なんと遺言は2通あった!2通目の遺言の有効性が怪しい。
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なんと遺言は2通あった!2通目の遺言の有効性が怪しい。
相談者からの相談内容
先日、父が亡くなりました。母は10年前に亡くなっていますので、相続人は長女である私、次女(妹)、長男(弟)の3人です。 母が亡くなった直後、私は父から遺言を作ったと聞きました。 長年連れ添った母が亡くなり、これからのことが不安になったため、遺言を作成したとのことでした。 その際父は、自分が死んだ後のことは長女である私に任せ、財産を受け継いでもらいたいと考えているから、遺言にもそのように書いたと言っていました。 また、遺言の写しがしまってある場所も来ており、実際に父が亡くなった後にその場所を確認すると、父が言ったとおりの遺言が保管されていました。 父の49日の法要の後、他の親せきが帰ってから、妹と弟に父の相続の話をしました。 というのも、相続税の支払い期限が10か月以内であると聞いたものですから、早めに相続の手続きを進めなくては間に合わなくなってしまうと思ったのです。 父は自宅の他に複数の不動産を所有しており、賃貸業を営んでいましたので、相続税の負担も心配でした。 父は遺言を作成しており、内容はすべての財産を私に相続させるというものであると伝えたところ、弟が思ってもみなかったことを言いだしました。弟も父の遺言を預かっているというのです。 遺言の作成日は父が亡くなる2か月前で、その内容は弟にすべての財産を相続させるというものとのことでした。弟はその遺言を持っていなかったので、直接確認することはできませんでしたが、弟は勝ち誇ったような顔をしていました。 私はどうすればよいかわからず、その日はとりあえず散会することにしました。 帰宅後、父の生前中のことをいろいろと思い出してみると、弟の行動で気になることがありました。 弟は大学入学と同時に実家を出ましたが、全く帰省もせず、母が病気で倒れた時も数回お見舞いに来ただけでした。 その弟が、父が亡くなる半年ほど前から、父が入所していた老人ホームを頻繁に訪ねるようになったのです。 父を大切にしようとする気持ちが芽生えたのかと思い、うれしく思っていたのですが、どうやら父を懐柔して遺言を書かせていたようです。 また、弟が主張する遺言の作成日のころは、父の痴呆の症状も進んでおり、とても遺言を作成できるような状態ではなかったと思います。 不信な点はたくさんありますが、具体的にどのように動けばよいのかわかりません。 これからどうすればよいのか、専門家である弁護士に相談したいです。- 弁護士からの
一言アドバイス - 「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
- 今すぐ弁護士度
- 簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
- 解決難易度
遺言無効確認訴訟は証拠収集がポイント、まずは弁護士に相談することが重要
遺言が複数存在し、その有効性が問題となっているようです。
複数の遺言が存在した場合、内容が矛盾する点については新しい遺言が効力を有することになります。従いまして、まずは弟さんがお持ちの遺言の内容を確認する必要があります。
弟さんがお持ちの遺言は公正証書遺言なのでしょうか。公正証書遺言でしたら、公証役場で遺言の写しを入手することができます。
どこの公証役場で作成したのかわからない場合であっても、最寄りの公証役場でお父様が遺言を作成しているかどうかを確認することができます。
弟さんがお持ちの遺言が公正証書遺言ではなく、自筆証書遺言である場合であっても、相続人であるご相談者には遺言を確認する権利があります。
自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所における検認手続きが必要となりますので、その検認手続きに参加して遺言の内容を確認することができるのです。
検認手続きの日時は、家庭裁判所から相続人全員に対して通知されます。
次に問題となるのは、当該遺言自体の有効性です。ご相談者が不信に思われているように、お父様に遺言を作成する能力(遺言能力)があったのかどうかがポイントとなるでしょう。遺言能力を争うためには、最終的には地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起することになります。
遺言能力の存否については、①遺言時における遺言者の精神上の障害の有無、内容および程度、②遺言内容の複雑性、③遺言作成の動機・理由、遺言者と相続人または受遺者との人的関係・交際状況、遺言作成に至る経緯などを総合的に考慮して判断されます。
遺言無効確認訴訟の難しいところは、遺言者本人がいないところです。
遺言作成時の状況や相続人などとの関係性について争うことになりますが、本人がいない以上、客観的証拠から立証するしかないのです。
従いまして、当事者のどちらが決定的な証拠を集められるかが、勝敗を分けるポイントとなります。このように、遺言無効確認訴訟は証拠収集がポイントとなるうえ、極めて専門性の高い訴訟といえますから、専門家である弁護士に相談したうえで早期に動き出すことをお勧めします。また、遺言無効確認訴訟を提起する際には、予備的に遺留分減殺請求も忘れずに行っておくようにしましょう。
ここがポイント!
複数の遺言が存在する場合、手続きや争い方が複雑になる事も。早期に弁護士に相談し、解決に向け動き出しましょう。
複数の遺言が存在する場合は、手続きや争い方が複雑になる場合がありますので、専門家である弁護士に相談したうえで、早期に動き出すことをお勧めします。
また、念のため遺留分減殺請求も忘れずに行いましょう。
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