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相続税対策や相続争い(争族)における養子縁組』で氏は変わる?[POSTED]:2021-09-10
相続税対策や相続争いにおいて、特定の相続人の遺留分を少なくするために養子縁組をすることは、非常に有効です。
それにもかかわらず養子縁組を躊躇される方が多いのですが、理由の1つは氏が変わるからというものです。
養子縁組をすると必ず氏は変わるのか。
変わらないために何か対策はないのかを考えます。
養子縁組をした場合の養子の氏がどうなるかは、養子になる方の属性によって異なります。
まず養子が単身者で結婚をしていない場合、養子の氏は養親の氏に変更されます。
次に養子が結婚していて戸籍の筆頭者である場合、養子の氏は養親の氏に変更されます。
結婚していて筆頭者でない方が養子になった場合は、養親の氏に変更されません。
※日本人同士の夫婦の場合、婚姻により氏を改めなかった方を筆頭者といい、戸籍の最初に記載されます。
相続税対策や遺留分対策での養子縁組を考えると、妻が夫の氏に変更済みの夫婦(夫を筆頭者とする一般的なケース)では、以下の結論になります。
・妻が夫の親の養子になる→氏は養子縁組によって変わらない(結婚時に変更済)。
・夫が妻の親の養子になる→氏は養子縁組によって変わる。
結局、養子縁組ののちに養親と養子の氏は一般的に、同じものになります。
多くの夫婦に例にならって、夫婦が夫の氏にしている前提で説明します。
相続対策で義理の息子や義理の娘を養子にする場合、妻が夫の両親の養子になるパターンでは氏が変わりません。実務上も多く見られます。
これに対して、夫が妻の両親の養子になると氏が変わります。氏を変えることへの抵抗からか、実務上は夫が妻の実家の養子になるケースはそこまで多く見られません。
夫の実家が資産家の場合、相続対策としての養子縁組は一般的ですが、妻の実家が資産家の場合は、養子縁組をしたがらない傾向があります。
このように養子は養親の氏と同じものになることが一般的なのですが、養子縁組をしつつも、養子の氏を変更しない方法が制度上はあります。
それは養子縁組をするといったんは養親の氏となるものの、養子縁組後に家庭裁判所に「氏の変更許可申立」を行う方法です。
この申し立てによって、変更許可を得られれば「養子縁組前の苗字」に変更することが可能です。
問題は「氏の変更許可申立」において裁判所が許可を出すのに「やむを得ない事由」があると判断する必要があるのです。
このやむを得ない理由があるかどうかの判断にあたっては、下記の事情を考慮します。
しかし認められるかどうかは未知数ですし、ハードルは低くありません。
③については、通称名の具体的な資料として、公共料金の明細、年賀状、手紙、結婚式の招待状、席次表(座席表)、注文書・納品書、成績表、卒業証書、メール、契約書、名刺、会社パンフレット、新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)、健康保険証(会社が通称名で登録している場合)などが資料提出されるようです。
結局は、氏の変更許可申立によっても確実ではありません。
養子縁組によって氏が変わることは結論としては受け入れざるを得ないと思う必要があります。
技巧的になりますが、養子縁組前にいったん離婚をして、養子縁組後に再婚をすることで、結果的に苗字を維持する方法はあります。また死後離縁をして養子縁組前の姓に戻しても、離縁の効果は遡らないので相続資格は維持することができます。
遺留分対策のために養子縁組をしたい。でも氏が変わることを避けたい。というご要望は非常に多いのですが、基本的には氏は養親と同じものになる。技術的な方法で避けるやり方はあるものの、そもそも氏が変わることを嫌がる方は、そこまでして敢行するのであればやらなくてもよいと、あきらめることが多いようです。
氏が変わることをあきらめるか、対立相続人を利することをやむなしとするか。日本人特有の戸籍をいじることへの抵抗が絡む問題です。
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