればよいことになります。したがって、遺言無能力であったことについては再抗弁として原告が主張立証責任を負うことになります。
従来は、意思能力があればストレートに遺言能力も問題ないと考えられていましたが、最近では、当該遺言を理解する能力として一般の意思能力以上の能力を要求する傾向にあります。判例においては、遺言内容が重大ないし高額であることの理解の有無、遺言作成依頼の経緯、遺言作成時の状況、他人による不当な干渉の有無などが考慮されています。
遺言能力の立証は、主治医や担当医の診断書やこれらを資料とする鑑定が重視されます。医師に意見書を作成してもらうことも検討する必要があります。医師への依頼や準備に時間がかかる可能性もありますので、遺言能力を問題とする場合には早めに遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談し、何をどのタイミングで用意すべきなのか検討した方がよいでしょう。
②の民法総則の規定による無効・取消しについて遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明します。
民法5条、9条、13条および17条(行為能力の制限)、民法94条(虚偽表示)、代理(民法99条など)は遺言には適用されませんが、民法90条(公序良俗)や同法96条(詐欺強迫取消し)は遺言にも適用されます。公序良俗に反することや、詐欺取り消しなどを主張することを指摘することで、遺言を無効にすることができます。
③の遺言の証人または立会人の欠格事由は民法に規定されています(974条)。
民法上、証人または立会人になることができないのは㋐未成年、㋑推定相続人およびその配偶者、直系血族、㋒受遺者およびその配偶者、直系血族、㋓公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人です。
これらの者が証人または立会人となっていた場合、遺言は無効となります。
判例では、有効な証人が立ち会っていれば、その他に欠格事由者が立ち会っていても、特段の事情がない限り、方式違反ではないとされています(最三小判平成13年3月27日裁判集民201号653頁・判時1745号92頁・判タ1058号105頁)。

(3)遺言能力と認知症

遺言能力が問題となる際に、特にポイントとなる認知症との関係について、遺産分割専門の遺産相続弁護士が検討します。
遺言を作成するには遺言能力があることが必要です。
遺産相続トラブルにおいて、遺言能力が特に問題となる場面として、認知症が疑われるケースがあります。
重度の認知症で訳が分からないままに作成した遺言は、遺言能力がないことで遺言が無効になります。
もっとも、認知症の進行度合いによっては、日常会話に支障はないが金銭感覚には問題がある場合もありますし、その日その日によって調子の良し悪しが異なる場合もあります。高齢者だから、認知症だからといって、一概に遺言能力を否定してしまうことはできません。
遺産分割専門の遺産相続弁護士からの注意点は、遺言能力の有無は必ずしも、痴ほうや認知症の判断とは一致しないという点です。
遺言能力の判断はどのような観点からなされるのでしょうか。認知症の判断と遺言能力の判断の違いについて遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。
そもそも痴呆や認知症の判断は、精神医学的観点からなされます。
これに対して遺言能力の判断は、精神医学的観点に加え、行動観察的観点からも検討されます。
認知症であっても遺言能力があることはありますし、認知症ではなくても遺言能力がないこともあります。認知症の遺言者が作成した遺言だからといって直ちに無効とならないという点が、遺言能力の問題を検討するうえでの遺産分割専門の遺産相続弁護士が考えるポイントです。
そして遺言能力は法律上の概念なので、あくまでも法律家が判断することであり、医師が判断することではありません。認知症と遺言能力では、判断者も異なりますので、認知症であることがすなわち、遺言無能力であることとは限らないのです。

認知症遺言能力
概念医学上の概念法律上の概念
判断精神医学的観点精神医学的観点+行動観察的観点
判断権者医師法律家
欠けた場合の遺言有効or無効無効

(4)遺言能力の判断基準

認知症の場合の遺言能力について触れましたが、そもそも遺言能力の判断基準は一般にどのようになっているのでしょうか。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明しますと、遺言能力の存否については、①遺言時における遺言者の精神上の障害の有無、内容および程度、②遺言内容の複雑性、③遺言作成の動機・理由、遺言者と相続人または受遺者との人的関係・交際状況、遺言作成に至る経緯などを総合的に考慮して判断されます。

ア ①遺言時における遺言者の精神上の障害の有無、内容および程度

遺言能力を判断するうえで、遺産分割専門の遺産相続弁護士が最も重要な事情と考えるのは、遺言時における遺言者の精神上の障害の有無、内容および程度です。
精神医学的観点からは、精神医学的疾患の有無、内容および程度を検討します。
検討の際に必要となる証拠は、遺言時またはその前後の診断書および長谷川式簡易知能評価スケールなどの精神心理学的検査の結果、担当医師の供述、医療鑑定の結果などです。
行動観察的観点からは、遺言時またはその前後の症状、言動を検討します。
入院診察録(看護記録など)、遺言作成時の状況に関する公証人や立会人の供述、遺言作成御当時の状況に関する家族や担当医師などの供述に基づいて判断することになります。これらの書面を早期に入手して、精神上の障害に関する問題点を遺産分割専門の遺産相続弁護士と検討すべきです。

イ ②遺言内容の複雑性

遺言者に求められる遺言能力の程度を考えるうえで前提となる事情です。
遺言者の精神能力がそれほど高くないにもかかわらず、複雑な内容の遺言を作成している場合、偽造の可能性が高いといえます。

ウ ③遺言作成の動機・理由、遺言者と相続人または受遺者との人的関係・交際状況、遺言作成に至る経緯

直接的ではありませんが、遺言能力の有無の判断材料の1つとなります。
遺言者の日記や、生前の遺言者の生活状況・人間関係についての関係者の供述を元に判断することになります。相続人間で遺産相続トラブルをめぐり対立している場合、遺言者の日記などの資料が相手方の手元にあって自由に見ることができないこともあります。相続人間で直接交渉すると、余計に遺産相続トラブルが紛糾しますから、遺産分割専門の遺産相続弁護士を介して相手方に交渉するようにした方が無難です。

遺産相続弁護士のコラム 本来の遺言はこうあるべき!

認知症の専門医によると、認知症患者に対する意思確認は厳格になされるべきであって、1つの選択肢を示して是認するかどうかという単純な確認は適切ではない。複数の選択肢を示してその中から主体的にどの選択肢が良いかを示させないと、本人の意思とはいえない。現状の公正証書遺言の作成方法は、既に作成済みの案分をその場で初めて確認しているものに過ぎず、遺言者本人の意思を十分に確認しているとはいえないということです。
遺言能力が問題になっている遺産相続事件で、専門医と打ち合わせをしたときに遺産分割専門の遺産相続弁護士が伺った話で、ごもっともです。
現状、公証役場とのやり取りは、家族が代理人として行うことも多く、遺言者本人は作成当日まで遺言内容を了解していないケースもあります。
自分の本当の意思を遺言に残す意味からすると、遺言者には複数の選択肢から自分で選ばせてもよいでしょうし、もっというと文案作成の段階から遺言者本人の意向が反映されていることをしっかり確認した方がよいのかもしれません。
しかし、遺言作成の現場の実情からすると理想論に過ぎません。
遺言作成は遺産相続トラブルを避けるためには重要な対策ですが、なかなかお年寄りは危機意識がないのが現実です。家族が尻をたたいて作成させていることもあり、そのおかげで遺産相続トラブルには発展せずに救われているケースも多いのです。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が見てきた遺言作成の現場の実情からすると、なかなか乗り気ではない遺言者本人を説得して遺言を作成してもらう必要もあります。本人の意向を厳格に確認すると、作成される遺言の数が激減する可能性もあります。
だからと言って、あまりにも遺言作成が儀式化していくのを許してしまうと、不正操作をした者のアリバイ作りに利用される遺言を追認することにもなりかねません。
遺言を自主的に作成する文化がない我が国において、頭の痛い問題であるというのが遺産分割専門の遺産相続弁護士の実感です。

遺産相続弁護士のコラム 証拠収集が肝心

いざ遺言無効確認訴訟を起こすとなった時に必要となってくる書類などは、遺言時またはその前後の診断書および長谷川式簡易知能評価スケールなどの精神心理学的検査の結果、担当医師の供述、医療鑑定の結果、遺言者の日記や、生前の遺言者の生活状況・人間関係についての関係者の供述ですが、この中で医療記録が特に重要となります。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が医療記録の入手方法を段階的に解説します。
医療記録を入手する際に一般的に利用される手続は文書送付の嘱託(民事訴訟法226条)です。
医療記録を入手したうえで証拠化し、検討して主張整理するには相当の時間がかかります。通常、医療記録の送付には1、2カ月かかります。場合によってはさらにかかることもあります。入手した医療記録を遺産分割専門の遺産相続弁護士とともに検討する時間も必要となりますから、早期の段階で入手しておくことが、スムーズな審理のために必要です。
文書の所持者が文書送付の嘱託に応じなかった場合でも、制裁規定はありません。任意に協力してもらえるよう、遺産分割専門の遺産相続弁護士を通じて医療機関に働きかけていくことが重要です。
医療機関が文書送付の嘱託に応じない場合、文書提出命令の申立て(民事訴訟法221条)を検討します。
医療機関が文書提出命令に従わない場合、過料(金銭の徴収)の制裁を科す(同法225条)ことはできますが、医療記録を強制的に提出させる手段はありません。必要な医療記録を入手するためには、医療機関に対する適切な要請が必要となります。
文書送付の嘱託や文書提出命令は、遺産相続トラブルに関する訴え提起後の手段です。
しかし、遺言無効確認請求訴訟で遺言無能力を主張するのであれば、遺産相続トラブルに関する訴え提起前に医療記録を入手して遺産分割専門の遺産相続弁護士とともに検討する必要があります。
そこで、訴え提起前における証拠収集の処分(民事訴訟法132条の4)や弁護士法23条の2による報告の請求、各都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知「診療情報の提供などに関する指針の策定について」(平成15年9月12日医政発第0912001号)に基づいて各医療機関で定められている診療記録の開示手続の活用も検討することを遺産分割専門の遺産相続弁護士の立場からアドバイスします。
遺言無効確認請求訴訟において特に重要な証人は、公証人と担当医師です。これらの者に対して証人尋問する場合の注意点について、遺産分割専門の遺産相続弁護士が実務の状況を踏まえて説明します。
公証人には証言拒絶権が認められていますが(民事訴訟法197条1項2号)、遺言無効確認請求訴訟においてはある程度制限されます(東京高決平成4年6月19日判タ856号257頁)。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が担当医師に裁判の協力を求める場合、一般に多忙である医師を出廷させるのは困難であることが多いため、実務上当該医師を対象として書面尋問(民事訴訟法205条)をしたり、当該医師が所属する医療機関を対象として調査の嘱託(同法186条)を実施したりすることがあります。
医療鑑定の利用が検討されることもありますが、医療記録や他の証拠によって判断ができる場合には必要性が乏しいとして実際には行われません。

(6)証明の難しさ-遺言者本人がいない状況での立証

遺言無効確認請求訴訟の難しいところは、遺言者本人がいない点です。
本人がいない中で本人の過去の遺言作成時の状態について、主張が対立する双方が争うわけですから、なかなかかみ合わないことも多く、水掛け論になってしまうこともあります。
本人がいない以上、遺言作成時の状況や相続人などとの人間関係については客観的な証拠によって立証せざるを得ません。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が考える勝敗を分けるポイントは、当事者のどちらが決定的な証拠を集められるかという点になります。

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