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遺産分割を弁護士に相談する[POSTED]:2017-10-24
1 遺産分割の流れ遺産分割を弁護士に相談する
遺産分割を行う方法としては、遺言による分割、協議による分割、調停による分割、審判による分割の4つがあります。
遺言がある場合は、遺産分割は原則として遺言書の通りに行われます。遺言がない場合は相続人間で話し合って、遺産分割をします。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てます。調停による分割申し立てを行う裁判所は相手方の住所地の家庭裁判所が管轄裁判所になります。審判の場合は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てることになっています。
調停の申し立てには、申立の趣旨や申し立ての事実上などを記載した申立書、申立人・相手方の戸籍謄本、住民票、被相続人の戸籍謄本、改正原戸籍謄本、遺産目録、不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明、貯金・債権については現在高証明書、遺言書の写しなどが必要です。
2 遺産分割協議遺産分割を弁護士に相談する
遺産分割協議では、話し合いで全員が納得すればどのように分割しても構いません。法定相続分と違う分割をしても構いません。話し合いで合意に達すれば遺産分割協議書を作成します。
協議は相続人が顔を合わせながら行うのが通常ですが、書面や持ち回りでもできます。協議は相続人全員の意思の合致によって成立しますが、多数決では成立しません。相続人である者を無視した分割協議は、後日その者が相続人であることが判明すると無効になります。
遺産分割協議においては、未成年には法定代理人が代わって協議に参加します。代理人には原則として法定代理人である親権者が該当しますが、親権者自身も相続人である場合には、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。
話し合いで納得がいかない場合には、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることになります。遺産分割協議は相続開始後ならばいつでもできます。逆に生前の遺産分割は可能かというと、相続放棄は生前にはできません。
従って例えば、生前に相続放棄をしていても、被相続人が亡くなった後に相続人としての権利を主張することは可能です。
また仮に生前に推定相続人間で協議をした上で合意書を作成したとしても、直ちに遺産分割協議書としての効力は認められません。相続は被相続人が亡くなった後に初めて開始し、推定相続人は相続開始前において、被相続人の財産につき何らの処分権も持っていないからです。
このような効果を期待するのであれば、被相続人から生前贈与を受けたり、死因贈与契約を締結したり、遺言を残してもらう方法があります。遺言で遺留分を侵害した場合には、遺留分減殺請求を起こされるリスクがありますが、遺留分の相続開始前の放棄は相続放棄の場合と違って可能です。これによって相続放棄と同じ効果が期待できます。
3 生前贈与や遺贈による共同相続人間での不公平感の解消遺産分割を弁護士に相談する
特別受益とは、相続人が贈与や遺贈を受けた時に、他の相続人との公平を期するために相続分から差し引く制度です。
被相続人の死亡後は共同相続人間で法定相続分に従って遺産を相続するのが原則です。 ところが、共同相続人のうちで、被相続人から遺贈や結婚の際の持参金をもらったなど被相続人から婚姻、養子縁組または生計のための贈与を受けた者がある場合は、それら贈与をまったく何らの考慮もせずに法定相続分に応じてさらにそれらの者に遺産を取得させることは、共同相続人間の公平を害することになります。
そこで、生前贈与などの特別受益を受けた者がある場合は特別受益分を考慮して計算し、被相続人が死亡時に有していた財産の価値に、生前に贈与された財産の価値を加えたものを相続財産とみなします。そのようにして計算した相続財産に法定相続分をかけて算出した価値から、生前贈与を受けた分などの特別受益分の価値を差し引いた金額を、特別受益を受けた者の相続分とします。
このようにして、相続人のうち特定の者が生前贈与や遺贈を受けていた時は特別受益として相続分から差し引くのです。ただし、贈与・遺贈が相続分よりも多くても、返還を請求することはできません。特別受益が生じている場合は、相続開始時点で持ち戻しの計算を行うことになっています。
したがって相続開始時の時価を評価して持ち戻し後の金額を計算した上で各人の取得割合を計算し、その後、遺産分割時の時価評価に基づいて各自の具体的な取得割合を決めて分割を行います。結婚や養子縁組をした際の持参金や住まいや商売用の店を出すために不動産をもらった場合などが典型的な特別受益の例です。遺贈についてはどのような遺贈かにかかわらず全て特別受益になります。
これに対して、生前贈与については、持参金、新居、道具類、高額の結納、高額の新婚旅行費用などの婚姻のための贈与、養子縁組のための費用、高等教育の学費、家、営業用のトラックなど、生計の資本としての費用だけが特別受益になります。結婚式の費用については原則として特別受益にならないと考えられていますが、審判例では共同相続人中に既婚者と未婚者がいる場合には、特に多額ではない結婚式挙式費用も特別受益として考慮すべきであるとしたものもあります。学費に関しても、特に1人だけに高等教育を受けさせる場合は特別受益となるものの、大学進学率が高い現在の状況下では、特別高額の場合を除いて大学の学士程度であれば特別受益に当たらないと考えられています。
とはいうものの、特別受益として認められた場合もあります。生命保険や退職金については、特別受益になりえます。最高裁は生命保険金について、相続人とその他の共同相続人と間に生じる不公平が著しい場合には、保健金の額や遺産総額に占める比率、同居の有無、被相続人の介護などに対する貢献の度合いなどを総合考慮して、払い戻しの対象になることがあるとしています。
退職金については、支給を受ける遺族の生活保障を目的としているという点で生命保険金に近いと考えて特別受益に当たらないとする事例と、賃金の後払い的性質を持っており、遺産に似ているとして特別受益にあたるとする審判例があります。遺族年金や特別弔慰金については、特別受益に当たらないとするものがほとんどですが、死亡弔慰金について特別受益として認めた事例もあります。
生前の贈与が特別受益に当たる場合、現金の場合は貨幣変動を考慮した上で相続開始時の貨幣価値で計算します。土地や株式は贈与を受けた後に売却したとしても、現物があるものとして相続開始時の評価額・株価で計算します。特別受益にあたるとされても、被相続人が持ち戻しを免除した場合は持ち戻さなくてもいいのですが、持ち戻しを書面ではっきりと免除していることは少ないので、黙示の持ち戻しの意思表示があるといえるための認定基準が問題になります。
この認定に当たっては、贈与した経緯、趣旨、その他被相続人が受贈者から利益を得ていたかどうかなどを総合的に考慮して黙示の意思表示を認定しています。持ち戻し免除の意思表示が遺留分を侵害する場合は、遺留分減殺請求がなければ遺留分を侵害する持ち戻し免除も有効ですが、遺留分減殺請求がある時はこれを持ち戻して遺留分の算定をすることになり、その限度で持ち戻し免除は無効になります。持ち戻し免除も、遺留分減殺請求をされた場合には万能ではないということです。
4 被相続人に貢献した相続人がいるとき遺産分割を弁護士に相談する
寄与分とは被相続人の生前にその財産の維持、または増加に特別の寄与貢献をした相続人に与えられるものです。遺産分割の際に寄与分は相続財産の中に入れずに、寄与分を除外したものを計算して分割をします。寄与分のある相続人は、遺産分割による相続分に加えて、寄与分も受け取ることになります。 ただし、寄与分が認められるのは相続人だけです。
これは、相続人以外の者も含めると、相続人以外の者が遺産分割の話し合いに加わることになり、話し合いが複雑になるからです。寄与分として認められるのは、事業に関する労務の提供や事業に関する財産上の給付、病気の被相続人の看護、その他これらに匹敵するレベルのものです。労務の提供として正当な給料をもらわずに仕事を手伝った場合や、看病をした場合など、それに匹敵するくらいのもののことです。
妻の通常の家事労働や妻としての夫に対する看病は特別の寄与貢献とはいえず寄与分にはなりません。看病が寄与分として認められるには、扶養義務を超えた著しい程度の療養看護が必要とされます。寄与分は遺産分割の対象である相続財産には含まれないので、寄与分がある場合は相続財産の中から寄与分を別個に切り離して、残った財産を分割して相続します。寄与分の存在をそもそも認めるかどうか、認めるとしてどの程度の価値になるかは相続人間の話し合いで決めますが、話し合いがつかないときは家庭裁判所に寄与分を定める審判を申し立てます。
まず全相続人の協議で決め、協議が調わないときには、家庭裁判所の調停で話し合い、それでも決まらないときには家庭裁判所が寄与者の請求により寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して審判で決めます。
なお、遺留分を侵害するような大きな寄与を認める場合には、特別の事情を必要とします。
5 遺産分割協議書の作り方遺産分割を弁護士に相談する
遺産分割協議が成立すると遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書の作成は義務ではありませんが、後日の遺産分割協議の有無や内容に関する争いを避けるためにも作成するべきです。相続による不動産の所有権移転登記の添付資料としても、遺産分割協議書が必要です。
遺産分割協議書は相続人の数だけ作成し、全員の署名・押印をして各自1部ずつ保管します。遺産分割協議書は法律上必ず作らなければならないものではなく、作り方も決まっていません。
しかし、遺産分割協議書を作成して各人が署名押印する場合、署名は可能な限り自筆(サイン)で、また押印は必ず実印(印鑑登録印)を押印し、印鑑証明書を添付すべきです。このように作成することで遺産分割の結果について後で問題が起きないように各相続人の意思を明確化できますし、遺産分割協議の結果に従って不動産の相続登記をする場合などは、実印の押印された遺産分割協議書を登記申請書に添付する必要があるからです。
自筆(サイン)ができない相続人がいる場合は、遺産分割内容について本人の意思確認をした後に他人が代わって署名することもやむを得ませんが、押印は必ず実印でして印鑑登録証明書も添付する必要があります。銀行預金などは、署名押印(実印)のある遺産分割協議書(印鑑登録証明書添付)だけでなく、各金融機関の所定の書面に各人の自筆による署名や実印による押印を求められるのが通例です。
一度作成した遺産分割協議書は原則やり直しがききませんが、相続人が全員参加していない遺産分割協議や相続人以外が参加している遺産分割協議は無効です。重要な遺産が漏れていた場合には、錯誤による遺産分割協議の無効を主張できる場合もあります。遺産分割協議後に隠れた財産が発見された場合に備えて、隠れた財産が見つかった場合に具体的にどうやって相続するかも決めておくべきです。
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