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【裁判で争う際には証拠が必要】遺産分割における贈与(特別受益)[POSTED]:2018-12-01
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相続人間の不公平を調整する特別受益
遺産分割において贈与は、誰が、どのような目的で、いくらもらったのかという点について分析的に見ることが大切となるのです。
というのも、相続人間では扶養義務が問題になることから、お金のやり取りがある程度発生することが織り込み済みであるといえ、法が想定する以上のお金のやり取りがあった場合に初めて、相続人間で不公平を調整することになっているからです。
つまり、相続人が被相続人から法が予定している以上に、生前にたくさんの財産をもらっていた場合、遺産分割において調整を行うことがあります。
これを「特別受益」といいます。
特別受益がある場合には、多くもらいすぎていた分を吐き出させて持ち戻し、現存する相続財産に加えて、全体を遺産分割することになります。
財産を多くもらっていた相続人としては、持ち戻しが生じた分についてはすでにもらっているのですから、相続の前渡しとしてすでに受け取っていると扱われることになり、遺産分割の際には新たにもらうことはできません。
「生計の資本としての費用」というハードル
このように、相続人が贈与を受けた場合は、特別受益という制度で調整ができ、何年でも遡ることができます。
特別受益は相続財産に持戻しをしたうえで、すでにもらっている分を調整する制度なので、特定の相続人が財産をもらっている場合の調整といえます。
公平な制度に見えますが、特別受益が認められるには、高いハードルを越える必要があります。
まず持参金、新居、道具類、高額の結納、高額の新婚旅行費用などの婚姻のための贈与、あるいは高額な高等教育の学費、住宅購入資金、事業を始める際の資金援助など、生計の資本としての費用をもらった場合でなければなりません。
海外旅行や贅沢品を購入するためにお金を渡していたとしても、これこそまさに特別受益として吐き出させるべきであるかのように思えますが、特別受益にはならないのです。
学費については、兄弟のうち特に1人だけに高等教育を受けさせる場合は、特別受益になり得ますが、大学進学率が高い昨今においては、特別高額の場合を除いて大学の学士程度であれば特別受益に該当しないと考えられています。
名目が婚姻のための贈与や生計の資本としての費用の贈与である場合に限り特別受益として相続の際に考慮され、海外旅行に行く際の小遣いなど、贅沢をするための小遣いは特別受益で考慮されません。
これは、特別受益を定める民法903条1項が「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」財産に明確に限定しており、あらゆる贈与を特別受益とみなすと、計算が複雑になるうえ、被相続人の通常の意思を推察すると、少額の贈与は特別受益とはみなされるべきではないと考えられるからでしょう。
相続人に対してしか追及できない
特別受益は、誰に対して財産を渡しているのかで扱いが異なります。
つまり、相続人である長男に財産を渡しているのか、あるいは相続人ではない二男の妻に財産を渡しているのかによって、特別受益として精算の対象となるのかどうかに違いが生じるのです。
財産をもらった人間が相続人の場合は、何年でも遡って特別受益として精算の対象となります。
しかし、相続人以外の人間が財産をもらった場合、原則として特別受益には該当せず、精算の対象にはなりません。
特別受益は相続人間の不公平を是正するための制度ですから、相続人以外の者が財産をもらっていたとしても、相続人の中の誰かが特別に利益を受けたとはいえず、相続人間の不公平の是正にはつながらないからです。
相続人以外の者には、相続人の配偶者や子どもも含みます。
相続人以外の者に対しても追及できる場合
もっとも、相続人以外の者に対する贈与であっても、実質的に見れば相続人に対する贈与であるといえる場合には、特別受益として精算の対象とすることができる場合もあります。
例えば、本来は相続人である親が負担すべきである子どもの学費について、子ども(被相続人から見れば孫)への学費の援助という形でその子どもに財産を渡していたようなケースにおいては、実質的には相続人である親への贈与であるといえるため、特別受益に該当すると判断される可能性があります。
学費として子どもが財産をもらうと、親の経済的負担はその分だけ減ります。
つまり、相続人である親が利益を受けたということができるのです。
相続裁判において争う場合には証拠が必要
特別受益として認定できるものであっても、裁判において争う場合には証拠が必要になります。
証拠がないと、なかなか認定をすることが難しいのです。
よくあるのが、現金が被相続人の通帳から引き出されているものの、受益相続人の口座に直接は振り込まれておらず、あくまでも現金の形で手渡されているという事案です。
この場合、引出額や引出しのタイミング、受益相続人が現金を費消した額や費消した証拠などにもよりますが、裁判において特別受益の立証が困難になることもあります。
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