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【生前贈与を検討する余地も】受け継いでもらいたい財産を残すための遺言作成[POSTED]:2018-07-06
印刷会社を経営する社長と会食をしました。
そろそろ夏休みというタイミングでしたが、社長は毎年恒例の欧州旅行に出かけるそうです。
還暦を迎えた社長は、オペラ鑑賞が趣味の奥様と、デザイン事務所を経営する息子、留学先のアメリカから駆けつける娘を連れて行くのですが、何とも豪華な旅になるようです。
航空券は往復ともにビジネスクラスで、宿泊先は5つ星ホテルを奥様に自由に選ばせる。
食事は毎食ミシュランのレストランを予約し、オペラ鑑賞は特等席を予約するのだとか。
1週間の旅行代金は総額1000万円以上。
毎年1回の旅行にかける金額にびっくりさせられました。
一番大切にしている思い出作りのためであれば、お金は惜しまない、というのが社長の考えだそうです。
年を取るにつれ物欲が無くなり、思い出こそが人生において一番の宝物であることを強く実感するようになったとか。
若いころに買ったポルシェを売ってクラウンに乗り換える一方で、趣味のグルメや旅行にはいっそうお金を使うようになったそうです。
相談者から遺言作成の依頼を受けたときのエピソードです。
財産の分け方に強い思い入れを持っている方でした。
遺言では、法定相続分とは違う相続分を指定できるだけなく、特定のものを特定の相続人に相続させるようにも指定できます。
相続財産は全部で数億円に上りましたが、預貯金がたくさんあったので、遺産分割の点では問題が起きにくい家庭でした。
その方が1点だけ特にこだわっていたのが、軽井沢の別荘です。
旧軽井沢に建つ築30年の別荘は、白樺の林にひっそりと佇むように建っています。
ドアの建付けも悪く、メンテナンスも費用がかさみます。
定期的に様子を見に行かなければならないし、行ったら行ったで、ひもすがら掃除をして貴重な週末が丸1日つぶれる。
固定資産税も徴収されます。
「手がかかる金食い虫でしかない無用の長物だよ」と言いながらも、思い出が詰まった宝箱のような物件とのことでした。
2人のお子さんが小さかったころは、家族みんなで毎年の夏休みによく行きました。
子供たちは夏の間を別荘で過ごす。
仕事が忙しかった社長は、東京と軽井沢を往復しつつも、テニスや昆虫採集、釣りを家族で楽しんだそうです。
思い出の別荘をこの先もずっと残してもらいたい。
何年か前から、不動産屋が高額で買い取らせて欲しいと、話を持ちかけています。
合理的な考え方をする長男ならば、コロッと売ってしまうかもしれない。
確かに、ホテルに泊まった方が安上がりで便利なのです。
しかし毎年家族で利用してくれている長女であれば、今後も大切に使ってくれるだろう。
そこで、軽井沢の別荘は長女に相続させる内容で遺言を残したいということでした。
このような場合、どのような対策が良いでしょうか。
長男には財産の3分の1を、長女には3分の2を、という相続分を指定するだけの遺言では、長女に別荘が確実に渡るとは限りません。
実は、遺言に書くよりも、もっと確実な方法があります。
生前に贈与してしまうのです。
相続時精算課税制度を利用して生前に長女に別荘を贈与することも、検討の余地があります。
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