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【AI弁護士?】AIで対応できない遺産分割調停【遺産分割調停と弁護士業務】[POSTED]:2019-10-13
AI弁護士?
AIが進化すると弁護士業務が無くなるといわれている。
法律相談のような調べ物は人間がやるよりもデータ分析の要素が強い。
AIが人間の業務に取って代わることもあるのかもしれない。
ただし、相続における弁護士業務を進めていると、相続業務の特殊性からAI技術とは相容れないこともある。
特に遺産分割調停での解決が多いことが、相続の弁護士業務の特殊性。
遺産分割では以下の理由でデータ蓄積が起きにくい。
遺産分割調停は非公開
相続紛争の解決方法として、遺産分割調停が占める割合は多い。
遺産分割調停では非公開ゆえに、一般的な情報がなかなかない。
AIが得意とするデータ蓄積がない。
どの事例ではどういう結論が出るということも言いにくい。
介護が寄与分として認められた事例について、質問を受けることがある。
判例からいえる原則がないかという質問なのだが、期待に沿えるはっきりとした結論を豊富なデータから提供することが難しい。
事案の細かな要素も把握できないので原則化や一般化は難しい。
非公開で交渉事の要素もあるので、同じ事案でもケースバイケースの結論になることが多い。
書面が提出されない。
遺産分割調停では書面が提出されない。
だから結局、どうしてこの結論になったのかが形に残りにくい。
AIが得意とするデータ蓄積が起きにくい。
あとから検証する場合に、主張がどのように変遷したのか、どの部分を認めてどの部分を争ったのかがわかりにくい。
裁判ではおおむね、1期日ごとに準備書面という主張書面が提出される。
相手が提出してきた書面に対して、こちらが反論し、主張書面のやり取りが繰り返される。
書面を作成する準備で1月ほど。
1月に1回程度の頻度で裁判期日が開かれる。
ところが調停ではそこまで書面を提出する機会がない。
もちろん提出してもよいし、弁護士が就けば書面を提出することもある。
ただしそれでも裁判に比べて、書面を提出しないことが多いし、提出書面も多くはない。
伝言ゲーム形式で悩み事まで聞く遺産分割調停
AIは合理性を前提とするが、遺産分割調停は必ずしも合理的な進め方をしない。
遺産分割調停では申立人と相手方が交互に調停委員と話をする。
弁護士が代理人としてついていれば、双方がまとめて調停委員と話をすることもある。
ただ調停委員の進め方により、弁護士がついても、交互に話をすることもある。
そのため1回の遺産分割調停期日の時間も裁判に比べて長くなりがち。
2時間コースになることもある。
遺産分割調停が入っている日は、半日も裁判所で時間がとられてしまう。
当事者が同行しているとたいていの場合、交互に話を聞く。
ガス抜きの意味もあって、感情を吐露させたりすることもある。
調停委員がそこまで強権的に仕切らずに、気が済むまで話をさせることも。
法的には関係のないことを話させることもあり、時間はかかる。
伝言ゲーム形式で進み、議題が法的論点以外にも及ぶ遺産分割調停。
こんな言葉が適切かわからないが、グダグダになってしまうことも。
AIになじまない理由である。
不確定要素が多いアナログ業務
遺産分割調停でもめていた議題が解決するプロセスは、本当に摩訶不思議。
あれほどこだわっていたポイントを、ほかの問題が出てきたとたんにあきらめる相続人。
絶対にまとまらないと思っていたにも拘らず、いきなりある期日に妥協をしてくる相続人。
時間切れで裁判疲れした相続人があきらめた。
特定の交渉事といっしょに交渉した結果、こだわっていた問題の重要性が落ちた。
初めに大きな要求をしただけのドア・イン・ザ・フェイスであった。
弁護士が代理人として相続人を説得できた。
年末を迎えて今年中に解決したいと相続人が思った。
相続人がプライベートでより大きな問題が発生し、遺産分割調停どころではなくなった。
遺産分割調停が進むプロセスは、期日ごとに均等ではなく、進むときは一気に進む。
AIではやはり、人間心理の機微は把握できないだろう。
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