義理の妹が雇った司法書士から書類が送られ、説明もなしに署名を求められている。

義理の妹が雇った司法書士から書類が送られ、説明もなしに署名を求められている。

[投稿日]: [投稿者]:
[サブカテゴリ]:
義理の妹が雇った司法書士から書類が送られ、説明もなしに署名を求められている。

義理の妹が雇った司法書士から書類が送られ、説明もなしに署名を求められている。

相談者からの相談内容

弟の相続についてもめています。 相続人は、弟の妻(義妹)と私を含む弟の兄弟2人です。 ちなみに、私は3人兄弟の長男で、亡くなった弟が次男、もう一人の相続人である兄弟が三男ということになります。 義妹とは、以前から関係が芳しくなく、ほとんど交流がない状態でした。 相続財産としては、大阪と神戸に複数の不動産があり、預貯金はほとんどありませんでした。 義妹と私たち兄弟との間で遺産分割協議を進め、私たち兄弟が相続分を義妹に譲渡するかわりに、義妹からお金が支払われるという内容で話し合いがまとまりました。 不動産の価格を合計し、相続分相当額を私たち兄弟にそれぞれ支払うということになりました。 東京に住む私たち兄弟としては、大阪や神戸の不動産を取得しても困ってしまうので、一応納得できる分割内容であると思いました。   ところが、突然、義妹の司法書士から連絡があり、「相続分譲渡証書」という書面にサインするよう要求してきました。 もちろん、遺産分割の手続きを進めるうえで必要な書類であればサインしますが、送られてきた「相続分譲渡証書」には相続分譲渡するといくら支払われるのか記載されておらず、相続分の譲渡と引き換えにお金が支払われることすら書かれていませんでした。 義妹の司法書士に説明を求めても、「早くサインして送り返してほしい」としか言わず、こちらの質問には答えてくれません。   このまま義妹の言うとおりにしてしまうと、相続分を義妹に譲渡したにもかかわらず、お金が支払われないということにならないか心配です。 たとえお金が支払われたとしても、後々返せと言われないか不安なのです。 どのようにすればよいでしょうか。    
弁護士からの
一言アドバイス
「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
今すぐ弁護士度
簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
解決難易度

まず、確認すべきなのは、譲渡する土地の価値(相続分)と、ご相談者がその対価として取得するお金が釣り合っているかという点です。

不動産の価格を合計して、相続分相当額を算出するということですが、誰がどのような方法で計算し、それが適切なものであるか確認はとれていますでしょうか。

不動産の合計金額を安く計算することにより、相続分譲渡の対価が安く設定されているおそれがあります。不動産価格の評価方法について、再度確認なさることをお勧めいたします。

次に、相続分譲渡証書の記載についてご説明します。相続分譲渡証書は、遺産の分配に関する重要な書面ですので、実態に即した記載をする必要があります。

ご相談者から義理の妹さんに相続分を譲渡するかわりに、義理の妹さんがご相談者にお金を支払うということであれば、有償での相続分譲渡であることを書面に記載すべきです。したがって、有償である旨を記載した証書を改めて作成するよう義理の妹さんに請求する必要があります。

また、相続分譲渡証書は権利関係に関する重要な書類ですから、譲り渡す側と譲り受ける側の双方が書面を所持している必要があります。

つまり、譲渡証書を2通作成し、割印をした上で、それぞれが1通ずつを保管することが一般的です。証書を1通しか作成せず、ご相談者の手元に何らの書類も残らないという状況にならないよう、2通作成することを求める必要があります。

ご相談者としては、義理の妹さんからお金が支払われなかったり、将来的にそのお金を返すよう請求されたりするのではないか、と心配されているようですね。確かに、相続分を無償で譲渡するという趣旨の書面が残るとすれば、約束したはずのお金が支払われないということがあるかもしれません。また、ご相談者が義理の妹さんから受領したお金は、受領する理由のないお金ということになり、義理の妹さんから返還を請求されるおそれがあることは否定できません。このような危険性を考慮すると、譲渡証書にしっかりと「有償」の記載をするよう求めることは非常に重要です。

以上ご説明した通り、①そもそも不動産の評価が適正であるのか確認する必要がある、②譲渡証書には「有償」であることを記載し、記載漏れのない正確な書面にする必要がある、③譲渡証書を2通作成する必要がある、というように、本件では問題の解決までにクリアすべき条件がいくつもあります。

しかも、義理の妹さんには司法書士がついており、法律の専門家である司法書士に対して①~③のような請求をすることはなかなか難しいことです。

しかし、このまま義理の妹さんが要求する通り事を運んでしまいますと、将来に紛争の火種を残すことになります。

こちらが主張すべきことは、しっかりと主張する必要があります。

そこで、法律の専門家である弁護士に依頼し、ご相談者として主張すべきことを代わりに主張してもらうことをお勧めいたします。弁護士が登場すると司法書士としては物事の進め方が慎重になるという効果も期待できます。

したがって、適切に相続分譲渡ができるよう、相続に精通した弁護士に依頼なさることをお勧めいたします。

ここがポイント!

相手方から送られてきた書面にサインを求められたとしても、不明な点がある場合には、サインをすべきではありません。相手方が要求するとおりに事を進めてしまうと、将来に紛争の火種を残すことになりますから、主張すべきことは、しっかりと主張する必要があります。

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

この記事が参考になった方はクリック!

同じカテゴリーの相続相談事例 [カテゴリー:不動産相続編]

2019-08-20[カテゴリー]:
自宅門扉の土地が一部、他人のものだった!【多数の相続人相手の時効主張】
相続に向けての終活をしていて、田舎の一軒家の不動産を売却しようということになりました。 不動産業者にお願いして査定をしてもらったところ、なんと門扉の土地の一部が他人のものであったことが分かりました。 今まで何十年も気づかずに使用していたのですが、買い取って自分のものにしないと売れ…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
【お寺の相続は自由度が低い】寺を継ぐ長男が実家の家の所有権も主張
父の相続が発生して長男が母と私に対して、相続による持ち分を主張しています。 兄は父の寺の後を継ぐのですが、父に自宅取得資金を出してもらっています。 それを考慮すると、父の財産についてはこれ以上もらうことはできないはずです。 ところが、さらに残っている預金について、法定相続分に応じ…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
預金の無断引き出しを問題にする方法
両親が残してくれた不動産について兄弟でもめています。 父は17年前に亡くなりました。 その際の相続では、父の遺産である鎌倉の実家家屋を母が相続し、実家土地を兄と私の2人で相続しました。 自宅土地は兄と私が2分の1ずつ共有ということになりました。 父の死後、母は一人暮らしを…[サブカテゴリー]:
T家の事例:家系図参考になった!10
2019-08-20[カテゴリー]:
妹が遺言のあいまいな文言を盾に、約束を守らない。
1年前に父が亡くなりました。 母はすでに他界しており、相続人は私と妹の2人です。   父は遺言を残しており、その遺言には「私の死後、自宅を売った場合には、長女に7割、次女に3割の割合で分配することとします」と書かれていました。 私としては父の意思…[サブカテゴリー]:
S家の事例:家系図参考になった!5
2019-08-20[カテゴリー]:
亡夫のお金で購入した息子名義の財産について、相続財産に含まれることを認めさせたい…
夫が亡くなって相続が発生したのですが、息子と対立しています。 相続人は妻の私と息子、娘なのですが、息子と私たち母娘は仲が悪く、対立しています。 息子名義の不動産などの財産があるのですが、実際はお金を私たち両親がねん出していました。 最初は息子も不動産は自分のもの…[サブカテゴリー]:
T家の事例:家系図参考になった!6

参考にしたい相続関連記事

2018-08-06
【生前贈与の活用において注目される生命保険】生命保険を活用した相続税の節税対策
近年、学生の就職活動を意味する「就活」ならぬ、人生の終わり(最期)を迎えるための準備活動を略した「終活」が、ちょっとしたブームになっています。具体的には、自分の葬儀や墓の準備をしたり、子供た…
2019-08-19
国際相続におけるプロベート
1 国際相続に備えておくべきこと国際相続におけるプロベート 海外に財産を所有されている方は、将来相続が発生した場合についてあらかじめ備えておく必要があります。また死亡時(…
2020-03-23
Q71.産分割調停の進行
相続人と相続財産の範囲の確定が先行。 遺産分割調停に臨む当事者は、色々なことを主張する可能性がある 寄与分の主張や特別受益の主張、不動産価格についての意見など…
2019-08-19
2. だれが相続人になるのか? -遺言作成の準備の仕方
2 だれが相続人になるのか?遺言作成の準備の仕方 誰があなたの相続人になるのかを知りましょう。 まず自分の家系図を作成し、相続人リストを作りましょう。家系図は自分や子…
2019-08-19
贈与編
1 暦年贈与の利用 贈与税は相続税に比べて税率が高く設定されています。 一般的に贈与は、夫から妻、妻から夫などの夫婦間や、親子間、祖父母から孫へ行われるもので、仮にこの贈…
2014-04-25
相続の抜け穴 遺言の落とし穴
相続関連書籍『相続の抜け穴 遺言の落とし穴』の内容紹介 事実婚の場合の相続は? 震災復興の遅れの原因は相続? DNA鑑定で親と血がつながっていないことが分かったら? 実用書にはのっていな…
ページトップへ

カテゴリ別 相続相談一覧これまで弁護士に寄せられたカテゴリ別相続問題

遺 言
遺言無効を争う
遺留分を争う
  • 遺言無効
    確認訴訟
  • 遺留分
    減殺請求
  • 遺言執行者
    解任
だましうちで遺言を書かせる。財産の不正操作の常とう手段です。遺言無効確認の訴えや、遺留分減殺請求などにより、財産の不正操作と戦います。
遺産分割
財産の不正操作に
要注意!
  • 預金の
    無断引出
  • 名義の
    無断書換
預金を勝手に引き出したり、不動産の名義を勝手に書き換える。財産の不正操作と徹底的に戦う覚悟がある方のお力になります。
不動産相続
評価や分け方で
モメる不動産相続
  • 評 価
    トラブル
  • 分 割
    トラブル
  • 不動産の
    不正操作
分けられない財産の典型である不動産。不動産の評価について相続人間でモメます。そもそも不動産が相続財産かどうかも問題になります。不動産を独り占めする財産の不正操作と最後まで戦います。
事業承継
同族会社の
内部紛争に勝つ!
  • 取締役の
    不正追及
  • 株主総会
    の形骸化
同族会社の内部紛争や支配権争いでお悩みの方のお手伝いをします。事業を営む方の相続問題は通常の相続以上に複雑です。会社の支配権を勝ちとり、事業を守り抜きます。
国際相続
国外財産があると
どうなるの?
  • 海外財産
  • 海外在住
  • 国際結婚
相続財産が海外にある場合、手続きが複雑になります。国内財産の分け方も絡む紛争を総合的に解決します。
相続税
節税対策の
ポイントを知りたい
  • 税務調査
  • 税務訴訟
  • 相続税の
    還付
生前にどれだけ詳細にシミュレーションすることができたかで、相続税対策は決まります。遺言内容にも影響しますので、多方面からの検討をする意味でも弁護士兼税理士にお任せ下さい。