亡母と同居していた弟が受けていた生活援助と預金の使い込みについて追及したい。

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亡母と同居していた弟が受けていた生活援助と預金の使い込みについて追及したい。

相談者からの相談内容

94歳の母が亡くなりました。父はすでに亡くなっており、相続人は私と弟の2人です。 独身の弟はずっと実家暮らしで、公務員をしています。 千代田区にある母名義の土地に、弟名義で家を建てて母と弟が同居していました。 弟曰く、家は自分一人の力で建てたもので、母には一切援助してもらっておらず、ローンも一人で完済したとのことですが、母の生活費として毎月50万円を家計に入れてもらっていたそうです。 母は68歳まで会社経営をしておりましたし、アパートも数棟所有しており賃貸経営もしておりましたので、お金には不自由していませんでした。   しかし、母が亡くなった際には、母の口座には数十万円程度しか入っておらず、相当程度あるはずのお金がどこに行ってしまったのか不明です。 母は倹約家で、目立った贅沢はしていなかったと思います。 弟に問い質しても、「知らない」の一点張りで、不信感を抱くようになりました。 母が弟に毎月渡していた50万円について、弟の特別受益であると主張することはできるのでしょうか。 また、母の口座のお金の流れを調べることはできるのでしょうか。   母の婚礼家具についても弟ともめています。 母の婚礼家具は、古いものではありますが、母との思い出の家具ですから、私が相続したいと考えていますが、弟は、母と一緒に暮らしてきたのは自分であるから自分が相続すると言って譲りません。母の婚礼家具は弟のものとなってしまうのでしょうか。   母が亡くなるまでは弟と良好な関係を築いてきたつもりですが、今回の相続をきっかけに、弟のことを信じることができなくなってしまいました。弟と遺産分割の話をすると、気が滅入ってしまいます。 弟は弁護士を立てると言っていますが、これからどのように進めていけばよいのでしょうか。    
弁護士からの
一言アドバイス
「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
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解決難易度

まず、弟さんが毎月50万円をお母様から受け取っていた点ですが、相続人が被相続人から「生計の資本として」贈与を受けていた場合、その贈与は特別受益にあたると定められています。相続分を前渡ししたといえる程度に高額な金銭が贈与された場合、その贈与は特別受益にあたります。一方で、扶養として金銭を支出していた場合や、小遣いとして金銭を渡していた場合には特別受益にあたりません。

今回のケースでは、弟さんは公務員として生計を立てており、お母様に扶養されていたという事情はありません。また、1か月あたり50万円を渡すということは、親から子への小遣いとは認められにくいでしょう。したがって、特別受益にあたる可能性があります。

しかし、弟さんとお母様が同居されていたということですから、50万円のうち一定程度はお母様ご自身の生活費として使われていたはずです。そうすると、50万円のうち、お母様ご自身の生活費に充てられていた分は弟さんへの贈与にあたらず、特別受益に該当しないことになります。つまり、50万円のうち弟さんが実際に自由に使えた金額のみ特別受益にあたることになります。そこで、食費、公共料金、通信費、交際費等、お母様が生活費として1か月あたりどの程度の額を必要としていたのか概算する必要があります。

また、弟さんが独力でローンを完済したと主張している住居の原資についても、50万円の一部から支出している可能性は否定できませんので、弟さんの通帳等を確認する必要があります。もっとも、弟さんと任意で話し合いをしている間は、弟さんが素直に通帳の履歴を開示する可能性は低いでしょう。

そこで、裁判所の調停手続を利用し話し合いに必要な資料を弟さんから全て提出させることが適切です。自ら調停手続に臨む方もいるようですが、調停は多くの時間と労力を要する煩雑な手続ですので、ご相談者も弁護士を立てた上で調停の申し立てをすることが最も適切であると考えられます。

お母様の預金口座のお金の流れについてですが、相続人であるご相談者は、お母様の預金口座の取引履歴を調査することができます。

照会結果が出るまでには、通常時間がかかりますので、すぐに取り掛かりましょう。不審な引き出しが見つかった場合には、弟さんに説明を求めるべきです。

最後に、お母様の婚礼家具が弟さんのものであるかという点についてですが、結論から申し上げれば、当然に弟さんが婚礼家具の所有権を取得するわけではありません。婚礼家具はもともとお母様が単独で所有されていた物ですから、遺産に含まれます。

この点について弟さんと話し合いをしていく必要がありますが、これまでの経緯を考えると、婚礼家具についてもすんなりと決着がつく問題ではないと予想されます。話し合いに要する労力や、相続に関する知識・経験の差を考えると、ご相談者も弟さんと同様に弁護士を立てた方がよいでしょう。

ここがポイント!

特別受益や相続財産の使い込みが問題となるケースでは、相手方の財産状況も問題となります。相手方が積極的に資料を開示することが望めない場合には、訴訟提起や調停申し立てを検討しましょう。

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

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