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【遺言を遺すことに積極的になれないケースも】子どもがいない相続・東山魁夷の場合[POSTED]:2018-03-22
東山魁夷の相続財産をめぐってもめ事が起きていると、週刊文春が報じている。
魁夷は1999年に90歳で、夫人も2016年に98歳でそれぞれ亡くなった。
相続争いは夫人の死後に起きた。
東山夫妻には子供がおらず、法定相続人は夫人の兄弟や甥、姪など7人。
魁夷の死後に東山宅に住み込んで夫人の秘書を務めた甥の斎藤進氏は、財団を設立して著作権や美術品を財団財産とする意向であった。
財団設立に対して当初は反対意見がなかったものの、のちに兄弟から財団設立に対して反対意見が出る。
夫人が脳梗塞で倒れ遺言を作成していなかったために、財産を分割できない状態が続いているという。
以上が、週刊文春が報じた相続争いの概要である。
遺言があれば相続争いは起きなかった、遺言を作成するのが肝要である、として片づけるのは簡単だ。
ただ東山夫人のようなケースでは、なかなか遺言を残すことに積極的になりづらい事情もある。
脳梗塞で倒れてから長く闘病を続けている状態では、遺言を書くことができない。
遺言能力がなかった可能性もあるし、仮に書いたとしても後に遺言無効を争われることになりかねない。
脳梗塞に倒れる前に遺言を作成することも期待し難い。
東山夫妻の法定相続人の構成が一因である。
子どもがいない夫婦で一次相続が発生しても、残された配偶者は財産承継について真剣に考えにくい。
直系子孫に脈々と受け継がせる意識は、子供がいなければ、皆無か希薄になる。
財産の多くを美術品が占めていたことも大きい。
現預金や不動産、有価証券などと違い、財産的価値を直感的に意識しずらい相続財産に対しては、遺言で手当てする必要を感じにくい(自社株式なども同様である)。
画家の名家出身の夫人にとって、魁夷の遺品は美術品そのものであって、財産価値を有する相続財産ではなかったのかもしれない。
あるべき遺言がなかなか作成されていない背景には、こんな事情もある。
名家の相続争いだが、弁護士として関わる相続裁判や遺産分割調停などと共通の問題が見え隠れしている。
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