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【プロセスより結果が求められる税理士】相続で税理士が作成する書面[POSTED]:2019-02-07

【プロセスより結果が求められる税理士】相続で税理士が作成する書面

相続税申告書を作成する相続税理士

税理士が作成する申告書の重要部分は、ボックスに囲まれた数字の部分です。
補助的に文章を添付することはありますが、申告書はとどのつまり、数字が重要です。
作成する申告書の項目は定型的に決まっています。
このような申告書を作成することが、税理士の業務です。
相続税の申告書は、第1表から第15表まであります。
記載の手順も、第1表から順に記載していけばよいというものではなく、必ずしもすべての用紙を使うわけではないので複雑です。

相続税申告書の作成手順

簡単に作成手順を説明すると、①相続することになる財産を把握して記載する、②相続税を計算する、③各種控除を計算して実際の納付額を算出するという流れになります。
①では、被相続人から引き継ぐ財産や債務を集計します。
具体的には、第9表「生命保険などの明細書」、第10表「退職手当金などの明細書」、第11の2表の付表1~4「小規模宅地等、特定計画山林又は特定事業用資産についての課税価格の計算明細書」など、第11表「相続税がかかる財産の明細書」、第13表「債務及び葬式費用の明細書」、第15表「相続財産の種類別価額表」を記載したうえで、取得した財産および承継した債務を集計して課税価格を計算し、第1表「相続税の申告書」に記載します。
②では、①で計算した課税価格に基づいて相続税の総額を計算します。
具体的には、第2表「相続税の総額の計算書」に被相続人の遺産全体に対する相続税額の総額を記載し、その総額を各相続人が取得する財産額で案分した各人の相続税額を第1表「相続税の申告書」に記載します。
③では、各相続人の状況を考慮した控除額を計算し、各相続人の具体的な納付額を算出します。
具体的には、各相続人の状況に応じて、第4表「相続税額の加算金額の計算書」、第4表の2「暦年課税分の贈与税額控除の計算書」、第5表「配偶者の税額軽減額の計算書」、第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」、第7表「相次相続控除額の計算書」、第8表「外国税額控除・農地等納税猶予税額の計算書」に各控除額を記載し、②で算出した各相続人の相続税額から差し引いて具体的な納税額を第1表「相続税の申告書」に記載します。
これを見てわかるように、申告書の作成は複雑な計算や各種制度の適用の検討を経て完成するものですから、単純な計算作業ではないのですが、最終的な結論である数字(相続税額)が重要視されることから、どうしてもデジタルな作業であるというイメージを抱かれがちです。

プロセスが重視されにくい相続税理士

依頼者の関心も、正しい数字を出してくれることであって、実態はともかくとして、正しい答えは1つしかないと思っているのではないでしょうか。
実際には解釈の違いなどもあって、税理士によって幾通りかの申告書が作成され得るのですが、依頼者にとっては数字の世界というのはデジタルで一律に答えが決まっているというイメージです。
期待値も、正しい答えを出すことが一番であって、正しい答えを出すプロセスというのは問題にされないことが多いかもしれません。
こういう苦労があった、こういう問題を克服したと、どんなに言葉を尽くして説明しても、数字が間違っていれば、途中のプロセスや手間暇を評価されることはないでしょう。「こんなに頑張ってくれたのだから、数字が間違っていても満足です」とは言ってもらえません。

更正の請求に関する業務を売りにする相続税理士も

昨今、相続分野での税理士のマーケティング競争が激しくなっていて、今までと違った売り方をする税理士事務所もあります。
相続税申告を受任するのではなく、相続税申告をすでにした税理士の粗探し的ではありますが、更正の請求に関する業務を売りにする事務所もあります。
相続税申告では非常に重要な不動産の評価ですが、他の税理士がすでにした評価をさらに下げることによって、相続税申告をやり直し、還付金を申請するサービスです。
他の同業から間違いを検証され、指摘されるという、最初に申告を担当した税理士にとっては厳しい業務といえます。
だからこそ、業務の過程での誤り、特に依頼者にとって誤りであると容易に理解できる誤字脱字は、依頼者の期待を大きく裏切ることになるでしょう。
正確性と結果だけで依頼者から評価されるのが、相続税の申告業務なのです。
逆に税理士としては、申告書の作成という業務が、決して穴埋め作業ではなく、1つひとつの数字を出すために、煩瑣な作業や検討、何段階もの計算式が必要であるこということを理解してもらう必要があります。
言わなくても理解されているというのは誤解であって、裏方での作業の大切さを理解してもらう努力が必要です。

相続税申告業務のプロセスを見せることが重要

手続代行はコモディティ化し、同業他社との区別がつきにくいのです。
では、価格競争に飲み込まれないためにはどうすべきでしょうか。
手続代行だからこそ差異がつけにくいように本来は思えるのですが、手続代行のプロセスを見せることが重要であると考えます。
・できるだけ依頼者への説明の機会をもうける。
・数字だけの要素で最適解を提示せずに、依頼者の要望を確認して、いくつかのパターンをオーダーメイドで提案する。
数字の問題なので、ついつい専門家である税理士に任せがちな依頼者にとって、ありがたい税理士事務所になるのではないでしょうか。
税理士の態度としても、数字が合っていれば問題ないと考えるのではなく、適用を検討している諸制度の解説はもちろん、最終的な納税額を導き出した計算過程についても、依頼者が納得いくまで説明する必要があると考えます。
手続代行の形式的な業務というイメージから、一定の裁量をもった高度に専門的な判断が絡む業務へと転換することが肝要なのでしょう。

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