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【同じ法律用語でも法律によって意味が異なる場合があるので注意】異なる法律で意味も違ってくる[POSTED]:2018-09-14
法律が異なれば、言葉の意味も異なる
法律というと、理路整然としたイメージを持つ世界の話であることから、同じ用語については統一された基準が徹底されているかのような感覚を持つ方もいるのではないでしょうか。
1つの法律用語については、厳然として動かず二義を許さない意味が確立されているかのような感覚です。
実際には、同じ言葉でも異なる法律においては、全く異なる意味になることもあります。
例えば、「労働者」という言葉を取り上げます。
労働契約法、労働基準法、労働組合法では「労働者」の意味内容がそれぞれ異なります。
労働契約法における「労働者」は、「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」(同法2条1項)。
労働基準法における「労働者」は、「船員」および「同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人」を除き「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」(同法9条、116条)。
労働組合法における「労働者」は、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」(同法3条)。
労働契約法における「労働者」の定義と労働基準法における「労働者」の定義は、ほぼ同様の内容です。
もっとも、労働基準法における「労働者」は「事業者」に使用される者と定義されているのに対し、労働契約法における「労働者」は「使用者」に使用される者と定義されていますから、労働契約法上は事業者に使用されている必要はないことになり、労働契約法における「労働者」のほうが広い概念であるといえます。
また、労働組合法における「労働者」の定義には、労働契約法や労働基準法における「労働者」とは異なり、「使用され」る者という文言がありません。
したがって、失業者であっても「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」である以上は、労働組合法における「労働者」といえることになります。
つまり、労働組合法における「労働者」は労働契約法や労働基準法における「労働者」よりも広い概念といえるのです。
以上のように、同じ「労働者」の指す意味内容は全く同一であるというわけではありません。
民法と刑法における証明の基準の違い
もっといえば同じ「違法」でも、民法と刑法では証明の基準が異なります。
刑事事件で無罪になった事件が、民事事件で違法性が認められて、損害賠償請求が認められることすらあります。
民法上の不法行為の成否と刑法上の犯罪成立は別です。
合法違法とは相対的な概念であり、全法律に共通する唯一の基準が存在するわけではないのです。
訴訟における証明の度合いも民事と刑事では異なります。
民事訴訟では、「高度の蓋然性」が立証されればよいとされています。
判例においても、「一点の疑義も許さない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りる」としています(最判平成11年2月25日)。
刑事訴訟では被告人について無罪の推定が働くことから、犯罪があったことや被告人が犯人であることについては「厳格な証明」すなわち合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の証明が要求されます。
判例では「厳格な証明」について、「刑事訴訟法の規定により証拠能力が認められ、かつ、適式な証拠調べを経た証拠による証明」と判断しています(最判昭和38年10月17日)。
このように、刑事事件のほうが一般的に証明のハードルが高いとされているのです。
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