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【税理士は依頼者の「代理人」なのか】弁護士と税理士との共同作業によって明らかになる性格の違い[POSTED]:2018-09-18
業務に対する税理士のスタンス
遺産分割や遺言作成などの相続に関する依頼を受けた場合、弁護士と税理士が共同作業で進めることがあります。
遺産分割協議が調わないため遺産分割調停を申し立てたいが、相続税の申告期限も迫っているので、遺産分割調停と同時並行で相続税の申告も行わなければならないようなケースです。
弁護士として税理士と一緒に業務を行っている時に感じるのが、弁護士と税理士との業務に対するスタンスの違いです。
税理士法1条には、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする」と定められています。
税理士は「独立した公正な立場において」職務を行うものと定められていますから、ある意味では依頼者からも「独立した公正な立場において」職務を行うことが税理士の使命といえます。
弁護士のように、依頼者の正当な法的利益を最大限に追求し、専ら依頼者の法的利益のために業務を行うという意味での「代理人」とはストレートにいえない側面もあるのです。
税理士に対する監督権は行政庁である財務省や国税庁にあることや、懲戒権者も財務大臣とされていることから考えると、税理士は公益的業務を担うという立ち位置とも考えられます。
このような税理士の立ち位置の関係から、依頼者の適正な納税を依頼者に代理して行うのが税理士の業務といえるでしょう。
依頼者の利益と矛盾することも多いので、完全に依頼者の利益追求のみを目指すとはいえない部分もあります。
依頼者の代理人である弁護士
弁護士は徹頭徹尾、依頼者の代理人です。弁護士は公権力から独立した存在ですから、行政庁に監督される立場にはありません。
弁護士にも懲戒制度はありますが、弁護士法には各所属弁護士会が懲戒権者であると定められています。
お役所に気を遣って業務を行うのではなく、自分の依頼者の正当な法的利益のために業務を行うことができます。
遺産分割調停はあくまでも相続人同士の私的な取決めですので、弁護士が何らかの公的な要請を担って依頼者の代理人として活動するわけではありません。
純粋に、目の前にいる依頼者が得をする方法を考えればよいのです。
依頼者に対して、それはできないと言わざるを得ない場面も少ないといえるでしょう。
もちろん証拠の偽造などの違法行為に対しては助力できませんし、できないことは依頼者にあきらめてもらう必要があります。
あくまでも、弁護士は依頼者の「正当な」法的利益のために代理人として活動することになります。
もっとも、違法な主張はできないというだけであって、通常とは異なる視点からの主張をすることに問題はありません。
依頼者の希望にあわせて動く弁護士
例えば、判例と異なる内容の主張であっても、判例の守備範囲を争うことによって、自由な主張をすることは可能です。
確かに判例では異なる判断がなされているが、そもそも今回のケースはこの判例の守備範囲を超えた事例であり、この判例の考えは今回のケースに及ばない、と主張するのです。
通常、弁護士は訴訟などにおける主張を考える際に、依頼者の事例に似ている判例の事案を探してきて、その判例の判断を参考に主張の骨子を組み立てます。
しかし、判例の考え方をベースに判断すると、依頼者に不利になってしまうケースもあるでしょう。
このような場合に、あえて判例の考え方を紹介したうえで、この判例の考え方は今回のケースには当てはまらないと主張するのです。
そのうえで、判例の考え方にとらわれずに、依頼者に有利な主張を展開することもあります。
この点は弁護士によってかなり幅の出るところで、石橋をたたき壊す弁護士もいれば、新しい判例を作っていく気概で臨む弁護士もいます。
やはり判例の考え方には逆らえないとして、依頼者の本来の意向に沿わない主張を展開してしまう弁護士もいます。
判例の事案と今回のケースとの違いを積極的に見つけて、相違点がある以上、今回のケースに判例の考え方を当てはめることはできないとして判例の守備範囲を争い、今までの判例の考え方とは別の視点から主張を組み立てていく弁護士もいます。
依頼者としても、相手方と徹底的に戦いたいのか、それとも早期に解決したいのかなど、相手方との今後の関係をも含めた自身の希望を見極めて相性の合う弁護士に依頼をするようにしたいものです。
判例の守備範囲を争い、これまでの判例の考え方とは別の視点からの主張を展開していくことになると、当然のことですが、相手方とは激しく対立することになりますし、裁判も長期化します。
相手方と徹底的に戦いたいのであれば、このような争い方もよいでしょう。
一方、早期に解決したい、相手方との和解も検討したいということであれば、相手方との話合いの余地を残す主張をしていく必要があります。
弁護士としても、依頼者がどのような解決を求めているのかを把握し、柔軟に主張内容を検討する必要があります。
どのような解決を求めているかについて、依頼者が端的に言及しない場合もありますから、依頼者の打合せの際に依頼者の話をよく聞いて、意向を汲み取る必要があります。
依頼者との関係が壊れてしまっては本末転倒です。
徹底的に争いたいと考えている依頼者に対して、早期に解決するための和解案を提案しても、自分の要望を理解してくれないと失望されるだけです。
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