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【相続放棄する旨の書面は有効か】放蕩息子に相続させない方法[POSTED]:2018-07-06
オーナー企業の社長を父親に持つ友人の話です。
山の手育ちで代々続く名家の出身だけに、相続が発生するとたくさん財産が入ってくるはず。
ところがたまたま家族のことに話題が及んだ時に、なんと友人が、相続放棄を既にしていることを聞きました。
数年前に父親の弁護士から連絡があり、相続については一切放棄する旨の書面を作成したということです。
やんちゃだった友人は十代のころに、警察の世話になることも多かったとか。
親と対立することも多く、出来の良い弟とは違って、親のおぼえもめでたくはなかったと聞いてはいました。
江戸時代でいう勘当をされてしまったわけですね。
相続をすることは義務ではありません。
たとえば、親が借金ばかり残した場合などに、相続放棄をすることも自由です。
相続放棄をすると、相続開始時から相続人ではなかったことになります。
ただし相続放棄は、相続開始後に初めて可能になります。
生前に相続放棄を認めてしまうと、自由意思に反して放棄を強制されてしまう恐れがあるというのが理由です。
加えて、放棄の手続きは裁判所に対して行います。
私人同士で書面を取り交わしても、相続放棄の法的な効果はありません。
友人の場合、生前に書面で取り交わしているに過ぎず、実際の相続放棄は成立していません。では友人が作成した書面は何だったのでしょう。
実際に確認できないので推し量ることしかできません。
1つの可能性は、法的に有効かどうかはともかく、相続放棄をする意思がある旨の書面を作成しただけという話です。
相続開始後に、以前に作成した書面を突き付け、改めて正式な相続放棄を取り付ける。
事実上の圧力をかける意図で、放棄の書面が相続開始前に交わされることもあります。
しかし、相続開始前における相続放棄の書面は、法的には無効です。
相続開始後に踵を返し、相続の権利を主張することはもちろん可能です。
もう1つの可能性としては、友人は遺留分放棄に応じようとしていたのかもしれません。
遺留分とは、一定の相続人が最低限相続できる財産のこと。
遺留分の放棄は相続放棄と異なり、相続開始前でも行うことができます(ただし、遺留分の放棄には裁判所の許可が必要です)。
特定の相続人の相続分をゼロにする遺言を作成し、この相続人に事前に遺留分を放棄させることで、生前に相続放棄をすることと同じ効果が期待できます。
加えて遺留分を放棄する相続人に対して生前贈与をすることで、予想される不満に対しても手当する。
この一連の手続きは3点セットともいわれ、円滑な資産承継の機能を果たしています。
遺留分の放棄は、遺言作成や生前贈与とセットでなされることが多く、単独で遺留分の放棄がされることはあまりありません。
しかし、親との縁を切りたい子供から、遺留分放棄手続きの依頼を単独で受けたことがあります。
遺留分を放棄することで、自分から三行半を突き付けたかったようです。
このような意図で遺留分の放棄制度を使うこともあるのです。
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