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【DNAを継承していなくても親子関係は認められるか】遺産相続の際にDNA鑑定が必須となる時代[POSTED]:2018-07-17

【DNAを継承していなくても親子関係は認められるか】遺産相続の際にDNA鑑定が必須となる時代

民事裁判において、近頃、DNA型鑑定の威力が発揮されました。
東京都墨田区の病院で60年前、出生直後に別の新生児と取り違えられたAさん(男性)が、病院側に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は取り違えた病院側に約3800万円の支払いを命じました。
Aさんと取り違えられたBさんの容姿が、Aさんの本来の弟3人とあまりにも似ていなかったため、弟たちが平成21年、検査会社にDNA型鑑定を依頼しました。
その結果、Bさんと弟たちの血縁関係がないことが判明。
病院の記録をもとにBさんと約10分違いで出生したAさんの存在を突き止め、平成24年に再度、DNA型鑑定を行ったところ、Aさんが本当の兄だと分かりました。
Aさんは貧しい母子家庭で育てられました。
中学卒業と同時に就職し、今はトラック運転手として働いています。
一方のBさんは経済的に恵まれた家庭に育って大学にも進学し、現在は不動産会社の社長になっています。
出生時の偶然の取り違えが、2人の人生に大きな影響を与えました。
裁判長は「(訴えた)男性は経済的な理由から厳しい家庭環境に身を置かざるを得なかった」として慰謝料などを認めました。
墨田区の赤ちゃん取り違え事件の裁判はもともと、Bさんと弟らとの遺産相続トラブルが発端となったそうです。
母親の死亡時に長男として財産を相続したBさんが、父親を在宅介護するという相続時の約束を守らずに介護施設に入れようとしたため、弟らが反発しました。
「あまりに父親に冷たい。実の兄ではないのでないか」と疑問を抱いた弟らがDNA型鑑定に踏み切り、Bさんは3人の弟とまったく血のつながりのないことが分かりました。
既にAさんの実の父母も、Bさんの実の父母も死去しているため、相続のやり直しをすることを前提に別の裁判(Aさんの父親の遺言の無効や、実の親ではなかった母からBさんが相続した土地の返還)などの手続きが進んでいるそうです。
Aさん及びBさんは、それぞれの育ての親との親子関係が無いことが確認され、戸籍が変更されています。
もっとも、Bさんが相続した土地に家を建てて家族と生活していることもあり、複雑な権利関係を正常化する手続きにはまだ時間がかかるとみられます。
赤ちゃんの取り違えはほかにもたくさんあり、AさんとBさんの事件は氷山の一角なのではないかという声もあります。
AさんとBさんの事件ではDNA鑑定によって親子関係が判明しました。
「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」と定める民法772条は、婚姻中の妻が懐胎した場合は夫の子であることが通常なので、子の父は夫であると推定しています。
もっとも事情によっては推定を覆すことはでき、例えば長期の海外赴任中で夫婦が一度も会っていない場合などが例として考えられます。
これも、DNAを継承していないからこそ、推定を覆せるわけです。
もっとも平成25年12月に出された最高裁判例では、父と子の間に血縁関係がない子について嫡出子として認めています。
しかしこの事件では、女性から男性に変更した夫とその妻が、第三者からの人工授精でもうけた子についての判断でした。
特殊な事情があったからこそ、DNAを継承していなくても親子関係を認めているのでしょう。
民法は通常、親子関係をDNAの継承の有無で判断していると考えてよさそうですが……。

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