書き直された遺言の有効性を争いたい。

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書き直された遺言の有効性を争いたい。

相談者からの相談内容

祖父が亡くなりました。 祖父には3人の子どもがいましたが、長男である私の父は既に他界しています。祖母は20年前に亡くなっているので、祖父の相続人は、二男とそして孫である私たち兄弟の3人です。 私の家系は代々医師として医療に携わっており、祖父は病院を経営していました。ちなみに、私も医師として他の病院で働いています。 祖父の遺産は、病院の土地と現預金や株などを合わせて5億円程度です。 祖父は今後の病院経営のことを憂慮し、遺言を残していました。祖父の二男である叔父から見せられた遺言には、祖父の財産のほぼ全てを叔父に相続させるという内容になっていました。この遺言は父が亡くなった後に書かれたもので、私たち兄弟には遺留分相当額と思われる金額の現金のみを相続させる内容でした。 しかし、遺言の内容を見て疑問に思いました。というのも、祖父と叔父は病院の経営方針を巡って意見が対立し、叔父は祖父の病院から追い出される形で、他の病院に移籍したという経緯があるのです。私の母も医師であり、祖父の病院に勤めているのですが、祖父と叔父の確執を詳細に覚えていました。 また、15年ほど前、祖父の病院の経営が一時的に悪化した際、病院が2億円の借金を抱えたのですが、そのときに保証人となっていた父が2億円全額を返済しました。父は、休む暇もなくまさに死に物狂いで働いていましたから、体調を崩してしまいました。一方、叔父は一切協力することなく、保証人になることも拒否したのです。 このような事情から、祖父は父のことを後継者として重要視するようになり、病院や祖父の財産をすべて父に託したいと言っていました。実際、父が亡くなるまでは、祖父の財産のほぼ全てを父に相続させるという内容でした。 父が亡くなったからといって、祖父に不義理を働いた叔父にすべての財産を相続させるという遺言を祖父が書くとは思えません。 この第2遺言が作成されたのは、祖父が亡くなる10カ月前なのですが、祖父は2年ほど前から認知症の症状がひどくなっており、私たちのこともわからないような状態でした。そのような祖父が、遺留分に配慮した遺言を作成できるとは思えないのです。 病院や祖父のために、命を捧げて働いてきた父にためにも、第2遺言は無効であると証明したいと考えていますが、どのように戦えばよいでしょうか。
弁護士からの
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第2遺言作成当時の遺言能力について調査するとともに、借金返済の事情も調査すべき

書き直された遺言の有効性が問題となっています。
遺言能力の有無を判断するには、遺言作成日当日の遺言者の状態を確認することができる資料をどれだけ多く収集することができるかがポイントとなります。診療記録はもちろんのこと、介護日誌や介護認定調査票なども入手する方がよいでしょう。おじい様は認知症であったということですから、どの程度症状が進んでいたのか、日々どのような状態であったのかについて詳細に検討する必要があります。
公正証書で遺言を作成している場合には、公証役場に問い合わせて、担当した公証人に話を聞いてみるのもよい方法です。公証人は遺言作成の依頼を受けた際、独自の手控えメモを作成していることが多いそうです。その手控えメモに作成に至る経緯や作成当時の遺言者の様子が記載されていることもありますから、確認しておくとよいでしょう。
また、公正証書遺言に記載された遺言者の署名を確認してみることも考えられます。その署名がしっかりした字体で書かれたものであれば問題ないのですが、いかにも弱々しい字体であった場合には、本当に遺言を作成する能力があったのか疑問を投げかけることができる場合もあります。
遺言が書き直された場合、最初の遺言と次に作成した遺言とで、その内容が大きく異なる場合には、その変遷に合理的な理由があるかについて検討することになります。
ご相談者のケースでは、確かに相続するはずであったお父様が亡くなられたという事情がありますから、お父様の代わりに叔父様がすべての財産を相続するという遺言内容であるのが合理的であるとも考えられます。
もっとも、遺言者であるおじい様と叔父様との間には確執があり、おじい様が叔父様を自分の後継者に指定することは考えにくいという事情があります。また、お父様が身を粉にして働かれて、2億円もの病院の借金を返済したことから、おじい様にとってお父様は特別な存在であったという事情もあります。こうした事情を考慮すると、おじい様としては、自分の後継者としてすべての財産を相続させたいと考えるのは、叔父様というよりもお父様の子どもであるご相談者ともいえるかと考えられます。そうすると、第1遺言から第2遺言への変遷が、必ずしも合理的ではないと考えることもできるのです。
お父様による借金返済についても、情報収集が必要となります。債務者は病院なのか、それともおじい様なのか、保証人として誰が名を連ねていたのか等について、債権者である金融機関に確認する必要があります。これらの事情次第で、借金返済分を請求することができるか否か、できる場合にはどの程度請求することができるのかが変わってくることもありますから、詳細な事情を確認する必要があるでしょう。

ここがポイント!

遺言を作成した公証人に連絡をとり、作成当時の状況を確認することも必要です。

遺言が書き直された場合には、変遷内容や書き直された経緯を確認する必要があります。遺言作成当時の遺言者の状況がポイントとなりますから、遺言作成を担当した公証人に連絡をとり、話を聞いてみることも重要です。

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

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