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【相続においては二元的な視点が必要】相続税申告と遺産分割の違い[POSTED]:2018-12-11
相続財産の評価時点の違い
相続税の申告と遺産分割では、いろいろな違いがあります。
相続税は相続発生時の相続財産の価格を基準としますが、遺産分割では遺産分割が成立した時を基準とします。
遺産分割には期限がありませんので、相続開始時点と財産額の評価がかけ離れていることもあるでしょう。
中には明治時代から未分割のままになっている不動産もあります。
物価変動もある以上、相続財産の評価は、遺産分割成立時点としないと、どの財産を分割で取得するかを考えることもできなくなります。
他方で相続税の納税期限は10カ月以内と決まっています。
遺産分割成立まで待っていては、納税の確保ができませんから一定の締切を設ける必要があるのです。
相続財産の評価方法の違い
相続税の計算において、不動産は土地を「路線価方式」で、建物を「固定資産税評価額」で、それぞれ評価します。
結果、現金で資産を持つよりも不動産で資産を持ったほうが有利である状況が生まれています。
一方、遺産分割においては、不動産は時価で評価されます。
不動産の評価額を低くした理由としては、地主が相続税の納税のために土地を手放さなくてはならない事態を回避するためともいわれています。
逆に土地持ちに対する優遇税制のためか、日本の富裕層の資産構成は過度に不動産に偏っているともいえます。
属人的要素による相続税制優遇の違い
相続税申告における各種特例では、属人的要素によって、相続税の評価額が下がることがあります。
例えば、小規模宅地等の特例は、被相続人と同居していた相続人と同居していなかった相続人で適用されるかどうかが変わってくることがあります。
特定の条件を満たす相続人であれば、土地の価格が低く評価できるにもかかわらず、特定の条件を満たさない相続人であれば、その恩恵にあずかれません。
効果が相対的であることが特徴です。
配偶者特例も、配偶者という属人的な要素で特例が適用されます。未成年者控除や障害者控除も同様です。
これらはいずれも相続人の持つ個人的な属性によって、相続税が低くなってくるというものです。
このように、評価時点と属人的な要素によって、相続税の評価額は変わってくるのです。
これに対して、遺産分割においては、この人だからこそ多めに相続できるということはありません。
被相続人との関係により法定相続分に違いが生じますが、相続財産の評価が変わることはありません。
二元的に考える相続
評価時点や評価方法、属人的な要素の考慮などの点で、額が変わってくるということは、遺産分割や相続税納税において財産の評価を二元的に考える必要があるということです。
少しくらい多めに相続する遺産分割が成立しても、自分よりも取り分が少ない相続人が不動産を相続したために相続税額が減り、トータルでの実質的な正味の取り分が不動産を相続した相続人に負けるということは十分にあり得ます。
朝三暮四のような話にならぬように、気を付ける必要があるのです。
相続税が発生していて、遺産分割について裁判をすることになる事案では、依頼者が税理士と弁護士の両方に依頼することもあります。
今は相続税の話をしているのだ、今度は遺産分割の話をしているのだと、しっかりと頭を切り替えて臨むことが必要なのです。
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