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【高級住宅街の原風景を守るためには】高級住宅街の相続では高額な相続税がネックに[POSTED]:2018-08-13
田園調布や成城といえば、東京でも屈指の高級住宅街です。
お金持ちや芸能人などの著名人が住むエリアというイメージですね。
しかし、こうした世間の羨望を受けてきた住宅街の姿が、徐々に変容しつつあります。
かつてに比べ、一軒当たりの敷地面積が狭くなり、低い生け垣の上から見える広大な敷地と白亜の豪邸ばかりではなくなってきているのです。
原因のひとつに、高級住宅街としての知名度が上がり、街が一種のブランドになった結果、路線価が高騰し、高額な相続税を支払うために土地を切り売りせざるを得なくなったことが挙げられます。
「調布」という村名に由来する田園調布は、江戸時代末期に生まれて実業家や官僚として活躍し「日本資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一らが、大正15年(昭和元年)から欧米の郊外型都市をモデルに「理想的な田園都市」をイメージして作った街です。
渋沢の理念は昭和57年に「田園調布憲章」として明文化されました。
田園調布では、町内会のルールでかつて一区画の最低敷地面積が200坪(660平方メートル)と決められていました。
しかし、時代と共に路線価が跳ね上がり、相続の際に相続税を支払いきれず、土地を売却して出て行かざるを得ない人が出始めました。
そこで平成3年、大田区が地区計画を制定する際に、最低敷地面積を50坪(165平方メートル)に縮小し、土地の切り売りができるようにしました。
結果、土地は細分化され、以前のような街並みが徐々に損なわれてしまいました。
しかしながら現在は、地元住民でつくる「田園調布会」が新築住宅について事前協議を設けるなど、「田園調布憲章」の理念に基づいた由緒ある住環境の維持に努めています。
一方の成城は、もともと小田急小田原線の駅名にもなっている「成城学園」という教育機関が宅地開発を手がけた街です。
新宿にある成城中学や成城高校がルーツで、学校の幹部の1人が、生徒がのびのびと学べるようにより広い敷地を求めて大正14年に現在の地に独立して成城学園を創設したそうです。
開校当時は典型的な農村でしたが、学園関係者やその教育方針を信奉する保護者などが周囲の宅地を購入し、住宅街として発展していきました。
この時はゆったりとした街作りが計画されて土地が分譲されていったようですが、成城のブランド力が上がるにつれて地価が高騰していきました。
その結果、田園調布と同様、高額な相続税がネックとなって広い敷地を維持できず、どんどん細分化されて売却されるようになりました。
こうした事態を受けて地域住民らは平成14年、なんとか街の原風景を維持しようと、「成城憲章」を制定しました。
憲章では、「ミニ開発による敷地の細分化に伴う住環境の悪化に対処するために、成城の現在の平均的な住宅の250平方メートル程度の敷地規模をめざす」としたうえで、「やむを得ず敷地の細分化を行う場合の最低敷地規模の目安は、その半分の125平方メートルとする」などと規定しています。
また、「成城らしさにあふれた街並みの継承」をうたい、家の周囲には壁ではなく、生け垣を植えるなどといったルールも定めています。
この憲章には法的な効果はありませんから、違反しても罰則が科されるようなことはありません。
しかし、地域住民が街の魅力を維持しようと設けたルールですから、これからも遵守されていくことを期待したいものです。
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