預貯金等の相続 -遺産分割後の手続き遺産分割の弁護士
預貯金等の相続遺産分割後の手続き
相続の開始を金融機関が知ると、被相続人名義の預貯金はいったん凍結されますので、その引出しを行う場合は、払戻しまたは名義変更の手続きが必要となります。
被相続人の預貯金債権は、相続の開始と同時に法定相続分に応じて分割され各相続人に移転し、遺産分割後は遺産分割の内容に従って各相続人に相続開始にさかのぼって移転するとされています。つまり相続人は金融機関に対し、相続人であることを証明し、相続分の預貯金の払戻しの請求ができることになります。しかし、実務上金融機関は相続人の1人が他の相続人に許可なく預貯金の払戻をするなどして、相続人間のトラブルに金融機関が巻き込まれるようなことを避けるため、必ずしも上記のようには対応はしていません。
預貯金の払い戻し手続きは、具体的な手続は各金融機関によって異なりますが、概ね次のような書類を提出することで行うことができます。金融機関によっては、支店、担当者、及び払戻請求者と金融機関の関係等によっても手続きが異なる場合がありますので、必ず事前に必要書類等を確認した上で行いましょう。
遺言がある場合
遺言によって、預貯金を特定の相続人または第三者に遺贈することができます。この場合、相続人または受遺者は、相続開始時から当該預貯金を取得することになり、金融機関に対し、次の書類を提示して、その払戻しを請求することができます。
遺言執行者がいないとき
- (1)払戻依頼書
- (2)遺言書(裁判所の検認調書)
- (3)被相続人の除籍謄本
- (4)印鑑証明書
- (5)被相続人の預貯金通帳または証書
※金融機関によっては、受遺者に対する払戻しについての相続人全員の同意書、印鑑証明書を求められることがあります。
遺言執行者がいるとき
遺言執行者が指定された場合は、預貯金の払戻し等の手続きは遺言執行者が行います。
- (1)遺言書(裁判所の検認調書)
- (2)遺言執行者の審判書謄本(家庭裁判所で選任された場合)
- (3)被相続人の除籍謄本
- (4)遺言執行者名義の払戻依頼書
- (5)遺言執行者の印鑑証明書
※相続人全員の払戻同意書や払戻依頼書を要求されることもありますが、金融機関は相続人の同意の有無にかかわらず、遺言執行者からの払戻請求には応じるべきとされています。
遺産分割前の払戻請求
遺産分割前は各相続人の具体的相続分が決まっていませんので、金融機関は相続人の1人からの払戻請求に応じると、後に何らかのトラブルが生じる可能性があると考えるため、原則として共同相続人全員による払戻請求を求めてきます。払戻しに必要な書類等は次のとおりです。
- (1)払戻依頼書(相続人全員の署名および実印の押印のあるもの)
- (2)相続人全員の印鑑証明書
- (3)被相続人の除籍謄本
- (4)相続人全員の戸籍謄本
- (5)被相続人の預金通帳および届出印
共同相続人の協力が得られないような場合において、取り急ぎ法定相続分の払戻しをしたい場合は、支払命令や判決により、法定相続分の範囲で金融機関に対する債務名義を取得して預貯金の払戻しを受けることが可能です。債務名義があれば金融機関も、支払いに応じてくれます。
遺産分割後の払戻請求
遺産分割後は遺産分割協議書(調停調書または審判書)の内容に従って、相続開始時にさかのぼって特定の相続人に帰属し、当該相続人は金融機関に対し預貯金の払戻しを請求することができます。払戻しに必要な書類等は次のとおりです。
遺産分割協議書に基づく場合
- (1)遺産分割協議書(相続人全員の実印の押印、印鑑証明書の添付があるもの)
- (2)相続人全員名義の払戻依頼書(実印の押印あるもの)
- (3)被相続人の除籍謄本
- (4)相続人全員の戸籍謄本
- (5)被相続人の預金通帳または証書、届出印
家庭裁判所の調停調書または審判書に基づく場合
- (1)家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
- (2)預金を相続した者の戸籍謄本および印鑑証明
- (3)被相続人の預金通帳または証書、届出印
残高証明書の依頼方法
被相続人の相続人等正当な権利者は、銀行などの金融機関に残高証明書の発行を請求することができます。その際の必要書類はつぎのとおりです。
相続人から請求する場合
- (1)残高証明発行依頼書
- (2)被相続人の除籍謄本
- (3)請求者が相続人であることが確認できる戸籍謄本
- (4)実印と印鑑証明書(3カ月以内のもの)
遺言執行者から請求する場合
- (1)残高証明発行依頼書
- (2)被相続人の除籍謄本
- (3)遺言書または遺言執行者選任審判書謄本
- (4)遺言執行者の実印と印鑑証明書(3カ月以内のもの)
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