sozoku.com相続専門の弁護士・税理士による
ワンストップサービス

ブログ・相続最前線 遺産相続の弁護士・税理士相談はお任せ下さい|sozoku.com

【相続税と遺産分割では、不動産の評価方法が異なる】相続における不動産は1物4価[POSTED]:2018-10-30

【相続税と遺産分割では、不動産の評価方法が異なる】相続における不動産は1物4価

相続の場面ごとで異なる不動産の評価

不動産の価格ほど、相続において問題を引き起こすものはありません。
不動産は1物4価といわれますが、場面ごとに応じて、不動産の価値を図る指標が異なります。
遺産分割においても、相続税の申告・納税においても同様なのですが、この評価額の違いは、端的に財産を評価する者の主観によって価格が異なるのではなく、評価軸自体が複数存在することから生じています。
評価方法自体が様々に存在することは、相続における不動産業務が高度に専門化し、各分野の専門家によっても、他の分野における専門家の助けが必要になってくることになります。
日本独特の計算方法もあり、相続において不動産を所有していること自体が有利に扱われることもあって、富裕層の資産構成が不動産に偏っているといわれます。
もっとも富裕層が不動産を所有するのは、不動産業者からのアドバイスがきっかけになることが多く、次のように複雑な不動産の評価体系からしても、相続税の申告や遺産分割において専門家の助力を不可欠なものにしているともいえます。

不動産において何をもって時価とするのかは不明確

不動産の価格の評価方法には、時価による算定があります。
ところが、商品市場が成立するものとは違い、不動産は物件ごとに個性があります。
何をもって時価なのかというと、究極的にはその不動産を実際に売却した時の価格になってしまいます。
しかもその売却価格が忠実に時価といえるものなのかというと、難しい問題があります。
同じ条件の同じものが1つしかないので、実際の売却自体が正当な価格をもってされたかが不明で、何をもって時価とするのかが不明確であるということです。
離婚や遺産分割、会社の資金繰りなど、現金を捻出する必要があり売り急いでいる状況であれば、本来の不動産が持っていた価値よりも低めに売却されることもあります。
買主に売主側の事情を悟られてしまい、買いたたかれてしまうこともあるのです。
逆に、物件の個性を買主が高く評価した結果、あるいは市場価格よりも高額で購入する動機がある場合には、市場価格よりも高い価格で決まることもあります。例えば、自分の子どもを人気のある学区の学校に通わせたい事情がある場合、隣地所有者が自分の土地の価値を高めるために購入する場合、地上げなどでまとまった面積の開発を行う場合などです。

最終的には不動産鑑定へ

いずれにせよ、時価に関する評価がまとまらない場合は、最終的に不動産鑑定に持ち込まれます。
不動産鑑定士によっても、当然、評価が異なりますので、遺産分割ではお互いが依頼した不動産鑑定士の評価を出し合うこともあり得ます。
不動産鑑定士への報酬も安くはないために、当事者双方が同じ不動産業者に依頼して価格の査定をしてもらうこともあります。
この不動産業者が出してくる査定価格も、結局は、近隣での最近の売却事例や路線価などに基づき、基本的な価格を算定したうえで、物件独自の個性を加味して増減を微調整しています。
不動産売買事例のデータを掲載した不動産流通標準情報システムに載せたがらない買主もいるようです。
というのも、買主がさらに転売をする際に、自分が買った価格を知られることは有利にはなりません。
転買主に、購入時の価格が廉価であることを指摘されて、指値を入れられることがあるからです。

路線価を修正して評価額を算出

次に路線価ですが、これは道路についている価格のことです。
道路(路線)に面する標準的な宅地の1㎡あたりにおける価額のことを路線価といいます。
単位は1,000円で、この道路に付けられた値段を基準に計算することになります。
土地に面している道路についた値段をもとに算定するので、基本は大雑把な数字が出るのですが、地形などの土地の個性で修正していくことなります。
例えば、非常に広大な土地や形がいびつな土地のように利用方法が制限される土地については、路線価をもとに計算した価額を修正して低い評価額となることがあります。

固定資産税評価額がゼロになることはない

固定資産税評価額は、毎年の固定資産税を支払う時のもととなる不動産の価格のことをいいます。
市町村役場にある固定資産台帳に登録してある土地や建物といった不動産の評価額のことです。
納付書に記載されているので、明解です。特に建物に関していえるのですが、通常、時の経過とともに建物の価値は減少していき、一定期間が経つと建物の価値は市場でゼロとみなされる傾向があります。
どれだけこだわりを持って建てた思い入れのある建物であっても、時が経過すればゼロ評価となってしまうのです。
ところが、固定資産税評価額は、建築経過年数に従って漸減するとはされるものの、ゼロになることはありません。
徴税目的ということもあるのでしょうが、現に建物が存在している以上はゼロ評価にはできない、といわれれば、むべなるかなでしょうか。

公示価格は客観的な目安としての評価額

公示価格は路線価と同様で、年に一回発表されます。
路線価が国税庁発表の価格であるのに対して、公示価格は国土交通省が発表するもので、時期も前者が毎年1月1日時点における路線価を財産評価基準として7月頃に発表するのに対して、後者は毎年1月1日時点における標準地の適正な価格を調査して3月に公表されます。
ただ公示価格は、スポット的にしか通用されません。
というのも、公示価格は、一般の人が土地の取引や資産評価をするにあたって土地の適正価格を判断する客観的な目安として発表される評価額ですから、あくまでも目安としての価格なのです。
そのうえ、特定の地点を定点観測で継続的に観察して評価額を出しているので、たまたまその場所に不動産を持っている人間にしかあてはまらない数字です。
不動産景気の趨勢を追っていくには意味があるものの、特定の不動産の価値を図る参考値としてはあまりあてにならないという考えもあるといえます。
とはいえ、観察地点の近隣の不動産の価値を図るには大いに参考になります。

特定の不動産に関する個別具体的な指標ではない

以上、4つの指標に共通しているのは、特定の不動産の価値を取り入れた個別具体的な指標ではないということです。
究極的に「この不動産」を評価するには、個別具体的な調整や補正が不可欠であることは、相続税及び遺産分割の両面において妥当します。
相続税を申告・納付する際に不動産の価値を評価する際においても、遺産分割において誰がどの財産を取得するのか検討するために不動産の価値を評価する際においても、具体的に「この不動産」の価値を評価しなければ、真に適切な判断をすることはできないのです。
ここが不動産の相続において難しい点であるといえるでしょう。

この記事と
関連性の高いページはこちら

遺産分割の弁護士.com

遺産分割のことなら『遺産分割の弁護士.com』

預金を勝手に引き出したり、不動産の名義を勝手に書き換える。財産の不正操作と徹底的に戦う覚悟がある方のお力になります。

不動産相続の弁護士.com

不動産相続のことなら『不動産相続の弁護士.com』

分けられない財産の典型である不動産。不動産の評価について相続人間でモメます。そもそも不動産が相続財産かどうかも問題になります。不動産を独り占めする財産の不正操作と最後まで戦います。

相続税の税理士.com

相続税のことなら『相続税の税理士.com』

生前にどれだけ詳細にシミュレーションすることができたかで、相続税対策は決まります。遺言内容にも影響しますので、多方面からの検討をする意味でも弁護士兼税理士にお任せ下さい。

ページトップへ戻る

ブログ・相続最前線 』のその他の記事

遺言の増加に伴う争族。認知症の疑いによる無効を防ぐためには
普及が加速する遺言 遺言を作成することの重要性は、ここ数年でかなり浸透しています。実際に事務所に来られる相続発生後の相談者の中で、遺言を持参される方はこの10年間でかなり増えました。10年前は遺言を持参されるケースは極めて少数でしたが、今は逆に法律事務所に相談する相談者の半分以上は、遺言を持参されている印象です。日本公証人連合会公表による全国で作成された遺言公正証書の件数も、年々増加傾向にありま…
2021-10-14 [ 相続弁護士の最前線 ]
相続税対策や相続争い(争族)における養子縁組』で氏は変わる?
相続税対策や相続争いにおいて、特定の相続人の遺留分を少なくするために養子縁組をすることは、非常に有効です。それにもかかわらず養子縁組を躊躇される方が多いのですが、理由の1つは氏が変わるからというものです。養子縁組をすると必ず氏は変わるのか。変わらないために何か対策はないのかを考えます。 養子縁組をした場合の養子の氏がどうなるかは、養子になる方の属性によって異なります。まず養子が単身者で結婚をして…
2021-09-10 [ 相続弁護士の最前線 ]
相続税申告が間に合わないときには
相続税の申告には期限があります。相続開始から10カ月以内、つまり被相続人が亡くなってから10カ月以内、もしくは、被相続人の死亡を知ったときから10カ月とされています。ちなみに納付期限と申告期限は同じです。 10カ月と聞くと一見長いようにも感じますが、相続開始からの10カ月は本当にあっという間に過ぎ去ります。相続人が複数人いた場合、そう簡単に遺産分割は終わりません。しかし、相続税は遺産分割が終わっ…
2021-09-01 [ 相続弁護士の最前線 ]
相続税の申告期限を過ぎるとどれくらい損する?
相続税には納付期限があります。相続開始から10カ月以内、つまり被相続人が亡くなってから10カ月以内、もしくは、被相続人の死亡を知ったときから10カ月とされています。 10カ月と聞くと一見長いようにも感じますが、相続開始からの10カ月はあっという間に過ぎ去ります。相続人が1人であれば問題はありませんが、複数人いた場合はそう簡単に遺産分割は終わりません。相続税は遺産分割が終わっていない場合でも、10…
2021-08-31 [ 相続弁護士の最前線 ]
配偶者居住権と注意点
平成30年7月、約40年振りに「相続法」が大きく改正されました。相続法改正の中でも、よく耳にするのが「配偶者居住権」という新しい権利。配偶者居住権という言葉は知っているが、内容については知らない方のために、配偶者居住権の内容と配偶者居住権についての注意点についてわかりやすく解説していきます。 1、配偶者居住権とは 配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間…
2021-04-15 [ 相続弁護士の最前線 ]
    ページトップへ戻る
    他にはないサービス。無料相談は原則、受け付けません。

    無料相談を掲げる法律事務所とは一線を画し、価格競争には参加せず、報酬に見合う良質なサービスを提供しています。他の弁護士事務所にできないミッションを達成し、紛争解決に集中してリソースを割くために、相談対象を紛争性がある相続事件に限定しています。
    「内容証明が届いた」「対立当事者に弁護士が就いた」「調停・裁判中」「調停・裁判目前」「弁護士を替えることを検討中」など、紛争性が顕在化している方は電話相談(初回15分)・メール相談(1往復のみ)・土日夜間の電話相談(初回15分)で対応します。

    相続税を納める必要があり、
    かつ遺産分割でもめている方は相談無料

    来所ビデオ通話電話・メール・土日夜間
    相続税の納税義務があり、
    かつ遺産分割でもめている事件
    無 料1時間:62,000円税別電話:初回15分
    メール:初回1往復
    土日夜間:初回15分
    無 料
    内容証明が届いた事件1時間:12,000円税別
    ※来所困難な方に限り、
    1時間30,000円税別にて
    電話相談に応じます。
    対立当事者に弁護士が就いた事件
    調停・裁判中、調停・裁判目前の事件
    弁護士を替えることを検討中の事件
    その他、紛争性がある事件
    (潜在的なものも含めて)
    非対応
    税務に関する法律相談1時間:50,000円~税別1時間:100,000円~税別
    国際法務・国際税務に関する法律相談1時間:100,000円~税別1時間:150,000円~税別
    来所ビデオ通話電話・メール・土日夜間
    内容証明が届いた事件1時間:
    12,000円(税別)
    ※来所困難な方に限り、1時間30,000円(税別)にて電話相談に応じます。
    電話:初回15分
    メール:初回1往復
    土日夜間:初回15分
    無 料
    対立当事者に弁護士が就いた事件
    調停・裁判中、調停・裁判目前の事件
    弁護士を替えることを検討中の事件
    その他、紛争性がある事件
    (潜在的なものも含めて)
    非対応
    税務に関する法律相談1時間:
    50,000円~(税別)
    国際法務・国際税務に関する法律相談1時間:
    100,000円~(税別)
    来所予約・お問い合わせ
    03-5532-1112 9:00~18:00 土日祝日除く※お電話又は予約フォームにて法律相談のご予約をお取り下さい。
    ※小さなお子様の同伴はご遠慮ください。
    商標登録を行いました「磯野家の相続」