認知症の祖父との贈与契約

認知症の祖父との贈与契約

[投稿日]: [投稿者]:
[サブカテゴリ]:

認知症の祖父との贈与契約

相談者からの相談内容

認知症の祖父との間で贈与契約を締結しました。 その後まもなく祖父は亡くなり、相続が発生しています。 祖父が亡くなったことで相続人となったおじが、祖父との間で交わした贈与契約の有効性を問題にしています。 遺言の有効性が問題になることはよくありますが、贈与契約も問題になるのでしょうか。 どうしてこのような贈与契約を締結したかというと、私の家は家業を営んでおり、私を後継者として祖父は考えていたのです。 叔父はいったん会社に入ったのですが、祖父とは喧嘩別れをしてしまい、それ以来絶縁状態になっていました。 叔父が家を出て行った後も、祖父は叔父の悪口を言い続けていました。 叔父が家を出て行ったのは10年以上前のことです。 本来ならばもっと早く対策をしておけばよかったのですが、祖父も贈与契約を締結するときには少し認知症にかかっていました。 と言っても、全く意思表示をするに当たっては問題はなく、はっきりとしていました。 贈与契約を締結後には、私が贈与税を納税しています。 贈与契約は無効になってしまうのでしょうか。
弁護士からの
一言アドバイス
「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
今すぐ弁護士度
簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
解決難易度

贈与契約の有効性は遺言無効と同じ問題

贈与契約の有効性も遺言無効と同じ構造

遺言無効確認訴訟は皆さんもよくご存知ですが、不動産の売却などの財産処分や、贈与契約なども有効性が問題にされます。
その場合の判断構造は、基本的に遺言無効確認訴訟と同じです。
遺言作成に必要な遺言能力と法律行為に必要な意思能力は厳密にいうと異なる概念ですが、そこまで大きな差はないと考えても結構です。
遺言無効確認でも当該遺言作成において必要な遺言能力が問題にされますが、贈与契約においても当該贈与契約において必要な意思能力が問題にされます。
贈与契約後に贈与税の申告をしていることは、贈与の有効性を判断する1資料とはなりますが、贈与税申告自体が受贈者の単独行為とされているため、贈与者が認知症であるとする主張に対する反論として直接的ではありません。
遺言と異なり、公正証書で行うことが少ないという点があります。
他者の介在がない、密室でなされている点は、証人尋問を行えるかどうかなどで不利になりえます。
いずれにせよ、遺言無効確認訴訟同様に、大変重い事案であることは間違いありません。

定型的な資料から非定形的な資料まで確認

訴訟になった場合の準備としては、定型的な資料のみならず非提携的な資料も含めて検討する総力戦になります。
定型的な資料は認知症テストやCT画像などがあります。
外部から可視化できますし、説得力もある。
しかし長期間に渡る介護の中で、そこまで資料が多くはないこともあります。
まれに近接している期間において長谷川式認知症スケールの点数に大きな開きが生じていることも。
介護日誌やカルテなどの記載は非定型的な資料ですが当然、波も大きい。
人間の評価ですから、主観も入ってくる。
介護でむずかって言うことを聞かない高齢者に対して、ときに冷淡な書かれ方をしてしまうこともあります。
実際に介護において時間的接触が長かった方に、お話を聞いてみるということも重要です。
医師が認知症と診断していた場合でも、判断材料がない場合があります。
画像もなく認知症テストも行わずに、認知症とカルテに書かれていることがあります。
記載内容だけではなく、記載内容の根拠の有無や根拠資料の内容も検証が必要です。

長谷川式認知症スケールの点数に対する評価

長谷川式認知症スケールについては、認知症を診断する典型的なテストとされています。
もちろん、長谷川式認知症スケールの点数は重要なのですが、長谷川式認知症スケールの点数に対する評価が分かれています。
裁判官の論文の中には、長谷川式認知症スケールは認知症かどうかを二元的に判断するスクリーニング機能しか認めないかのような書き方をしているものがあります。
この論文が説得力をもって裁判官に訴えかけてしまっていると面倒です。
もともと長谷川式認知症スケールは確かに、スクリーニング機能として開発されたということはあるようで、その点を強調している考え方です。
ところが重要なのは認知症かどうかではなく、当該行為を行った時点で、当該行為について意思能力が十分であったかなのです。
これは当該行為の中身との相関関係で決まり、難しくて複雑な判断を要する行為については意思能力も高度なものを要求されますし、反対にシンプルで簡単な行為についてはそこまで高度なものは要求されません。
認知症でも程度が重要です。
医療現場では長谷川式スケールの点数によって、認知症の程度まで図ることができることは、複数の医療関係者も認めています。
質問に対する応答点数を積み上げていくテストなので、当然そうなると思うのですが。
19点と1点で同じということはあり得ないと思います。
特に長谷川式スケールの点数が認知症であるとされる20点以下である場合、点数に対する評価も重要です。

ここがポイント!

贈与契約までの経緯を整理することが重要

医師の診断状況や介護認定票などの資料を確認。
長谷川式スケールの点数は評価方法も重要。

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

この記事が参考になった方はクリック!

同じカテゴリーの相続相談事例 [カテゴリー:遺言編]

2019-08-20[カテゴリー]:
【遺言者本人の意向確認】遺言無効確認訴訟を検討したい
父が亡くなり、兄と相続でもめています。 父の遺言が見つかったのですが、生前に聞いていた父の意向とは大きくかけ離れています。 不動産を私に相続させると言っていたにもかかわらず、実際には遺言で兄が相続することになっています。 また相続財産のほとんどを兄が相続する内容の遺言になっていま…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
遺言無効確認訴訟の勝訴見込【吟味すべき証拠】
父が亡くなり、遺産分割調停を母と兄が申し立ててきましたが、取り下げられました。 取り下げる際に、唐突に遺言の存在を明かされました。 自筆証書遺言で、不動産について母に相続させるというものです。 筆跡は確かに父のもののように見えるのですが、おぼつかない筆跡です。 主治医は自分で判断…[サブカテゴリー]:
2019-10-29[カテゴリー]:,
【金持ちの令嬢必見?】結婚前の相続対策【相続させない方法】
家業を営んでいます。1人娘が結婚するのですが正直、私たちの家の財産が目当てなのではないかと思えて仕方がありません。こんなことを言わずに、素直に喜ぶべきかと思うのですが、もともとお金に困っていそうな方なので、今後のことが心配です。この前も一緒に食事をした時には、うちの会社があたかも…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
【夫婦で遺言を作成とき】どちらの相続を先に想定するか?
妻とともに夫婦で遺言を作成しようと思っています。 相続税のことも考えて、配偶者特例も利用しながら相続の配分を検討しています。 妻の方が元気なので、長生きするはずですから、私の財産を妻にまず相続させて配偶者特例を利用するつもりです。 そのほかにも居住用不動産を妻に贈与することも考え…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
【遺言があるのに不安定な立場】遺産分割調停・遺留分・遺言無効確認訴訟の連動
現在、遺言無効確認訴訟で争っています。 遺言内容は私がすべての財産を相続する者ですが、相続財産のほとんどが自宅で、 自宅の評価額次第では売却して代償金をねん出する必要があります。 遺言無効確認訴訟に先行して遺産分割調停が継続していたところ、遺産分割調停が取り下げられました。 その…[サブカテゴリー]:

参考にしたい相続関連記事

2018-08-15
【世代ごとにことなる相続に対する意識】遺産相続に関する高齢者の意識
日本は世界一の長寿国と言われます。厚生労働省の平成27年9月の発表によると、100歳以上の高齢者は前年より2748人増え、過去最多の6万1568人に上るそうです。前年比増は45年連続だそうで…
2019-11-25
Q33.遺言を書かせたいのだが
遺言者本人が自らの意志で書く遺言などほぼない。同居の長男パターン。相続税などを口実に説得するケース。公正証書の方が書かせやすかったが、自筆証書遺言も改正により利用しやすく。 親に遺言…
2017-10-24
遺言による相続
1 遺言を残す意味遺言による相続 遺言をするメリットは、自分の思い通りに財産の処分ができることです。遺産分割協議の結果や法定相続分よりも、自分の意思を優先させたいと思った場合に、遺言をして…
2018-04-03
【コンテンツビジネスにおいて重要な存在】芸能事務所のお家騒動 オフィス北野の場合
タレントのビートたけし氏が独立して新事務所を設立。これを契機に旧所属事務所であるオフィス北野でお家騒動が勃発した。残留するたけし軍団のタレントが森昌行社長を糾弾。たけし独立の原因は社長にあり…
2018-07-08
【海外における非嫡出子をめぐる事情も判断根拠の一つに】非嫡出子の相続分をめぐる裁…
自身の浮気が原因で、フランス大統領が事実婚の妻との関係を解消したというニュースが以前にありました。事実婚とは、婚姻届を出さず、法律上の婚姻をしない「結婚」のカタチです。日本でも法律婚をした場…
2019-11-16
「兄弟平等」は命取り【グッチ】
事業承継においては、兄弟平等が命取りに グッチオ氏は、親心からか兄弟平等に株を譲渡。これが悲劇の始まりだった。兄弟であっても、家を出て家庭を持てば他人意識が強くなる。孫に代替わりすれば、な…
ページトップへ

カテゴリ別 相続相談一覧これまで弁護士に寄せられたカテゴリ別相続問題

遺 言
遺言無効を争う
遺留分を争う
  • 遺言無効
    確認訴訟
  • 遺留分
    減殺請求
  • 遺言執行者
    解任
だましうちで遺言を書かせる。財産の不正操作の常とう手段です。遺言無効確認の訴えや、遺留分減殺請求などにより、財産の不正操作と戦います。
遺産分割
財産の不正操作に
要注意!
  • 預金の
    無断引出
  • 名義の
    無断書換
預金を勝手に引き出したり、不動産の名義を勝手に書き換える。財産の不正操作と徹底的に戦う覚悟がある方のお力になります。
不動産相続
評価や分け方で
モメる不動産相続
  • 評 価
    トラブル
  • 分 割
    トラブル
  • 不動産の
    不正操作
分けられない財産の典型である不動産。不動産の評価について相続人間でモメます。そもそも不動産が相続財産かどうかも問題になります。不動産を独り占めする財産の不正操作と最後まで戦います。
事業承継
同族会社の
内部紛争に勝つ!
  • 取締役の
    不正追及
  • 株主総会
    の形骸化
同族会社の内部紛争や支配権争いでお悩みの方のお手伝いをします。事業を営む方の相続問題は通常の相続以上に複雑です。会社の支配権を勝ちとり、事業を守り抜きます。
国際相続
国外財産があると
どうなるの?
  • 海外財産
  • 海外在住
  • 国際結婚
相続財産が海外にある場合、手続きが複雑になります。国内財産の分け方も絡む紛争を総合的に解決します。
相続税
節税対策の
ポイントを知りたい
  • 税務調査
  • 税務訴訟
  • 相続税の
    還付
生前にどれだけ詳細にシミュレーションすることができたかで、相続税対策は決まります。遺言内容にも影響しますので、多方面からの検討をする意味でも弁護士兼税理士にお任せ下さい。