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【解釈論を争いにくい税理士】通達などで細目まで決まっている相続税務[POSTED]:2019-02-15
相続税務における通達制度
税法の世界には、独特の通達制度というものがあります。
通達は、本来的には行政部の内部文書のことで、行政機関が所属の組織や職員に対して出す、法令の統一的解釈や事務取扱上の基準を示した文書のことです。
通達によって行政がなされることを、「通達行政」といいます。
他方で、通達は行政機関内部における指針に過ぎないとはいえ、行政機関がこれに沿って事務を行うことで、事実上新たな義務を課したり、規制を設けたりするのと同様の結果を招くことも少なくありません。
これが租税法律主義という、法律によってしか課税されないという憲法上の要請と矛盾しないかという問題があります。
本来的には法令ではない通達が、命令として下部組織や職員の業務内容を拘束するため、法治行政の原則を否定する危険もあるとして批判されています。
パチンコ球遊器課税事件で最高裁判所は「論旨は、通達課税による憲法違反を云為しているが、本件の課税がたまたま所論通達を機縁として行われたものであつても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基づく処分と解するに妨げがなく、所論違憲の主張は、通達の内容が法の定めに合致しないことを前提とするものであつて、採用し得ない」という判断をしています。
批判されることもある通達行政ですが、納税者の予測可能性にかなうものといえなくもありません。
相続税務において判例と同じ機能を有する通達行政
法律には「成文法」と「判例法」の2つの種類があり、前者は主に大陸法系、後者は主に英米法系の流れをくみます。
成文法は法律の条文が細かく制定されています。
対して判例法は、法律の条文はあまり細かく制定されておらず、裁判所の判決が積み重ねられることによって、法内容が充実していくことになります。
法律を作るのは国民の代表たる国会ですから、法を作るのは国会であると考えるのが大陸法系の考え方で、法は国民の代表者である国会ではなく、裁判所が作っていく、もっと言えば正しい法を発見していくというのが英米法系の考え方であるとされています。
日本は法の種類によって、大陸法系の考え方をする法律もあれば、英米法系の考え方をする法律もあります。
労働法などは判例法の考え方をとっており、実務でも判例の重要性が大きいです。
成文法の代表とされる民法でも判例は重視されますが、すでに条文で細かく規定されているために、判例の立ち位置も多少異なります。
民法の中でも不法行為については条文が少なく、判例法的になっています。
いずれにせよ、判例は日本の法律実務において、重要な位置を占めているのです。
判例が条文の隙間や条文に書かれていないことを埋める機能を有しているのと同様に、通達も条文では明確になっていない部分を埋めています。
通達行政は判例と同じ機能を有しているといってもよく、どのように行動をすれば法律に違反しないかということが明確になっています。
相続税務における通達と判例の違い
ただし通達は判例と決定的に異なる点があります。
判例はあくまでも具体的事件において、その事件を解決するという目的で裁判所が出す見解です。
具体的事件を解決する目的を超えて、事件が存在しないにもかかわらず、法律の解釈を一般論として出すことは日本ではありません。
一方通達は、具体的な事件の存在を想定せず、法律の解釈について一般論として述べるものです。それだけに通達が持つ意味合いはある意味、判例以上に大きいのです。
というのも、判例については、自分の事件はこの判例の射程範囲外であるという主張をすることができるからです。
実際に判例の射程範囲は読み違えると、裁判の勝敗がまるで異なってきてしまいます。
判例は訴訟を提起することで作ることができますが、通達は自ら訴え出て作り出すものではなく、一方的に受動的に通知されるものである点も異なります。
行政の出す通達が事実上の立法を行いかねないのではないか、という三権分立の立場からも問題があると考えられるゆえんです。
通達により相続税理士の法解釈が制限される
税法には通達という法律に似た機能を持つ特殊な規律が存在するために、税理士の法解釈の範囲も制限を受けます。
つまり、通達で規定している範囲については、絶対的な基準が存在することを前提に、業務を行うことになります。
間違いがなくてよいという考え方もありますが、反面、通達の存在ゆえに積極的に解釈論を争いにくい面もあります。
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