遺産分割対象にならない場合がある財産 -相続財産の確定遺産分割の弁護士
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遺産分割対象にならない場合がある財産相続財産の確定
株式
株式は必ずしも遺産分割協議の対象にはなりません。
株式も預貯金債権と同様、相続分に応じて分割され、必ずしも遺産分割協議の対象にはなりませんが、預貯金債権と同様に一般的には遺産分割協議の中で分割されます。
株式の評価
株式のうち上場株は、取引相場がありますので、客観的な時価が日々明らかにされています。分割時の特定の日、または一定期間を定めて平均を取るなどといった方法で価格を算定することができます。
なお税務上は取引所における時価として、 (1)相続発生日の終値、 (2)相続発生月の終値の平均額、 (3)相続発生月の前月の終値の平均額、 (4)相続発生月の前々月の終値の平均額のうちの 最低価格をとりますので、これも参考になるでしょう。
取引相場の無い株式については、(1)類似業種比準方式(評価する会社と同業種の上場会社の配当金、利益、純資産額を元に計算する方法)もしくは(2)純資産価格方式(会社の資産を相続税評価額により計算し評価する方法)などの方法がありますが、正式には専門家(公認会計士など)の鑑定が必要となります。
ゴルフ会員権
ゴルフ会員権は必ずしも遺産分割協議の対象にはなりません。
ゴルフ会員権の相続の可否は種類によって異なります。会則の中に「会員が死亡したときはその資格を失う」旨の規定があるゴルフクラブの会員権は、相続の対象にはなりません。ゴルフクラブの会員権がもともと、会員相互の人的信頼を基礎とする親睦団体であることが理由です。
相続に関する規定は存在しないものの、会員の地位の譲渡に関する規定が定められている会員権に関しては、譲渡に準ずる手続きを踏むことで相続することができます。この場合、理事会の承認などの名義書換手続きや名義変更ができない期間など、注意すべき点があります。
遺産分割により取得者を確定しますが、ゴルフ会員権は、ゴルフ場施設利用権、入会保証金、返還請求権、年会費の納入義務が一体となった債権債務関係が考えられますので、これらの権利を分割して複数の相続人が取得することはありえません。
ゴルフ会員権の評価
税務上は、取引相場の70%で評価する扱いですが、分割協議にあたっては相場から名義書換手数料を差し引いた額で分割することが多いようです。
PAGE TOP生命保険金
生命保険金が相続財産にあたるかどうかは、受取人が誰になっているかによります。
生命保険は保険会社との契約であり、生命保険に加入していれば死亡によって保険者(保険会社)から保険金が支払われます。
被相続人が自分を受取人とした場合は、その保険契約上の権利は被相続人の財産です。保険金請求権は相続財産となり、遺産分割の対象になります。保険金が支払われた場合は、現金が対象となります。
特定の誰かを受取人に指定した場合は、受取人の固有の権利となりますので、相続財産になりません。(ただし、その受領額は場合により特別受益になるという考えが一般的です。)
受取人を「相続人」と指定した場合は、相続財産ではありません。法定相続分に従って保険金請求権を原始的に取得することになります。
なお、保険金請求権は相続財産ではありませんので、相続放棄をしていても受け取ることができますし、保険金を受け取ったとしても相続放棄ができます。
被相続人が契約者かつ保険料の負担者で、被相続人以外の者が被保険者となっているものは、被相続人の死亡により保険金の支払いはありませんが、保険契約の権利として相続財産に含まれます。積立型の損害保険契約も同様ですので、これらの契約に注意することが重要です。
死亡退職金
死亡退職金は必ずしも遺産分割協議の対象にはなりません。
死亡退職金は支給規定があり、たとえば国家公務員の場合は国家公務員等退職手当法によって、地方公務員は条例によって、会社員の場合は就業規則などによって定められています。これらの規定では通常、遺族の生活保障の観点から民法の相続の規定とは異なり、受給権者の順序が配偶者(内縁も含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹となっていることが多いようです。法令などの支給規定により受給権者が明確に定められている場合は、遺族は相続人としてではなく、受給権者固有の権利として死亡退職金を取得するとされています。
つまり、このような支給規定がある場合の死亡退職金は、相続財産ではないとされています。死亡退職金は特定の者に帰属させる性質のものであるので、相続の対象にはなりません。実質的な理由としては、遺族の生活保障を目的として受給権者の定め方をしていることがあるようで、死亡退職金支給規程等における支給対象の「遺族」について、内縁の妻などの届け出をしていないものの事実上同様の事情にある者も含まれるとされた事例があります。
なお、死亡退職金は特別受益にあたる場合があります。特別受益に当たるかどうかは、事例により判断が分かれています。
形見分けの品
形見分けの品は必ずしも遺産分割協議の対象にはなりません。
形見分けとは、故人の遺品を家族や故人の友人に分ける慣習をいいます。一般的には、アクセサリー、時計、書籍など、故人が大切にしていたものが対象となります。形見分けも一種の遺産分割と考えられますが、慣習上容認される程度のものであれば遺産分割の対象外とされています。ただし、高価な貴金属などの場合は当然に遺産分割の対象となります。
遺産分割の対象になるかどうかの判断は最終的には相続人の協議によります。相続人の1人の勝手な判断による形見分けは、後の遺産分割にも影響する場合がありますので、相続人全員で行うことをお勧めします。
生前贈与
生前贈与は必ずしも遺産分割協議の対象にはなりません。
生前贈与など相続財産に算入されるものがあります。
持参金、新居、道具類、高額の結納、高額の新婚旅行費用などの婚姻のための贈与、養子縁組のための費用、高等教育の学費、家、営業用のトラックなど、生計の資本としての費用に当たる生前贈与は特別受益となります。結納金や結婚式の費用については原則として特別受益にならないと考えられていますが、審判例では共同相続人中に既婚者と未婚者がいる場合には、特に多額ではない結婚式挙式費用も特別受益として考慮すべきであるとしたものもあります。学費に関しても、特に1人だけに高等教育を受けさせる場合は特別受益となるものの、大学進学率が高い現在の状況下では、特別高額の場合を除いて大学の学士程度であれば特別受益に当たらないと考えられていますが、特別受益として認められた場合もあります。
特別受益には、相続開始前1年以内というような規定はなく、すべての特別受益が清算の対象となります。相続人間で話し合いがつかなければ、家庭裁判所への調停の申立てとなります。なお、特別受益にあたるとされても、被相続人が持ち戻しを免除した場合は持ち戻す必要はありません。
生前贈与の評価
生前贈与が特別受益に当たる場合、相続開始時点で持ち戻しの計算を行うことになっています。現金の場合は貨幣変動を考慮した上で相続開始時の貨幣価値で計算します。土地や株式は贈与を受けた後に売却したとしても、現物があるものとして相続開始時の評価額株価で計算します。なお受贈者自身の行為によらず財産が滅した場合(天災などで滅した場合など)は特別受益がなかったものとして扱われます。
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