遺言無効確認訴訟の勝訴見込【吟味すべき証拠】

遺言無効確認訴訟の勝訴見込【吟味すべき証拠】

[投稿日]: [投稿者]:
[サブカテゴリ]:

遺言無効確認訴訟の勝訴見込【吟味すべき証拠】

相談者からの相談内容

父が亡くなり、遺産分割調停を母と兄が申し立ててきましたが、取り下げられました。 取り下げる際に、唐突に遺言の存在を明かされました。 自筆証書遺言で、不動産について母に相続させるというものです。 筆跡は確かに父のもののように見えるのですが、おぼつかない筆跡です。 主治医は自分で判断できた状態ではないだろうと言っています。 水頭症を患っている認知症で、長谷川認知症テストでは遺言作成の1年前で17点。 遺言作成1月前でMMSEで16点。 自分が市役所にいるような言動を入院先の病院でしていました。 短期記憶も問題があるとのことでした。 遺言無効確認訴訟の提起を検討していますが、できればある程度の勝訴見込を検討してから考えたいと思っています。 相談している弁護士によると、遺言無効確認訴訟を提起している過程で、被告が折れてくる可能性もあるので和解で終わることも見越した遺言無効確認訴訟の提起もあり得るとのことです。 ただ兄と母の性格からして、なかなか妥協はしないだろうと思っています。 どの程度の資料を検討すれば、遺言無効確認訴訟の見通しが立つでしょうか。
弁護士からの
一言アドバイス
「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
今すぐ弁護士度
簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
解決難易度

遺言無効確認訴訟の勝訴見込は図りずらい

遺言無効確認訴訟はそもそも勝ちづらいというのが一般認識です。
本件の場合は自筆証書遺言とのことですが、公正証書遺言の場合はなおさらです。
ただし近年、公正証書遺言でも遺言無効となるケースもあり、状況が流動的です。
認知症テストや公正証書遺言であるという一事だけではなく、細かな非類型的な事情を総合考慮したうえでの判断という要素が強くなってきました。
公正証書遺言についてもむしろ自筆証書遺言の方が、筆跡などの要素から遺言作成者の真意に基づくかどうかを正確に判断できると考えることも可能です。
自筆証書遺言か公正証書遺言かでどちらが無効となりにくいかは、状況や遺言の状態、内容等によって相対的に変わってきます。
証拠としては認知症テストが重要です。
また手紙や日記などの継続的に作成した遺言者本人の手記も影響を与えます。
カルテももちろんですし、医師の診断書、陳述書なども重要になります。
自治体の介護認定調査票も確認しておきたいところです。
弁護士の先生が言われているように、遺言無効確認訴訟の中での和解も1つの考え方です。
しかし弁護士の中には遺言無効確認訴訟は勝てないのだから妥協する必要はないと考える方が多いと思います。
そうなるとどれだけの妥協を引き出せるかは未知数です。
裁判官の和解勧告もどこまであるかわかりません。
一般的には遺言無効確認訴訟で負けてしまうと、その後に遺留分の裁判が待っています。
遺産分割調停もあり得るでしょう。
長くなってしまうので、その覚悟は必要になります。
疲弊を避けて短期決戦ということであれば、遺言無効確認訴訟を起こすかどうかを慎重に検討してもよいと思います。

ここがポイント!

遺言無効確認訴訟を起こす前の検討

介護認定調査票や診断書、認知症テスト、遺言者本人の手記など。

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

この記事が参考になった方はクリック!

同じカテゴリーの相続相談事例 [カテゴリー:遺言編]

2019-08-20[カテゴリー]:
【遺言者本人の意向確認】遺言無効確認訴訟を検討したい
父が亡くなり、兄と相続でもめています。 父の遺言が見つかったのですが、生前に聞いていた父の意向とは大きくかけ離れています。 不動産を私に相続させると言っていたにもかかわらず、実際には遺言で兄が相続することになっています。 また相続財産のほとんどを兄が相続する内容の遺言になっていま…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
なんと遺言は2通あった!2通目の遺言の有効性が怪しい。
先日、父が亡くなりました。母は10年前に亡くなっていますので、相続人は長女である私、次女(妹)、長男(弟)の3人です。 母が亡くなった直後、私は父から遺言を作ったと聞きました。 長年連れ添った母が亡くなり、これからのことが不安になったため、遺言を作成したとのことでした。 そ…[サブカテゴリー]:
O家の事例:家系図参考になった!8
2019-08-20[カテゴリー]:
【夫婦で遺言を作成とき】どちらの相続を先に想定するか?
妻とともに夫婦で遺言を作成しようと思っています。 相続税のことも考えて、配偶者特例も利用しながら相続の配分を検討しています。 妻の方が元気なので、長生きするはずですから、私の財産を妻にまず相続させて配偶者特例を利用するつもりです。 そのほかにも居住用不動産を妻に贈与することも考え…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
【遺産分割調停が継続中に遺言を発見】相続開始からだいぶ経って遺言が出てきた
現在、遺産分割調停中です。 遺言を作成していない状態で相続が発生し、遺産分割調停が継続していました。 遺産分割調停も1年以上続いており、争点も少なくなく、難航していました。 ところが先週、なんと遺言が発見されました。 相続人の誰もが想定していなかった遺言です。 遺言内容は相続人の…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
認知症の祖父との贈与契約
認知症の祖父との間で贈与契約を締結しました。 その後まもなく祖父は亡くなり、相続が発生しています。 祖父が亡くなったことで相続人となったおじが、祖父との間で交わした贈与契約の有効性を問題にしています。 遺言の有効性が問題になることはよくありますが、贈与契約も問題になるのでしょうか…[サブカテゴリー]:

参考にしたい相続関連記事

2019-08-19
知識の解説
遺産分割トラブルのポイントや遺産分割に関する法律用語の解説を紹介しています。 相続人・相続分の確定 遺産分割に…
2019-05-14
【不動産の市場価値を高めるのみならず、税制上のメリットも】借地権と底地を交換して…
不動産相続で問題となる借地権と底地の交換 使用貸借というのは親子や兄弟、親族同士など、貸主と借主がとても親しい間柄の場合によく見受けられる貸借関係です。一般的に多い土地の貸借関係といえば、…
2019-10-10
Q24.経営者の相続対策において、後継者の指名はいつ行うべきか
後継者は指名だけで解決しないので、会社の運営を考えて早期に指名すべき。規模にもよるが十年単位で考えるべき。 遺言を書いたことを大っぴらにすべきであるという意見がある。弁護士…
2019-08-19
現物分割 -遺産分割の方法
現物分割遺産分割の方法 現物分割とは、遺産をあるがままの姿で分割する方法で、分割の原則的方法です。例えば、「甲にはA土地を、乙にはB土地を、丙にはC土地を取得させる。」という…
2019-12-24
Q42.遺言を書き直したいのだが
定期的に書き直す場合、日付と今までの遺言を無効にする旨は忘れずに 遺言の書き直しは是非行うべきである その時に注意することとして、新しい遺言は必ず古い遺言に優先するとは限らな…
2019-10-26
ステークホルダーとの良好な関係を最優先に【佐川急便】
株を買い増して株主としての支配力を徐々に強める 光氏の代表権を剥奪し、クーデターを企てた旧経営陣の有力者である副社長2人を解任したのは見事であった。カリスマ経営者である清氏も2002年に亡…
ページトップへ

カテゴリ別 相続相談一覧これまで弁護士に寄せられたカテゴリ別相続問題

遺 言
遺言無効を争う
遺留分を争う
  • 遺言無効
    確認訴訟
  • 遺留分
    減殺請求
  • 遺言執行者
    解任
だましうちで遺言を書かせる。財産の不正操作の常とう手段です。遺言無効確認の訴えや、遺留分減殺請求などにより、財産の不正操作と戦います。
遺産分割
財産の不正操作に
要注意!
  • 預金の
    無断引出
  • 名義の
    無断書換
預金を勝手に引き出したり、不動産の名義を勝手に書き換える。財産の不正操作と徹底的に戦う覚悟がある方のお力になります。
不動産相続
評価や分け方で
モメる不動産相続
  • 評 価
    トラブル
  • 分 割
    トラブル
  • 不動産の
    不正操作
分けられない財産の典型である不動産。不動産の評価について相続人間でモメます。そもそも不動産が相続財産かどうかも問題になります。不動産を独り占めする財産の不正操作と最後まで戦います。
事業承継
同族会社の
内部紛争に勝つ!
  • 取締役の
    不正追及
  • 株主総会
    の形骸化
同族会社の内部紛争や支配権争いでお悩みの方のお手伝いをします。事業を営む方の相続問題は通常の相続以上に複雑です。会社の支配権を勝ちとり、事業を守り抜きます。
国際相続
国外財産があると
どうなるの?
  • 海外財産
  • 海外在住
  • 国際結婚
相続財産が海外にある場合、手続きが複雑になります。国内財産の分け方も絡む紛争を総合的に解決します。
相続税
節税対策の
ポイントを知りたい
  • 税務調査
  • 税務訴訟
  • 相続税の
    還付
生前にどれだけ詳細にシミュレーションすることができたかで、相続税対策は決まります。遺言内容にも影響しますので、多方面からの検討をする意味でも弁護士兼税理士にお任せ下さい。