国際相続とは国際相続の弁護士
国際相続における3つの問題国際相続とは
国際相続というと、一部の人の話であって自分には関係ないと考える方が多いと思います。
しかし、国際相続は意外に身近な問題です。
たとえば、
かつて海外に住んでいた家族が死亡したが、現地の金融機関に口座を残したままだった。
長年日本で住んでいた外国籍の妻が亡くなったが、相続人は誰になるか?
相続人の一人が海外に暮らしていて、連絡が全く取れない。
海外に住んでいた家族が現地で死亡して、現地の法律事務所から外国語の書面が届いた。
海外にある不動産を相続するのに、どこの誰に依頼してよいのか分からない。
日本で成立した遺産分割協議書が海外の財産についても有効なのか?
夫婦共有名義口座を開設していたが、どのように名義を書き換えるのか。
亡くなられた方の財産が海外にある場合、また亡くなられたときに海外に住んでいた場合、さらには、日本国内や海外で外国人の配偶者が亡くなった場合など、相続に関するヒト(=被相続人もしくは相続人など)やモノ(相続財産)の中に、海外に関わるものが1つでもあれば、その相続は国際相続になり得えます。
国際相続の最も代表的なケースは、被相続人が海外に預貯金や不動産などの財産を残して亡くなった場合。相続に関するモノ=相続財産が海外にあるケースです。
また、被相続人が海外在住中に亡くなった場合や相続人の中に海外在住者がいる場合など、相続に関するヒト=被相続人もしくは相続人が海外に住んでいるケース、または亡くなられた方が外国籍もしくは相続人が外国籍の場合、相続に関するヒト=被相続人もしくは相続人が外国人であるケースが、国際相続にあたります。
海外に1つでも財産があれば、また1人でも海外に国籍や居住地がある係る人がいれば、国際相続は他人事ではありません。
一般的な相続の場合、被相続人や相続人、相続財産など相続に関する要素がすべて「日本」であるため、相続手続きは日本の法律に従って進みます。しかし、国際相続となると日本の法律だけででは完結せずに、海外の法律や手続きが関係してきます。
国内外の相続財産や相続人の調査、金融機関の預金等の解約や払戻し手続き、他の相続人との遺産分割協議、遺言執行、遺言の作成等様々な場面で、日本と海外の法律に精通した専門家の法的アドバイスや代理人が必要になります。また、準拠法・外国語の使用・外国弁護士との協力など、いろいろな壁にぶつかることになります。
ただでさえ、手続きが煩雑で面倒といわれる相続手続きがより煩雑になり、時間も費用もかかることになります。
国際相続が複雑となる理由国際相続とは
国際相続が発生した場合、具体的にはどのような問題にぶつかるのでしょうか。
(1)外国語によるコミュニケーション
まず、言葉の壁にぶつかります。
国際相続が発生すると、国外の金融機関、弁護士、会計士などと外国語でコミュニケーションを行う必要が生じます。相続手続きに係る専門用語及びその知識、また交渉事項が生じると、通常の語学力だけでなく、かなり高度なコミュニケーション能力が求められます。英語圏であればまだしも、現地語しか使えない国であれば、必ず通訳が必要になります。また、現地の日本語が通じる専門家に依頼をする必要が生じることもあります。
(2)日本にはない相続手続きの例
日本にはなく聞きなれない手続きに戸惑います。
相続においては日本の手続きでさえ慣れていない方がほとんどですが、国際相続では日本では通常行われることのない手続きが多くあります。本人確認のための公証手続きやプロベート制度など、国際相続には特有の手続きが多く、日本の相続手続きよりも相続人の負担が大きいといえるでしょう。
公証手続き(Notary)
日本の相続手続きにおいては、本人確認書類として実印と印鑑証明書が使われます。有価証券や預貯金、不動産を相続し、名義を変更するためには必ず必要になります。一方、国外のほとんどの国では、印鑑ではなく署名(サイン)を用いるため、日本のような印鑑や印鑑証明書は意味を持ちません。
国外に提出する書類の署名については、本人が署名したことを証明する公証と呼ばれる本人確認手続きを求められる場合がほとんどです。公証手続きとは、「書類と本人署名が真正であること」を証明する手続き、本人が署名したことを公証人が証明する手続きで、現地大使館や領事館などで行うことができます。国外に提出する正式な書面には、署名に加えて、第三者機関による「書類の署名は本物」という確認・認証・公証を求められます。これは、署名が本人のものでない書類を防止するためです。例えば、日本で作成した遺産分割協議書を基に現地で手続きを行う際に、公証を求められることもあります。
このような公証手続きは、日本ではなじみのない手続きのため、相続人の負担はかなり大きいといえます。
プロベート手続き(検認裁判)
プロベート(検認裁判)とは、被相続人が残した財産をどのように分けるかについて裁判所上で決めていく手続きです。遺言書の有効性の確認や、遺産に関係するあらゆる債権債務の関係の確定・清算、相続人の確定と財産の分配までの一連の手続きについて行われます。日本語では検認裁判と訳されるため、日本の遺言の検認手続きと勘違いされる方がいますが、全く性質が異なります。
主に米国、英国、カナダ、オーストラリア、香港、シンガポールなどで行なわれている手続きです。
プロベートによる相続手続きは、日本の相続手続きとは大きく異なり、さらに国や州によって法律が異なり、より複雑な手続きになります。終了までに1年間から3年近くかかる場合もあり、また相当な費用があるため、相続人にとってはかなりの負担になります。
プロベートのデメリット
プライバシーを確保できない
遺言や遺産内容、相続人の情報が公開(一部の州では遺産の明細を非公開)
相続財産の利用・処分制限がある
手続き中、財産は裁判所の監督の下で管理され、
原則、相続人が自由に利用・処分することができない。
高額な費用
プロベート手続きは専門家への報酬金及び費用は終了までに時間がかかるため一般的に高額になる。
複数の裁判所で行う必要がある
複数の州に不動産がある場合は、それぞれの州でプロベートを行う必要がある。
プロベート手続きでは、被相続人の財産はいったん遺産財団となり相続人の手許から離れます。
裁判所から任命された人格代表者が遺言執行者(遺言がある場合)または遺産管理人(遺言がない場合)として手続きを行います。遺産財団の精算手続きを行い、遺言があれば遺言の有効性の確認、相続人の確定、遺産の内容の確認と価値の査定、債権者への公告、借金と税金の精算などが、裁判所の管理のもとで行われます。相続人への最終配分は、すべての手続きが完了した後に、裁判所の許可及び税務当局からの申告書確認作業の終了通知書を受領して初めて可能となりますので、実際に相続財産を手にするのは、相続開始後から相当な期間が経過した後になります。
プロベートの流れ
米国の金融機関に相続手続きを依頼する場合、日本にもプロベートと同様な手続きがあるものと考え、裁判所による人格代表者の任命書や人格代表者による署名などの提出を求めてくることがあります。日本にはプロベート手続きは存在せず、遺産分割をはじめ相続手続きは遺言書または遺産分割協議によって行われることなどを説明して理解してもらう必要があります。知識のない相続人が対応するにはあまりにも複雑な手続きのため、現地の相続手続きにも精通している弁護士に依頼すべき必要があります。
(3)日本と国外の専門家の確保
一番、難しいのは双方に精通した専門家を探すこと!
国際相続の手続きはとにかく複雑です。法律や制度が日本とは全く違うため相続の手続きについて、その国の法律に精通した専門家を探すことが重要になります。
例えば、被相続人、相続人のすべてが日本人かつ日本在住、被相続人の財産が海外にあるケースでは、まず、現地において相続税の課税問題が生じることになります。財産がある国が遺産課税方式を採用していれば、相続税の納税義務が生じることになります。つまり、海外の財産を相続する場合、現地の相続税にあたる税金と日本の相続税の両方が対象となり、手続きが二重に必要となります。
日本においては、相続税の申告・納付期限は相続開始後10ヵ月以内と決まっています。同様にそれぞれの国でも課税が発生する場合は、申告・納付期限までに滞りなく行う必要があります。例えば米国の場合、申告・納付期限は相続開始後9ヵ月以内です。この納税手続きは日本と海外で同時に進めていくことが必要となります。なお、この二重課税に対して「外国税額控除等」を受けられますが、適用を受けるためには、必ず知識のある専門家の手続きが必要になります。
日本における相続税の申告は日本の税理士等が担当することになり、海外の財産に係る課税については、現地の専門家に委ねることになります。その結果、日本と海外との間の連絡を要することになり、さらに、日本と海外との納付期限等に相違があるような場合、その調整に手間がかかるという事態も生じます。
また、米国をはじめとして管理清算主義を採用している国にはプロベート制度があります。このような制度は日本にはないため、日本の専門家も戸惑うといいます。プロベートを採用している国では、日本のような相続人による遺産分割は行われず、相続財産の管理は相続人ではなく、人格代表者(遺言執行者・遺産管理人)の仕事になります。人格代表者が、すべての相続財産を把握したうえで財産目録の作成をして裁判所に提出し、財産の所有権を被相続人から遺産財団に移転、検認裁判所に対する定期的報告、負債への支払と税金の納付、遺産の保護、遺産の分配を行います。
素人の知識だけでは対応することが難しいため、専門家に依頼をする必要がありますが、やはり双方の相続や税務に詳しい専門家に依頼して手続きを進める必要があります。
しかしながら、実際に2つの国に精通した専門家を確保することは容易ではありません。さらに税務に精通した税理士だけでなく、相続手続きに精通した弁護士などの専門家も必要になると考えると、さらにハードルは高くなります。
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