無理やり書かされた遺言を書き直し、自分で財産を管理したい。

無理やり書かされた遺言を書き直し、自分で財産を管理したい。

[投稿日]: [投稿者]:
[サブカテゴリ]:

無理やり書かされた遺言を書き直し、自分で財産を管理したい。

相談者からの相談内容

先日、父が持病の心臓病が悪化し、緊急入院しました。 入院前、父は母と二人暮らしで、近所に住む兄が時折面倒を看ていました。私も両親の面倒を看たいのですが、兄から「実家に来るな」と言われており、自由に両親に会うことができない状態が続いていました。 父が入院する際、兄は「父親の財産管理は、今後一切自分が行うから、口を出すな」と宣言して、実家から父親の通帳や印鑑を勝手に持ち出してしまいました。 後で母親に確認してわかったことなのですが、父は2年前に、兄に言われて遺言を作成したらしいのです。母もその遺言を見たことはないと言っていますが、遺言の内容は「両親のすべての財産を息子に相続させる」というものであると父から聞いたとのことでした。父の看病は、主に兄嫁が行っていますが、どの程度看てくれているのか心配です。というのも、以前両親から、兄嫁は何もしてくれないうえ、自分たちからお金を取り上げようとすると聞いていたからです。 父は現在、意識がはっきりしていない状態が続いており、こちらからの問いかけには応じてくれますが、積極的に意思表示をすることは難しい状態です。 母としては、父の財産管理についても何とかしたいのですが、まずは父が作成してしまった遺言を書き直してもらいたいと考えているようです。また。この父の遺言の中で、母自身の財産の分け方についても決められていることから、せめて自分の部分だけでも書き直したいと言っていました。両親の子どもは私と兄の2人なのですが、母としては、横暴な態度をとる兄には相続させたくないと考えているようです。実家の名義は、土地及び建物ともに母名義ですから、兄には相続させないとなると、兄が何か言ってくるのではないかと不安に思っています。 兄は、母の財産についても自分が管理するから、通帳や印鑑を渡すように要求しています。連日のように兄や兄嫁から電話やメールが来ますので、私も母も疲弊してしまっています。父だけではなく、母も体調を崩して入院してしまわないか心配しています。 弁護士に相談することで解決するのでしょうか。
弁護士からの
一言アドバイス
「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
今すぐ弁護士度
簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
解決難易度

親族が威圧的な態度をとる場合、弁護士を連絡窓口とするのがポイント

お兄様夫婦によるご両親の囲い込みが問題となっているようです。
お近くに住まわれていたお兄様が、実質的にご両親の財産を管理し、ご両親が自由に自分の財産を使用することができなくなってしまうケースです。
今回、お父様が入院されたことを契機に、お父様の財産をお兄様が管理するとの宣言がなされたそうですが、実際にはそれ以前からお兄様夫婦による管理が行われていたことも考えられますから、注意が必要です。お父様の通帳はお兄様の手元にあるとのことですが、少なくともお母様の通帳については、お母様ご自身で管理され、これまでに不明な出金等がないか一度確認しておく方がよいでしょう。
お父様の遺言ですが、現在のお父様のご病状を考慮すると、書き直すことが難しい場合もあるかと考えます。遺言作成のためには、遺言能力が必要となりますが、意識がはっきりしない状態が続いていらっしゃるとのことですので、現段階では遺言能力がないとされてしまう可能性も否定できません。
今後意識が回復された場合に、遺言の書き直しを検討されるにあたっては、主治医に診断書の作成を依頼するなどして、お父様が遺言能力を有していらっしゃることを明確にしてから作成する必要があります。
お父様の遺言には、「両親のすべての財産」をお兄様に相続させると記載されているとのことですが、少なくともお母様の財産については、お父様の遺言で処分方法が決まってしまうことはありません。お父様にはお母様の財産について処分権限はありませんので、お父様の遺言によって、お母様の財産の帰属が決められることはないのです。
また、仮にその遺言にお母様の署名があった場合には、その遺言は無効となります。夫婦であっても、2人で一通の遺言を作成することはできないのです。
以上のように、お母様の財産について処分方法が決められているわけではありませんので、お母様が元気なうちに、お母様ご自身の遺言を作成しておく方がよいでしょう。遺言を作成する際には、ご相談者とお兄様との間の争いを事前に回避するために、遺留分にも配慮した内容の遺言とすべきです。
お兄様夫婦からの連絡により、ご相談者やお母様が疲弊していらっしゃるとのことですが、家族間のやり取りでは遠慮もなく言いたい放題になってしまうケースも多くあります。優位に立つために、わざと威圧的な態度をとる方もいるようです。
お兄様夫婦との交渉の窓口に弁護士が立つことにより、ご相談者やお母様が直接お兄様夫婦からの連絡を受けることがなくなるので、精神的負担は軽減されることになります。また、他人である弁護士が連絡窓口になると、今までの高圧的な態度が軟化することも考えられます。

ここがポイント!

遺言書き直しの先の遺言能力が問題となることも。交渉窓口は弁護士とすべきケースもあります。

遺言の書き直しをする際には、書き直し当時の遺言者の遺言能力が問題となりますので、後に問題とならないように対策を講じる必要があります。
威圧的な態度をとる親族に対する交渉や連絡は、弁護士を介して行った方がスムーズに行うことができ、精神的負担も軽減することができます。

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

この記事が参考になった方はクリック!

同じカテゴリーの相続相談事例 [カテゴリー:遺言編]

2019-08-20[カテゴリー]:
遺言無効確認訴訟の勝訴見込【吟味すべき証拠】
父が亡くなり、遺産分割調停を母と兄が申し立ててきましたが、取り下げられました。 取り下げる際に、唐突に遺言の存在を明かされました。 自筆証書遺言で、不動産について母に相続させるというものです。 筆跡は確かに父のもののように見えるのですが、おぼつかない筆跡です。 主治医は自分で判断…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
なんと遺言は2通あった!2通目の遺言の有効性が怪しい。
先日、父が亡くなりました。母は10年前に亡くなっていますので、相続人は長女である私、次女(妹)、長男(弟)の3人です。 母が亡くなった直後、私は父から遺言を作ったと聞きました。 長年連れ添った母が亡くなり、これからのことが不安になったため、遺言を作成したとのことでした。 そ…[サブカテゴリー]:
O家の事例:家系図参考になった!8
2019-08-20[カテゴリー]:
認知症の祖父との贈与契約
認知症の祖父との間で贈与契約を締結しました。 その後まもなく祖父は亡くなり、相続が発生しています。 祖父が亡くなったことで相続人となったおじが、祖父との間で交わした贈与契約の有効性を問題にしています。 遺言の有効性が問題になることはよくありますが、贈与契約も問題になるのでしょうか…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
【夫婦で遺言を作成とき】どちらの相続を先に想定するか?
妻とともに夫婦で遺言を作成しようと思っています。 相続税のことも考えて、配偶者特例も利用しながら相続の配分を検討しています。 妻の方が元気なので、長生きするはずですから、私の財産を妻にまず相続させて配偶者特例を利用するつもりです。 そのほかにも居住用不動産を妻に贈与することも考え…[サブカテゴリー]:
2019-08-19[カテゴリー]:
遺言能力について争う際のポイントを把握したうえで、遺言を作成すべき。
父が遺言を残して亡くなりました。 遺言には財産の分け方が書かれているのですが、私には父名義のマンション1棟を残してくれました。ほかの兄弟にもそれぞれ現金などを残しているのですが、私が多めにもらっているという理由で、遺言の内容に対して兄弟は不満を持っています。 遺言は2通あり、…[サブカテゴリー]:

参考にしたい相続関連記事

2018-09-14
【同じ法律用語でも法律によって意味が異なる場合があるので注意】異なる法律で意味も…
法律が異なれば、言葉の意味も異なる 法律というと、理路整然としたイメージを持つ世界の話であることから、同じ用語については統一された基準が徹底されているかのような感覚を持つ方もいるのではない…
2019-06-27
【弁護士も知らない?代償分割で遺産分割手続を効率化】遺産分割協議書の書き方で紛争…
遺産分割協議後の紛争 遺産分割協議が終わっても、紛争が蒸し返されることがある。特に相続財産が複雑な場合は、相続手続きにひと手間がかかり、金融機関が要求する書類をそろえる必要がある。証券会社…
2019-09-23
銀河系兄弟の相続争い【サムスン電子】
兄弟間の相続紛争 「SAMSUNG」のロゴでおなじみの、韓国国内最大の家電・電子部品メーカー。近年、スマートフォンやタブレット端末でよく見かけるようになった。創業者のイ・ビョンチョル(李秉…
2019-08-19
7.海外の不動産と日本の不動産はどちらが得か
7.海外の不動産と日本の不動産はどちらが得か不動産を利用した節税対策 日本にある土地は、路線価方式や倍率方式によって評価されます。路線価は公示価格の約80%で計算されま…
2019-06-27
【遺産分割と相続税】遺産分割終了後の相続税修正申告
遺産分割が終わっても相続税でもめる 長くかかった遺産分割調停がようやく終わった。ところが遺産分割調停が終わっても、すべてが終わりになるわけではない。遺産分割調停を申し立てる相続事件は一般に…
2018-07-19
【家族ではあるが相続人にはなれないペットの将来】ペットの将来にも配慮した遺産相続
高齢化はペットの世界でも進んでいます。飼主の死後、残された高齢のペットが困らないよう、ペットの将来に配慮した遺産分割が注目されています。先日、実家で母親が飼っていたマルチーズが亡くなりました…
ページトップへ

カテゴリ別 相続相談一覧これまで弁護士に寄せられたカテゴリ別相続問題

遺 言
遺言無効を争う
遺留分を争う
  • 遺言無効
    確認訴訟
  • 遺留分
    減殺請求
  • 遺言執行者
    解任
だましうちで遺言を書かせる。財産の不正操作の常とう手段です。遺言無効確認の訴えや、遺留分減殺請求などにより、財産の不正操作と戦います。
遺産分割
財産の不正操作に
要注意!
  • 預金の
    無断引出
  • 名義の
    無断書換
預金を勝手に引き出したり、不動産の名義を勝手に書き換える。財産の不正操作と徹底的に戦う覚悟がある方のお力になります。
不動産相続
評価や分け方で
モメる不動産相続
  • 評 価
    トラブル
  • 分 割
    トラブル
  • 不動産の
    不正操作
分けられない財産の典型である不動産。不動産の評価について相続人間でモメます。そもそも不動産が相続財産かどうかも問題になります。不動産を独り占めする財産の不正操作と最後まで戦います。
事業承継
同族会社の
内部紛争に勝つ!
  • 取締役の
    不正追及
  • 株主総会
    の形骸化
同族会社の内部紛争や支配権争いでお悩みの方のお手伝いをします。事業を営む方の相続問題は通常の相続以上に複雑です。会社の支配権を勝ちとり、事業を守り抜きます。
国際相続
国外財産があると
どうなるの?
  • 海外財産
  • 海外在住
  • 国際結婚
相続財産が海外にある場合、手続きが複雑になります。国内財産の分け方も絡む紛争を総合的に解決します。
相続税
節税対策の
ポイントを知りたい
  • 税務調査
  • 税務訴訟
  • 相続税の
    還付
生前にどれだけ詳細にシミュレーションすることができたかで、相続税対策は決まります。遺言内容にも影響しますので、多方面からの検討をする意味でも弁護士兼税理士にお任せ下さい。